大王はこう考える
フランス語の上達について | |
フランス語に限った話ではありませんが、物事が上達する過程は必ずしも一定な右上がりではありません。 モノによってその形態は様々だと思いますが、同じ角度に右上がりが延々と続く…というものはないかと思います。 少し想像してみてください。はじめに直径1センチぐらいの粘土の球体があって、そこにもう一つの直径1センチの粘土の球体をくっつけます。すると球体が二つくっついた形になりますね。その粘土をまぜて新たに球体をつくると、最初より少し大きな球体ができます。 そこにまた小さい粘土の球体をくっつけます。混ぜて新しい球体にします。また少し大きな球体ができます。 外国語の習得とはこの繰り返しです。 ですから、ひとつのことを習得したら「次へ行く」のではなく、「今まであるものに新しいものを少しだけ付け足して混ぜる」という感覚がいいのだと思います。「次へ」ばかり行っていると、確実に「前の」ことを忘れていくことを保証します。 |
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フランス語の文法について | |
以前「文法なんかいらない」説が流行したことがありました。「文法なんかいらない。しゃべれることが大切だ」と。 これは半分あっています。「しゃべれることが大切」というところです。せっかくフランス語がわかるようになったら、いろんな人としゃべった方が楽しいですよね。(たま〜に楽しくないこともありますが…)。ま、とにかくコミュニケーションするのはいいことです。 でも、文法は必要です。 こんなことを言うと、「文法でがんじがらめになってしゃべれない」という答えが返ってきそうです。 その通りです。 それではどうすればいいのでしょう? 文法でがんじがらめにならないでしゃべればいいのです。 よけいわからなくなりましたね? 「文法なんか必要ない。こういうときにはこれを言えばいい!」というときの、「言えばいい」文章は、文法のルールにのっとってつくられています。文法のルールにのっとっていない文章は通じないからです。辛うじて通じても、相手は困惑するかあなたが言おうとしていることの一部しか伝わりません。 文法は大切だけど、意識しないでしゃべる。これが一番いいのです。 みなさんが日本語をしゃべる時は文法を意識していますか? 答えはNOですね。 それではみなさんがそうやってしゃべっている日本語は、文法的にメチャクチャですか? これもNOですね。 フランス語でも同じことをやればいいのです。 それではなぜ今まではそれができなかったのでしょう? それは一つのことをマスターする前に「次へ」行ってしまうから。そして一度にあまりにもたくさんのことをやろうとするからです。 新しいことが出てきたら、はじめのうちは考えながらやります。何度も繰り返してやっているうちに、考えなくてもできるようになります。例えば車の運転がそうです。教習所で初めて運転した時は、「ええっと、まずブレーキを踏んで〜、キーを右に回して〜〜、ギアをドライブに入れて〜〜〜〜、ハンドブレーキを…」って考えながらやっていませんでしたか? 熟練のドライバーはどうでしょう?ほとんど考えないで体が勝手に動きますね。それどころか、ブレーキを踏みながらシートベルトを締めたり、ギアをドライブに入れながら後方チェックして右ウインカーを出す…といった応用技まで勝手に身についています(教習所では教えませんよね)。フランス語もこれと同じです。 「でも、高校の英語の時間にやったみたいな文法事項を覚えるのはメンドクサイな。」 ごもっともです。文法が大切といっても難しい文法用語を頭に入れる必要はありません。ごく基本的な「ミソ」の部分のみ理解したら、その使い方をマスターすればよいのです。 頭が痛くて薬を飲むときに、いちいち「この薬は○○が何ミリグラム、××が何ミリグラム…とは考えませんよね。チェックするのは、「この薬は頭痛の薬か?」と「いつ、どうやって飲むのか?」ぐらいです。要するに「使い方」だけでいいのです。でも、医師や薬剤師は専門的な知識にのっとって、「この薬の方が○○の成分が多いので、あなたの症状にはこっちがいい」とか、「あなたは××アレルギーがあるからこっちの薬の方がいい」などと言えなければなりません。 頭痛薬を買いに行ったら、薬局で医師用の説明を長々とされたらウンザリしませんか? 文法もこれと同じで、難しい文法用語は専門家が他人に教えるときに系統だててモノを考えたり、専門家同士で会話が円滑に進むために存在する…ぐらいにとらえていただいてもかまいません。専門家用の知識を高校生に教えよう(しかも受験用に無理やり叩き込もう)とするから、多分高校の英語の時間がつまらなかったのです。(少なくとも私はつまらなかったです…えへへ) このサイトの「文法」のページには文法用語があふれていますが、それは以下の2つの理由からです。 1)文法用語別に分類しないと収拾がつかなくなってしまう。 2)みなさんの教科書や参考書に載っている文法用語をもとに見たい項目を検索できるようにする。 それでも文法用語キライ! という人のために、表の右側にサンプルをつけておきますので参考にしてください。 |
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語彙の増やし方 | |
いわゆる「根性」のある人はレポート用紙に縦に1本の線をひいて、左側にフランス語、右側に日本語を書いて丸暗記…という手もあります。あまりおススメしませんが…。 上の例は冗談だとして…、ちょっと想像してみてください。 例A) あなたは今20行ぐらいのフランス語のテキストを読もうとしています。一度サッと目を通してみました。知らない単語だらけです。知らない単語に黄色のラインマーカーを引いたら、ページが真っ黄色になってしまいました。仕方がないので辞書をひいて意味を行間に書きこみました。これだけでも相当の労力を費やしました。でも知らない単語だらけの文章は、なんとなく意味がわかる気がするものの、結局何が言いたいのかわかりません。 例B) あなたは今20行ぐらいのフランス語のテキストを読もうとしています。一度サッと目を通してみました。知らない単語がいくつかあるものの、ほとんどは知っている単語ばかりです。テキスト全体から「楽勝感」がただよっています。辞書がなくてもおおよその意味はわかりますし、知らない単語の意味も想像がつきます。でもきちんと理解したいので辞書を引きました。想像した単語の意味もだいたい合っていました。テキストを何度か読み返すうちに、新しい単語の意味も覚えてしまいました。 みなさんはどちらをやりたいですか? もちろんBですよね。でも実際にはAをやってウンザリしながら勉強している人が多いのです。 語彙を増やすには断然Bのやり方をお勧めします。「根性」がある人もない人もです。 ただしBのやり方には量が必要です。外国人学習者向けに簡単なフランス語に書き下ろされている本のシリーズがありますのでそこから選んでみましょう。有名な小説やノウハウ本、趣味の本、「フランス文化」のような解説本などいろいろな題材のものがあります。こういったシリーズは「500語まで」とか、「2000語まで」、「3500語まで」といった大まかな語彙数が明示してありますので、自分の力に合わせて選びましょう。私の経験から言うと、自分の力が100だとしたら、60〜80ぐらいのレベルのものがちょうどいいように思えます。それ以上簡単だと逆に簡単すぎて飽きてしまいます。 そうやって大量に読んでいくうちに、知らないうちに語彙力はアップしていきます。今まで「2000語まで」がちょうど良く、「3500語まで」はちょっと難しいなと思っていたのに、ある日突然「3500語まで」が読めてしまいます。そしてこの「大量読み」には良い副産物も付いてきます。 それは、基本的な構文の把握力です。ガーデニングの話をするとき、音楽の話をするとき、サッカーの話をするとき、使う単語はそれぞれに違いますが、文章を構成する構文は同じです。大量に読んでいくうちに同じ構文が何度も頭を通り、理解するのに時間がかからなくなります。そしてよく使う基本的で大切な構文ほど、どんなテキストにも良く出てくるのです。 外国人向けの簡単なテキストでは物足りなくなったら、インターネットで読みたいものを探してみましょう。題材はなんでも良くて、自分で興味のあるものがいいと思います。例えば欧州サッカーが大好きならば、欧州サッカーに関するテキストを探してみましょう。昨日の試合のレポートを読んでもいいし、好きな選手の生い立ちやインタビューなどでもいいです。 好きなことについてはすでに知識があるため、書いてあることを理解しやすいばかりか、いわゆる「行間」も読みやすくなるものです。ただしネットに載っている文章はフランス語を母国語とする大人向けに書かれていますので、難しいことが多々あります。難しすぎると感じたら無理をせず、またわからなかったからと言って落ち込んだりする必要はありません。あくまでも「読めるものを大量に」が基本です。 語彙を増やし、読解力をつけるのには「大量読み」が一番です。 |