<板の振動で発生する音波>
実際には音叉の腕(板)の振動の振幅は 1mm 以下,音波の波長( 500Hz で 60cm 程度 )にくらべて高々 1000分の1 程度である。したがって振動による腕の速さも,音速とくらべて,やはり1000分の1程度である。
音叉の腕が,振動の中心位置を右向きに通過するときに生じた 密の部分 は,音速 で前へ伝わって行き,腕が右へ開ききる 「 1/4 周期 」後[max]には, 「 1/4 波長 」 も先[▼]へ進んでいる。 このとき瞬間的に静止する腕の前面付近では (および背面付近,すなわち音叉の内側でも), 媒質の速度は 0,したがって 粗密変化なし(中立) である。
問1 では,音叉が開ききった瞬間の,『 半径が音波の波長にくらべて 十分小さい 円の周上 』 の点における疎密の状態を答えるように指示されており,物理的に意味のある結論はこれ以外にあり得ない。円の半径が波長に比べて十分小さいなら,板の表面から円までの距離はさらに小さい。
大阪大学の回答は,要するに 「円の半径は 厳密には0でない ので,円周上の各点では正確に中立ではあり得ず,疎か密かのいずれかに決まる。粗密というのは必ずしも最大最小を意味するものではない」,すなわち図の ABCD の順に「疎密疎密」が正しいという。確かにウソではないが,この手の物理的に全く意味のない解答を要求するのは,いかにも姑息で反教育的であると言わざるを得ない。