海鳴り  

国鉄五能線 
 
国鉄五能線は、奥羽本線川部から東能代まで日本海沿いの147kmをゆく、長大なローカル線だ。
今でこそ沿線の白神山地が世界遺産に選ばれ、海沿いの車窓が評判になってすっかり観光路線化したが
、風太郎が通った頃は打ち捨てられたような生活路線だった。かつて8620が引いた客車列車はDLに置き換わったけれど、実のところそれ以外は昔と何も変わっていなかったのだ。

青森・秋田県境付近は荒波が線路を洗い、漠々たる日本海と、荒涼とした浜辺の景色が広がっていた。ニス塗りの板を背もたれにした古い客車は、車体を軋ませながら6時間近い気怠い時間をかけて岬を廻る。

海風に吹かれ波濤の響きを聞きながら、浜から浜へ辿って撮った、1980年代国鉄ローカル線の断片だ。

           
                                          
                     
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