後書きがわりに20の質問
『温かい皿』

1  この小説を書き終えた、今現在の心境を一言で簡潔に言い表してください。
  やっと陽の目を見ることができたなぁ、と。
  某所に投稿したり、修正を重ねたり、寝かしている期間が長かった作品なのです。

2   この小説を書く上で、一番書きやすかったところはどこですか?
  料理ネタやそれにまつわる薀蓄。

3   この小説を書く上で、一番苦労したところはどこですか?
  恋愛。主人公カプがなかなかくっつかず、きっともどかしい思いをした読者様も多かったんじゃないかなぁと思います。BL的には、『恋愛』に重きを置かなきゃいけないんでしょうが、どうしても他の部分を書き込みたくなるんです。もしかしたら余計な枝葉はカットした方がよかったのかもしれないけど、男同士の所謂『ハーレクイン』なんて、私にゃ、書けん。私が書くものの中では最もBLらしい作品かとは思うんですが、これが限界。

4   ボツにしたタイトル、仮タイトル、執筆中のコードネームなどありましたら教えてください。
  タイトルは初めからこれに決まってました。

5   タイトルの由来(意味)は何ですか?
  何年か前にTVで放送していたスペシャル・ドラマのタイトルからいただきました。
  レストランを訪れる客達は厨房の中を垣間見ることにできない。しかし、出された皿を通じて、厨房の熱、料理人達の客に対する濃やかな心遣いを知ることができる。食堂と厨房という切り離された空間にいる人達の接点として、象徴的な『皿』を持ってきました。『温かい皿』を通じて、真志とガブリエルもまた知り合い、分かり合っていった訳です。

6   この小説を書き始めるきっかけはなんでしたか?
  料理ネタを使ったBLとして、食堂でのえっちネタの短編を考えました。しかし、設定立てているうちに話が膨らみ、結局この長さの話に。

7   この小説を書く上で、何か影響を受けたもの(他の作品や、他媒体の創作物など)はありますか?
  昔大好きだったTV番組「料理の鉄人」やドラマ「王様のレストラン」。
  マンガでは「美味しんぼ」とか「ソムリエ」。アンソニー・ボーデインの料理エッセイなど。

8   これがあったから、この話がかけました!(これがなかったら、かけませんでした!)というものはありますか。
  私の『食い意地』かな。

9   ボツにしたストーリー展開を教えてください。
  展開はほとんど変わっていませんが、ラストシーンをちょっといじったり、間に挟むエピソードを変えたりはしました。
  ローランの秘書兼愛人の子が出てくるはずでしたが、話の展開にあまり関係ないエピソードだったのでカットしました。ガブリエルに顔そっくりの苦労人、実は武道の達人で無茶苦茶強いのにローランに嫌われたくないのでひた隠しにしている。また機会があったら番外編ででも書いてみたいですね。

10   プロット(思惑)どおりに進みましたか?
  この話は珍しくプロットに忠実に書き上げました。そのプロット自体を何度か修正しての書き直しはしましたが。

11   これが書きたくてこの話を書きました、という部分はどういうものですか?
  『第六の皿』でのガブリエルと真志のレストランでのえっちシーン(笑)。そもそも、ここから広がった話です。

12   一番こだわったところはどこですか?
  料理の描写や薀蓄。もともと知っていたものもあるし、この話を書くにあたって色んな本を読んだので、また更に無駄知識が増えてしまいましたからね…。

13   一番好きなキャラクターと、一番嫌いなキャラクターを、理由つきで教えてください。
  好きなキャラはローラン。カッコいいのか変なのか、微妙な線に立っている所が書いてて面白かったです。
  後ガブリエルもキャラとしては好きなんだけど、うまく描ききれなかったので…。外面のよさに反する、変人ぶりや怖さをもっと強調したほうがよかったかしら。
  嫌いなキャラはいませんよ。

14   実際にいたら嬉しいキャラクターと、実際にいたら厭なキャラクターを教えてください。
  真志は弟にちょっとしてみたいかも。可愛がってあげるわ。
  後、ローランに尽くされてみたい…。
  ガブリエルは、いたら、ちょっと怖いです。ましてや身内には欲しくない。エンゲル係数上がりそうだし。

15   この人にはこの言葉を言わせたかった!という台詞をキャラ別にどうぞ(実際に言わせていなくてもOK)。
  ガブリエル
  「いつか…あなたを食べてみたいものですね」
  「私にとっては、シンジ、あなたこそがカロンです」
  「あなたは一度出してすっきりしたからいいかもしれませんが、私はまだ一度も出していません」
  ガブリエルの台詞は意味深だったりキョーレツだったりしますねぇ。

  真志
  「努力の汗も涙も流さずにあきらめることはできない」

  ローラン
  「こうすることで、俺はガブリエルの望みを叶えようとしているんだ。残念ながら、あいつの夢を一緒に見てやることは、俺にはできないんでな」
  「細切れにらばらして肉屋に売るぞ」
  「おまえは少し痩せすぎだな、シンジ。もっと肉を食え、肉を」
  「犬」だけに、肉が好きなのか?

16   この小説の登場人物たちを使って、別の話を書く予定はありますか?
  一応頭の中には続編や番外編のネタはあります。

17   この小説の中でこの部分が一番会心の出来なのです! というシーン(か台詞)を抜粋してください。
  「第六の皿」、レストランで食事をしながら、ガブリエルが真志を想いを告げるシーン。
  レストランの描写、料理の薀蓄、ウィットに富んだ台詞を絡めての雰囲気作りは、割とうまくできたような気がします。

18   この小説で取り上げたテーマやアイデアに、もう一度別の形で挑戦してみたいですか?
  はい。ガブリエルと真志のその後はもちろん、アカデミー・グルマンディーズの活動にフォーカスした物語。
  ガブリエルのじっちゃんカップル、父親や叔父様など、濃ゆい一族関係。
  ローラン中心の話なんかも書いてみたいですね。
  
19   何か、これだけはしておきたい言い訳というのはありますか?(笑)
  この話を書き始めてサイトの訪問者数がぐんと増えて、びっくりしました。
  らぶらぶでハッピーで笑える話を求めてらっしゃる読者様が多かったんでしょうね。
  嬉しい反面期待を裏切ってないかと心配で…もっとべたべた甘々の王道BLが読みたかったと言う方にはごめんなさい。
  これが私にできる精一杯…でした…。

20   最後に一言どうぞ!

  食べることが好きです。料理や食材に興味があります。
  海外に行った時、時間が許せば、私は必ず市場を訪れます。観光もいいけれど、その国を知る、別の近道でもあるからです。
  旅先で知らない料理に出会うとドキドキしませんか? 食べたことがないものでも取り合えず挑戦できる人は、食べなれたものしか食べない人よりは絶対豊かな旅をできる人だし、人生ちょっぴり得してる。
  普段の生活でも、食はおろそかにはできません。現代人は忙しいから、食事に時間をかけられないのは仕方ないけれど、せめて休日くらいは人間らしい食事をしたいものです。
「この世に、食べること以上に大切なことがあるものですか。なぜなら、食は命と直結しているからです」
  …ガブリエルに言わせたかった台詞です。
  少なくとも、この物語の登場人物達は、そういうポリシーで生きている人達です。
  この物語(フルコース)は終わりましたが、また、いつか新メニューを皆様にご披露できたらと思っています。
  あなたのための温かい皿を、また、いつか―。
  御来店、ありがとうございました。

 レストラン『月華園』総支配人(笑) 葉月香


尚、この質問はこちらからいただきました。


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