『ロマネスコ』  2008年2月

多少はフラクタル・オブジェクトを意識している者なら 「なんだぁ? これは?!」 と誰しも仰天しそうな,自然の不思議な造形。目にした瞬間に 「フィボナッチのらせん」 が念頭をかすめた ----- フィボナッチ数列も確か由来は植物学だった?

     大きさは直径が 15cm 程度。  (コピペ可: 画像は,教材としてなら引用なしで自由にご利用ください。) 



 2月のある暖かい日に京都府立植物園で見かけ,家にデジカメを取りに帰って写真をとったのだが,名前を確かめてくるのを忘れた。その夜,元同僚の植物の先生に画像を添付して問い合わせたところ,メールの中継を頼んだ,何事にも目を輝かせる経理担当の若い女性が,ネット上で自分で調べてその日のうちに返信してくれて,「ロマネスコ」 という,カリフラワやブロッコリと同類の食用野菜であることがわかった。 イタリア語で 「ブロコリ・ロマネスコ」 と言うそうだ。(後日,彼女の友人から聞いたところでは,実は彼女,毎年ロシア語の通訳として外国出張に雇われる外国語達者だそうな。未開の地への調査探検か公用旅券の政府派遣ならいざ知らず,通訳同伴の外国出張なんぞ,めったなことで行けるものではないから,よほどロシア語に堪能で重宝されているのだろう。写真を見ただけで 「ロマネスコ・ブロッコリ」 を探しあてた技量は大したものである。)

 「フラクタル」 「ブロッコリ」 をキーワードにして検索したら,すぐに見つかったという。これは自分では思いつかなかった。現物を目にしたときの感激のあまり,自分が 「最初の発見者にちがいない」 という思い上がりもあって,よもやネット上に出まわっているとは思わなかったのだ。野菜なら,とっくの昔に世界中で何人ものフラクタル屋さんが気がついてネット上に流していても,ちっとも不思議ではない,みごとな造形だ。

 数日後に,彼女の家の近くのスーパーで 「渦巻きブロッコリ」 と名づけて売られているのを見つけたと,知らせてくれた。ただし,彼女,野菜嫌いの ずばり肉食女子! 「先生に食べさせようかと思ったけど,これほど美しくなかったから買わなかった...」 とか何とかあやしいものだが,それはさておき,買ってきてもさてどこから食べ始めるか,目移りして迷うに違いないし,何よりも少しでもフラクタルをかじった者なら,かじってしまうのが恐れ多い姿をしている。

 そう言えば 「FRACTALS」 という教材ビデオで,マンデルブロー博士がカリフラワを手にし,少しずつ裂いていきながら対談している場面があった。(それにヒントを得て,自分の教材にカリフラワより少し安いブロッコリを使って撮影したのが下の図)  もし博士がロマネスコを手にしていたら,演出効果満点だったろうに惜しかった。

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