終身はどこへ消えた            

終身保険が消えてしまった。」
という戸惑いと怒りを含んだ相談が時々舞い込みます。
キチンと保険料を払ってさえいれば、知らないうちに終身保険が無くなってしまうことなどあり得ません。では何故そうなったか?

原契約を解約して新たな保険に加入し直したり、転換等で内容を変更した結果、新契約や転換後の保険の内容が終身保険でなければ、結果的に終身保険が無くなってしまったということになります。

私は基本的に終身保険は大変有益な保険のひとつであると信じていますので、必ず終身保険を基礎部分の中心に据えたプランを選択肢として提案します。 最終判断はもちろん100%お客様の意思で取捨選択されるのですが、少なくとも終身保険についての考え方は必ずキッチリとご説明します。そして殆どのケースで金額の大小の差異はあるものの、終身保険をベースに据えた保障プランに落ち着きます。 保険金額は500万円くらいの場合もありますが、1000万円や1500万円というケースも少なくありません。

終身保険をベースにするというのは私だけの特殊な考え方ではなく、少なくとも私の親しい保険業界仲間のあいだではごく普通に語られています。 金額の大小はさておいても、終身保険の効用について説明するのが大事というのは我々の間ではごく一般的なのです。

ところが、現実にはこの終身保険を中心とした提案はあまり一般には行われていないようなのです。保険の見直し相談の方の中には、現在加入している保険会社の担当者から見直しを勧められているが、その内容がどうも納得行かない、という方がいらっしゃいます。

そういう不安もあってこちらにご相談に来られるのですが、提案されている内容をお聞きすると、前述のように終身保険が無くなってしまう形の提案になっている場合があります。
また数年前に保険を切り替えたのだが、やはりもう一度見直したいという相談も多く、そうした場合にも、切り替えた後の保険には以前はあった終身保険が無くなっているケースが少なからず見られます。

終身はどこへ行った?・・・という疑問が沸いてきたわけです。
そこでインターネットで各保険会社のお勧めプランなどを試してみることにしました。
変額専門の保険会社及び破たん処理のみの会社を除いて、全生保会社のサイトにアクセスして試した結果、大きくわけて3つのグループに分かれることを知りました。

グループA・・お勧めプランというのはなく、保険商品紹介のコーナーに行くと、終身保険を他の定期保険や医療保険と同等に並列的に紹介している。
このグループに属するのは殆どが社名にカタカナやアルファベットを含む会社でした。所謂外資系、旧外資系です。2社ほどの漢字社名の生保も含まれます。

グループB・・モデルプランに終身保険が含まれている。
ひらがな社名の損保系7社と一部の漢字社名の中堅生保です。なお損保系7社のうち4社では保険料払い込み中の解約返戻金を低く抑えた低解約返戻金型の終身保険が中心でした。

グループC・・テレビCMで見た記憶のある特定の商品名が画像入りで大き目に紹介されている。このグループは漢字社名の大手生保5社であり、これらの特定商品名のついた保険の内容は全てが終身保険を含まないタイプの組み合わせ保険でした。漢字社名の会社10社のうち、終身保険の無いタイプを中心にしているらしいところが8社で残り2社が所謂定期付終身であり、終身保険部分は100万円でした。

この結果から、終身保険の販売に積極的ではないように見える保険会社がかなり多いと考えるのにさほど無理はないと思われます。こうした傾向の大きな要因の一つとしてバブル崩壊後の生命保険業界の状況激変が挙げられると私は考えます。

生保の運用の見込みである予定利率が最高時の6%からずるずると下がり続けて、今年には1.5〜1.75%程度になってしまったことは周知の事実ですが、この予定利率の低下は貯蓄性のある養老保険や年金保険そして終身保険の保険料に大きく影響します。
その結果として終身保険の保険料は以前に比べて非常に高くなってしまいした。

平成5年頃までに30歳の男性が加入した1000万円の終身保険の保険料月額は60歳払いでおよそ9000円弱でしたが、今(平成16年)では多くの生保で約2万円、比較的安いと思われる旧外資系生保の同等の終身保険でも1万8400です。また、60歳までの解約返戻金を低く抑えたタイプの終身保険でも1万8千円でした。(ネット上での試算)
つまり終身保険の保険料はこの10年間で2倍以上にまでアップしてしまったわけです。

不景気が続くこのご時世で、保険料が2倍になってしまった終身保険は確かに販売しにくいというのは容易に想像できることです。しかし、いくら保険料が高くなったといっても、必要な人にとってはやはり大事な保険なはずですから、重要な選択肢として、検討対象として示されるべきだと私は思います。
また、安い保険料で加入していた終身保険を見直しと称して、なくしてしまうようなやり方には問題は無いのでしょうか。

各社のホームページなどで終身保険のメリットについて是非確認してみて下さい。



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