被告人 三好伸清
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右の者に対する傷害被告事件についての控訴の趣意を次のとおり補充する。
55年12月16日
右弁護人 遠藤直哉
同 今村俊一
東京高等裁判所第二刑事部御中
記
殴打行為の存否に関する事実誤認および控訴手続きの法令違反について
一、別紙各写真は「貴様殴ったな」という今道発言の瞬間の現場の状況、各人の位置関係等を各証人の証言に基づき再現し、次のとおり撮影したものである。
1、撮影日時 昭和55年12月12日午後2時から午後3時まで
2、撮影場所 東京大学文学部玄関ホール(本件現場)
3、撮影者 弁護士 今村俊一
4、カメラ キャノネットQL17
5、レンズ キャノン40㎜ F 1・7
6、フィルム コダカラー400
7、撮影位置および方向 別紙図面記載のとおり(赤丸印内の番号は写真番号、赤丸印は当該写真の撮影位置、赤矢印は撮影方向)
二、別紙写真1の1ないし11は、原審証人森田の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面一参照)。
〔以下の証人は、学生森田とS2を除き、文学部の職員である。学生の一人はS2と仮名にしてあるが、現時点で本人との連絡がつかず実名掲載の了解が得られてないためである。
なお、写真の中の人物は、今道役、事務職員役などを務めてくれた学生で、「事件」とは関係がない―須藤の注〕
右写真によれば少なくとも森田、S2、松原は被告人による殴打行為が存在したならば、これを充分見ることのできる位置関係にあったことが認められる。また関係各証拠を総合すると柏原と推認できる事務職員も、殴打行為が存在した場合、殴打箇所までは見えなかった可能性があるにせよ、腕の動き等は充分に見ることができ、殴打行為を充分に感得できる位置にいたことが認められる。
三、別紙写真2の1ないし5は、原審証人S2の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面二参照)。
右各写真によれば、3人くらいの事務職員(この中には関係各証拠により松原がいたものと推認できる。)およびS2、中村のいた位置からは、いずれも、殴打行為が存在したならばこれを鮮明にみることが可能であったと認められる。
四、別紙写真3は、原審証人中村健の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面三参照)。
しかし右証言によれば、被告人の位置や今道の身体の向きは明らかでなく、従ってこれを特定することはできないのであるから、右写真によっては、中村が殴打行為を見ることの位置にいたかどうかの手掛かりは与えられない。ただ、被告人の位置や今道の身体の向き等の条件次第では、中村の位置から殴打行為を見ることは充分に可能であったことが認められる。
五、別紙写真4の1ないし3は原審証人柏原宗太郎の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面四参照)。
右写真によれば、柏原は被告人の右手先の動きまでは見えない可能性があるにせよ、今道及び被告人と極めて接近していたのであるから、殴打行為があれば当然これを感得できる位置にいたことが認められる。
六、別紙写真5の1、2は原審証人松原幸子の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである。(別紙図面五参照)。もっとも松原はそもそも今道が声を上げたことも記憶にないのであるから、松原証言のみによって同人の位置を特定することはできないが、同証言および関係各証拠を総合すれば今道発言の際の松原の位置は別紙図面五記載の位置であったことはほぼ明らかである。従って右写真は、松原が右の位置にいたことを前提に撮影したものである。
ところで、松原の証言では、被告人の位置や今道の身体の向きは明らかでなく、従ってこれを特定することはできないのであるから、右写真は、松原が殴打行為を見ることのできる位置にいたかどうかを明らかにするものではない。ただ被告人の位置や今道の身体の向き等の条件次第では、松原の位置から殴打行為をみることは充分に可能であったことが認められる。
七、別紙写真6の1ないし4は原審証人今道友信の証言に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面六参照)。
右写真によれば、学生二人(関係各証拠によれば、この中に森田が含まれている可能性が強い)の位置からは殴打行為を鮮明に見ることが可能であったと認められる。
八、別紙写真7の1ないし5は、被告人の原審における供述に基づき再現した現場の状況を撮影したものである(別紙図面七参照)。
右写真によれば森田及び松原は殴打行為を充分に見ることのできる位置にいたことが認められる。
九、以上によれば、証人によっては位置に異同はあるが、どの位置関係を前提としても、もし殴打行為が存在すれば、証人のうちの多くはこれを目撃できる、あるいは少なくとも感得できる位置にいたことが明白となる。被告人が誰からも気づかれることなく今道を殴打することの不自然性は、以上の写真からも明らかというべきである。
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〔須藤の注: 上の文と写真・図面は「控訴趣意補充書」の一部である。控訴審(高裁)では、今道のデッチ上げ告訴に基づく「11.7事件」で三好君の「殴打行為」を不当に認定した。(→資料B4を参照)これに対して、弁護側は、1981(昭和56)年6月に最高裁第一小法廷に上告を行った。
上の控訴趣意補充書の論旨と図面等と、次に掲載した「上告趣意書」の論旨を参考に、11・7の「殴打行為」が非存在であることを確かめてほしい。
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