と
言う訳で、この度故あって、世界的にも非常に評価の高い、[ブレンボ19φラジアルマスター]を購入してしまいました。 これを装着した場合、今のFキャ
リパー(ブレンボ4potレーシング)と合わせて、ほぼブレンボ社が意図したシステムになると考えられます。(ディスクはプラスミューの鋳鉄だが、これは
性能的に見て、ブレンボに引けは取らんだろう。)
しかし単に付けて喜んでいるだけでは、その辺の成金カスタム馬鹿と同じなので、少し突っ込んで考察と簡単な走行テストをしてみる事にしました。 このウダウダが、今後、ブレンボのブレーキシステムを付けてみようと思っている人の参考になれば幸いです。
最初に気になる点と言えば、やはり19mmというピストン径でしょう。 定番のRC30用Fマスター(5/8inch≒15.9mm)から考える と、かなりタッチが固くなって効きも落ちる様に思いますが、雑誌等の記事によれば、『レバー比が国産車よりも大きい為、実質上のピストン径はもっと小さい 物に該当する。』とか…?
という訳でマズ、レバー比を求めてみます。(比較対象は、RC30用マスターと純正マスター。)
左の写
真は、上から順番に、ブレンボ、RC30、純正の各レバーで、赤丸がピストンを押す作用点、黄丸が支点、青丸が力点になりますが、青丸に付いては私が実際
に握っている位置を基準にしました。 各ポイント間の距離とレバー比を一覧にすると、
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となります。(なるほど確かにブレンボのレバー比は大きい。) 因みに古い雑誌(BS誌No85)のデータでは、ブレンボのレバー比が8.7と なっていましたが、そんな端を握る人間は殆どいないと思います…(^^;;; で、実際に各マスターから得られる油圧の違いを知る為に、このレバー比をピ ストン面積で割った係数を求めてみると、
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となりました。(例えば、ブレンボのレバーを10kgの力で握った場合、得られる油圧は、10×2.2=22で、22kg/平方cmになる訳で す。) この数値から判断する限りでは、ブレンボとRC30の差は殆ど無く、ブレンボ19φの実質上のピストン径は、16mmと考えておいて構わないで しょう。
しかし、計算してみて、全くピストン径の異なるブレンボとRC30用の油圧係数が、殆ど同じ値になったのには驚きました。 単なる偶然とは思えま せんし、果たしてどっちがどっちのマネをしたのやら?(^^;;;
ブレンボの特徴とも言えるのがピストンの作動方向で、国産マスターのピストンが単車に跨った状態で左右に動くのに対し、ブレンボのは、前後方向に 動きます。 これは、レバーの動きと同じ向きなので、一見タッチが良くなる様な気がしたんですが、じっくり考えてみると余りメリットは無いよ〜な… (^^;;;(あ、剛性面からなら多少はメリットがあるかな?)
ピストン径が19mmというのも余り深い意味は無くて、実の所は、この形状故にハンドルが邪魔になってしまって十分なピストンストロークが取れ ず、送油量を確保する為にはピストン径を大きくするしか無かったからの様に思えます。
気に入らなければスグ元に戻したいので、可能な限り手抜きで取り付けたかったんですが、 幸いな事にホースやバンジョーは今使っている物がそのまま流用で
きました。(勿論、ブレーキSWは無視!) 少し手間だったのは、
1: 細目ピッチのバンジョーボルトの手持ちはあったものの、ブレンボマスターの取り付け穴の底が国産品と比べて浅い為に、先端を8mm程カットし た事。
2: アルミのアングル材から、タンク固定用ステーを造った事。
3: 買ってきたニッシン製タンクのホース取り出し口の太さがブレンボに比べて一回り太かったので、ブレンボの取り出し口に細めのビニールホースを 被せて太さを合わせた事。
それら以外には特に問題も無く、割と簡単に付いちゃいましたね…(^^;;; 形状が変わってるんでエア抜きがやり難いんじゃないかと思ってたん ですが、その辺りは流石にブレンボと言うべきか、とても簡単でした。
タッチと効きに付いては、数値データから推測された通り、RC30と殆ど変わりません。 ま、当然と言えば当然なんですが、ひょっとして数値デー タだけでは分らないブレンボマジックがあるかも?と期待していたのに… 只、剛性がRC30用よりは高い様で、思いっ切り握った時のホルダーの歪みが少な い様です。(って、そんな力で握る事などマズ無いけど…(^^;;;)
それと気に入らないのがレバー自体のガタ付きで、アイドリング等で共振周波数が合うとビビリ音が出ます。 RC30用が実に上手くスプリングを組 み合わせてあって、レバーのガタ付きやビビリ音が一切無い事を考えると、ちょっと値段の割に情けないです。 又、実際に走行テストをしてみても、その操作 フィールがRC30用を越えるとは思えませんでした。
[晴れたワインディング編]
いつも通りのポイントでいつも通りにブレーキを掛けている筈なのに、結構緊張させられました。 RC30用と比べると、僅かですが効きが落ちてい るようです。 これは一応、数値データから推測できる事でしたが、実走行でのその差は想像以上でした。
それと、レバーの遊びが、RC30用がレバー一本分程度なのに対し、ブレンボは2本分近くもあり、一瞬反応が遅れるのが気になります。 ま、この 辺りは慣れの範囲でしょうが…
握り込んだ後のコントロール性に付いては、残念ながらRC30用との違いを感じ取れませんでした。
[雨中ワインディング編]
雨が降りそうな日は絶対に乗らないんですが、たまたま巡り合わせが悪くて、雨のワインディングを走る羽目になりました…(^^;;; その結果、 グリップの悪い路面での微妙なレバーワークがやり易くてとても楽に走れる事が分り、ふと、「あ、ひょっとしてこれがブレンボの名声に繋がっているのか な?」と思わされました。
ま、効き具合とコントロール性は二律背反なので、ブレンボは効きよりもコントロール性を重視しているんでしょうが、これを生かす為にはもう少し握 力を付ける必要があるみたいです…(^^;;;
はっきり言って、45000円(購入価格)の価値はありません! コストパフォーマンスでは、RC30用の方が圧倒的に上です。(たった一つだ け、コイツがRC30用マスターを凌ぐのは、その重量! RC30:510g、ブレンボ:370g)
せっかく付けたので、しばらくの間は使うつもりですが、正直言って、なんか物凄く損をした様な気分です…(;_;) 多分、コイツを付けてる人の 殆どは、単に高価なブランド物を付けているのが嬉しいだけで、その性能に付いて考えた事なんか無いんでしょうね〜…
しばらく使ってみる事にした以上は、やはりブレーキSWが無いのはマズいので、RC30用のSWを流用して無理やり付けてしまいました。 ま、カナリ不細
工ですが、これ以上無駄な金は掛けたくないので…
すると思いがけない効能がありまして、取り付けたアルミ板のおかげでレバーのビビリ音が出なくなりました。(^^;;;
※2001/01/21 免許復活の為のメンテを機に、RC30用マスターに戻した。
先日、某HPにて、[ブレンボマスターには、レバーの支点−作用点間距離の異なる製品がある。]との情報を得たので調べてみた所、少なくとも現時
点では、
a.φ19×L20(私が6年に前に購入した製品は、これに該当するらしい。)
b.φ19×L18
c.φ16×L18
d.φ16×L16
の4種類が購入できる様です。(レバーも、a、b&c、dの3種類が存在。 記載に付いては、[レディバード
のHP]を参照の事。)
本来なら購入して検証すべきなのでしょうが、残念ながらマルビな為、計算による国産マスターへの概算値を記載しておきますので、交換を検討している方は
参考にして下さい。(キャリパー側も換える場合には、必ずピストン面積比も計算する事。 ピストン比が分らない様な人は、ブレーキ廻りをイジる資格はあり
ませんから、素直に店に相談しましょう。 但し、マトモなお店にね!)
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ピストン径 |
支点−力点(mm) |
支点−作用点(mm) |
レバー比 |
油圧係数(/平方cm) |
ピストン径概算値(mm) |
RC30用マスター |
15.9 |
110 |
24.0 |
4.58 |
2.31 |
15.9 |
国産φ14mm |
14.0 |
110 |
24.0 |
4.58 |
2.98 |
14.0 |
19×20 |
19.0 |
130 |
20.0 |
6.50 |
2.29 |
15.9 |
19×18 |
19.0 |
130 |
18.0 |
7.22 |
2.55 |
15.1 |
16×18 |
16.0 |
130 |
18.0 |
7.22 |
3.59 |
12.7 |
16×16 |
16.0 |
130 |
16.0 |
8.13 |
4.04 |
12.0 |
16×20(参考例) |
16.0 |
130 |
20.0 |
6.50 |
3.23 |
13.4 |
マスター側の場合、一般的なピストン径のみの表示では、どうしても実際の制動力の違いが分り難いので、当HPでは[油圧係数:レバーを握った力
(kg)がどれだけの油圧(kg/平方cm)となってホース内を伝わるかを表す係数]と言った独自(?)の係数を設定した訳ですが、キャリパー側の方は、
[ピストン総面積=効き]と割と分り易いので求めてみます、
[キャリパーピストン面積データ]
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デカブレンボ |
一般品 |
GSX-R1000K3 |
ヤマハ1ピース |
某6ポット |
ピストン径1(mm) |
32.0 |
30.0 |
30.0 |
27.0 |
27.0 |
ピストン径2(mm) |
36.0 |
34.0 |
30.0 |
30.0 |
27.0 |
ピストン径3(mm) |
0 |
0 |
0 |
0 |
25.0 |
ピストン総面積(平方cm)※ |
18.2 |
16.1 |
14.1 |
12.8 |
16.4 |
効き係数表 |
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キャリパー種別 |
デカブレンボ |
通常品 |
R1000K3 |
ヤマハ1ピース |
某6ポット |
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ピストン面積(平方cm) |
18.2 |
16.1 |
14.1 |
12.8 |
16.4 |
マスター種別 |
油圧係数(/平方cm) |
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RC30マスター |
2.31 |
|
42.1 |
37.3 |
32.6 |
29.5 |
37.8 |
国産14mm |
2.98 |
|
54.3 |
48.1 |
42.1 |
38.1 |
48.7 |
19×20 |
2.29 |
|
41.8 |
37.0 |
32.4 |
29.3 |
37.5 |
19×18 |
2.55 |
|
46.4 |
41.1 |
36.0 |
32.6 |
41.7 |
16×18 |
3.60 |
|
65.5 |
58.0 |
50.8 |
46.0 |
58.8 |
16×16 |
4.05 |
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73.6 |
65.3 |
57.1 |
51.7 |
66.1 |
16×20(参考) |
3.24 |
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58.9 |
52.2 |
45.7 |
41.4 |
52.9 |
如何に定期的にカップ交換をしているとは言え、流石に14年間使い続けたRC30用マスターに不安を感じる様になってきたので、一度、最新の
CBR1000RR用のラジアルポンプマスターを試してみる事にしました。(見た目はカナリ無骨で、重量も550gとRC30用よりも40g程重い。)
で、毎度お馴染の油圧係数を求めてみます。(油圧係数に付いては、1.を参照の事。)
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K7用のマスターに換えてみました!\(^_^)/ CBR用と比べると、マスターからのホース取り付け口が真上から真横になったのと、キャリパーへの
ホース取り出し口が約1cm内側に寄ってます。
たったそれだけの違いなのに、見た目のスッキリ感は桁違いにアップ!
オマケに、ハーネスが干渉して傾いていた薄型ライトSWが真っ直ぐになったし、アクセルワイヤーやブレーキランプSWのハーネスとの干渉も殆ど無くな
り、取り回しが凄くスッキリしたのが嬉しい!
で、気になる油圧係数を求めてみます。(油圧係数に付いては、1.を参照の事。)
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換算表に国産ラジポンのデータを追加挿入しました。(エクセルを貼り付けただけの手抜き…(^^;;;)
この表だけを見ると分り難いだろうけど、初めから読めば多分理解できるでしょう。(<説明も手抜きだな…)
減圧バルブを付けて以降、K7のFブレーキの甘さが気になる様になってきたので、マスターを11/16inchに換えて、タッチが悪くなる分はステン
メッシュで補おうかと考え中!(残留エアを極力減らす為に、バンジョーは使わずにフィッティングだけで組むつもり。)
エクセルの表は[コチラ]!(上の表の”支点-力点”の値を変えれば、油圧係数と効き係数が変化
します。)
※2011/1/21修正: ヤフ知恵にて指摘を受けたのだが、国産ラジポンの5/8inchってのは出ていない様だ。 3/4と11/16が出ているの
だから、ピストン径の選択肢として5/8は当然出ている筈だと思い込んでいたのだが、となると横置きφ14mmに該当するラジポンは無いと言う事になる。
コレって何か納得できんのだが、メーカーさんは一体どう考えてるんだろう???(ヤマハの1ピースなんかだと、ラジポンは絶対に無理やな…)