釧網本線北浜は、「オホーツクに一番近い駅」とされる。
目の前の砂浜の波打ち際がそのまま盛り上がると線路とホームがある感じだ。1981年8月、台風一過の空と海、潮の香りに包まれて、短い北国の夏は今を盛りの爽やかさだった。
台風の影響でダイヤが乱れていたものの、周辺で何枚か撮った。後で現像してみてビックリしたのは、このときのコダクロームの発色で、空の色が濃く深く、いわゆるコダクロームブルーがバッチリ出ているのだ。元々粒状性はともかく発色はいいとは言えず、やっぱりコダクロームって曇りがちで湿度の高い日本の風景には不向きで、カリフォルニアあたりの快晴を撮ってナンボなのかなあと半ば諦めていたのだが、カラリと晴れた湿度の低さも好影響だったのかもしれない。
駅に戻って入場券を求めると、入場券を求めると、ひとり駅を守っていた駅長は自分の手作りだといって「通行証」なる貝殻をくれた。目の前の海で拾ってきた貝殻に一枚一枚筆で手書きしたらしい。「遠くから来てもらってるからこれ位のサービスはするもねー」と笑う。
それから事務室を出て駅の案内を始めた。いわゆる「白線の内側まで・・・」のホームの白線はホタテの貝殻を一枚づつ並べて作ったのだという。最後は駅長の制帽と白手袋を渡されて記念写真を撮れと勧められるまま、海をバックに並んで撮った。
当時は国鉄末期、態度の悪い「国鉄職員」が巷に溢れて、潰れて当然と言われていた。「オホーツクに一番近い駅」の一人ぼっちの駅長は、最高のサービスマンだった。
北浜駅はその後無人化され、喫茶店が併設されたりしたが、木造の駅舎はそのまま残り、海をバックにした佇まいは今も変わらないのは嬉しい限りだ。
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