朝顔 佐倉歴博 国立歴史博物館の敷地内にくらしの植物苑がある。今回特別企画で伝統の朝顔展があり大変面白かったので紹介します。日本人は動物の去勢と人工交配をつい最近まで知らなかったらしい。今年の冷夏は朝顔にとっては幸運らしく昼になってもきれいに咲いていた。8月末まで展示しています。開館は9時半ですができるだけ早い時間に見ることがお勧めです。3年8月17日

くらしの植物苑 佐倉城駐車場の横にあり様々な植物が栽培されている。古い時代植物がどのように利用されたかを知る場所だ。

大きなヒョウタン。水筒など容器に利用したのと食用にした夕顔種がある。縄文の貝塚から出土し約1万年の歴史を持っている。

展示品が並ぶ建物。周囲にはビニールハウスや畑があって様々な植物が栽培されている。その奥には樹木が広がる。

黄斑入蝉葉紅吹雪丸咲大輪
日本の朝顔

朝顔は中国から遣唐使により薬草として渡来した。日本で独自の発展を遂げてアサガオ、英名Japanese morning gloryとして有名になっている。江戸時代から何度かのブームを引き起こし愛好家をたくさん出している。朝顔は突然変異を起こす遺伝子を持っている。愛好家はその組合わせを複雑にして珍しい品種を作り出している。このようにした朝顔を”変化朝顔”と呼び正木系統と出物系統に分類される。正木系は単純な変異がみられ種を持つ。
出物系は変化が激しいものでこれが朝顔か?と思うようなものが多い。種を持つ物と無いものとがある。珍しい品種には種無しが多いので再現することが難しいのもブームの原因か?

黄蜻蛉立田葉紅切咲

青渦蜻蛉葉紅丸咲

ハウス内に展示されている大輪系朝顔。
大輪朝顔
明治期以降盛んに栽培されている。州浜と呼ばれる遺伝子で5弁が多い中で花弁数を増やして円形にしてより大輪の花を咲かせる。文化12cm、明治15cm、大正20cm、昭和39年25cm位で現在26cm余が最高の直径のようだ。写真にみられるように11時頃この位元気に咲いていたので観客の人達大変喜んでいた。
多様な朝顔の種類
朝顔の種類は江戸時代に確立した方式で遺伝子に基づいた表現である。
葉色/葉形/花色/咲き方
:常葉や芋葉以外に様々な形、色、質を持つ。色は単純な青、黄の外、斑が入ったものがある。葉の形態として渦状の物や桔梗に似たものがある。
:正木系統では大輪、丸咲の単純系のもの。曜(花弁の筋)が切込れたもの(切咲、石畳咲)中心部に台座があるもの(台咲、車咲)。
桔梗の花に似ている桔梗咲等がある。出物系統では牡丹のように二重三重になっているもの(牡丹咲、車咲牡丹)、武将の持つ采配に似ている形(采咲、采咲牡丹)や風鈴の花弁をもつ獅子咲など多様である。葉、花、茎、双葉はそれぞれ組み合わせが決まっているようで双葉の形からどんな木になるのか鑑定ができるようだ。

原種系のアサガオ
日本に渡来した当時の姿はこのような形。標準的な野生系統で葉は尖った裂片を持つ常葉である。
第1次ブーム:文化文政(1800〜30)期で浮世絵や歌舞伎が始まって文化が庶民に流布した時代である。文人、画家や医者達が担い手であった。右2枚が当時のもの。変化朝顔を育てその中から発生する奇品(変わりもの)を楽しむ風潮があった。図譜が発行されてどんな花が存在しているか分かる。育て方のマニュアルにもなっていて土の選定や肥料のやり方まで書いてあるという。メンデルが発表する前から江戸庶民は感覚的に遺伝則を心得ていたようだ。

巻き絹 薄紅

梅咲茶台 
花弁が弱い切咲となって梅の花のように見える。

采咲系統と複雑な葉の形態を示している。
第2次ブーム:嘉永安政期(1800中頃)幕末の政情不安定の時期。この列と下左がこの時代のもの。花の形や色がかなり派手なものに変わってきている。名前の付け方も法則に則った今に通用する方式になった。熱心な旗本や植木屋が活躍し入谷の成田屋さんが有名人だった。宇都宮や川越といった近郊の町にも広がった。
第3次が明治20年頃から始まり新潟、仙台といった地方まで広がった。この時代の種は失われていて今再現できない品種が多い。

雌しべが蕾のある茎に変化したもの。

淡雪立田林風紅真五本立三段咲車牡丹。淡雪は葉の斑入り。

風鈴と呼ばれるラッパ状の花弁の先が折り返したようなもの。
出物系の遺伝の仕組み
親木(DdMm)から出物が分離する例(柳牡丹) 
遺伝子が牡丹咲(d)/一重咲(D)/柳(m)/普通朝顔(M)と4つある内メンデルの遺伝法則により出現頻度
親木:    9/16 DDMM DdMM DDMm DdMm
親牡丹:  3/16 ddMM ddMm
一重出物: 3/16 DDmm Ddmm
牡丹出物: 1/16 ddmm ...これが珍重される

親木からは種が取れるが出物には種が無い。翌年同じものを得ようとしたら親木から出現を待つしかない。親木自身も同じ遺伝子を持つのは4/16で更に複雑化する。遺伝子も獅子、柳、台咲等々名前の数だけあるので珍しい品種の発生は1/3000のものもあるという。ここまで複雑になるとマニアックなプロ、セミプロの活躍の場があったようである。
右と下段は現在の朝顔の一例である。海外にある朝顔を取込んだ新しい品種を作る時代を迎えている。

黄堺渦打込丸柳葉淡水色地青紫吹雪撫子采咲。
単弁の柳系統で花弁は幅広く切れ先端に鋸歯が付いている。
青打込堺渦浅沢柳葉白撫子采咲牡丹。葉は指で押したようなくぼみがあり打込みという。色合成の遺伝子を欠いているため種まで白い。
青縮緬尾長雨龍葉江戸紫車咲。車咲の特徴が良く分かる。種を持つ正木物。
朝顔の特長
1)ウィールスのような遺伝子の中を飛び回りある染色体を壊して自分で増えるDNAを持っている(人間のガンのようなもの)。
このため突然変異を起こし易い性質を持ち様々な品種を出現してきた。
2)自家受粉:自分自身の花粉で種ができる。
3)多面発現:咲いた花を見なくても花や葉を双葉の段階で予想できるため変わり物が鑑別できる。

青抱円葉紅切咲牡丹
花弁の一部が鳥甲になっている。牡丹は切れることがある。