貯金と保険            

貯金と保険とは分けて考えなさいという意見があります。
保険に貯蓄性を求めるのは筋違い、保険は保険で掛け捨てとして割り切って、貯蓄は別途考えましょう。・・・というのですが、私には少し異論があります。

『 保険は貯金の一種であり、また、貯金は保険の一種でもある。』
ことばの遊びと怒られそうですが私はこう考えています。

貯金にはいくつかの目的があります。手持ちのお金では今は買えない物を将来買うための貯金もあれば、将来の不測の事態に備えておくための貯金もあります。
将来の不測の事態に備えるために貯金を始めても、充分な積立が出来ていないうちにその不測の事態が起きてしまうかも知れず、そうした不安を解消するのが保険の役割です。

例えば、病気やケガで長期に入院する場合を想定して長期療養費用準備に毎月5千円の積立て貯金を開始したとします。不幸にもたった1年目で骨折の大怪我をして3ヶ月入院して手術した場合、療養費用の貯金はまだ6万円しか貯まっていませんが、もしも同じ5千円で給付日額7千円の医療保険に加入していたなら(30歳男性、某社終身医療保険7千円、60歳払い保険料5040円)、入院給付と手術給付合わせて80万円近くを得る事になります。保険は目的を限定した貯金の一形態であると言えます。

一方医療保険は一般的に入院や手術をした場合に目的を限定しているのですから、入院、手術を伴わない療養という事態には対応できません。
長期入院が不安だからといって医療保険ばかりに沢山加入しても入院ではない不測の事態の際には一切役に立ちません。ですから目的を限定しない保険、つまり貯金の意味をもった形の保険も必要なのだと私は考えます。不測の事態には保険と貯金の両立てで備えるという考えです。

また、積立金のあるタイプの終身保険を持っていれば、子供が一人立ちするまでの時期には死亡保障を主な目的としてとして機能していたその終身保険が、子供達の独立後には今度は親自身の介護費用準備の役割をも担うことにもなりますし、解約返戻金を利用した自前の年金として役立てることもできるとすれば、終身保険は立派な老後資金準備の貯金でもあります。
払ったお金が戻ってくるから貯金、掛け捨てだから保険、という一面的な捉え方で貯金と保険の事を言っているのではないのです。

保険と貯金を区別せよという提言は、日本人の貯蓄好き性向を利用して契約を獲得しようとする保険屋さんのセールストークに対抗するためには良いアドバイスになるでしょう。
しかし反対に貯蓄性の無い掛け捨て保険(短期の高額死亡保障重視の保険)を売りたがっている保険屋さんがいたとすれば、悪しきアドバイスとなる可能性もあります。

保険も貯金もお金を準備する手段なのであり、ライフプランの重要な要素です。
保険と貯金は相互に関連を持ち機能するものと認識して考えるべきだと思うのです。



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