保険の安売り合戦         

(2004年秋の段階ではまだ復活には時間が掛かりそうですが、)
吉野家の牛丼が280円に値下がりした時に、その大ニュースに本気で小躍りして喜んでしまった人って結構いたんではないでしょうか。私もその一人、『牛丼はやっぱり松屋じゃなくて吉野家だなあ』派なので、3回に2回は高い方の吉野家に行っていましたので、この値下げは嬉しく思います。ただし、これで一段と生活習慣病への距離が縮まってしまうことを懸念しますが、、、。

でもちょっと冷静に考えてみると安いことは良いことだとばかりは言っていられない面があります。今までにもやる気になればできたはずの経営努力を、厳しい現実に合わせて実行した、というなら消費者にとっても企業にとっても今だけでなく将来に向けても良いことです。
しかし、もうすでに数年前から価格競争は激化していてあらゆる経営努力を図りリストラクチャリングを実行してきた企業が、更なる価格競争の世界でもがきつつ取り合えづ置いて行かれないために無理矢理値下げ合戦をしているとすれば本当にこれで良いかはちょっと微妙な話です。

度を越えた安売り合戦は、どこかで必ずその歪をさらけ出すように思います。「安かろう悪かろう」の商品では消費者は何らかの不利益を蒙ります。質の悪いものをつかまされたら幾ら安くても消費者には利益はありません。仮に牛丼の味が少しまずくなるくらいならまだいいのですが、健康上、衛生上の問題が生じたりすれば安売り競争は、消費者にとって本末転倒の結果となります。

また安くするためには、材料を納入する業者や設備業者、運送業者などにも必ずしわ寄せが行きます。つまりこれまで以上に商品やサービスを買い叩かれるはずです。そして色々な業界で収益が低下し給料が下がり、就業環境が悪化し、病気やケガが増加し、ゆとりがなくなり、家庭にも寒風が吹き、社会が荒廃します。

安売り合戦は、色々な業界に飛び火します。たとえば保険業界。さてこれからが本題です。保険料を安くするのには色々な方法があります。保険には仕入れは無く、出てゆくお金の行く先は、@保険会社の社員、A保険を売る外務員、Bそれらに関わる諸経費、そしてC保険金や給付金の受取人である契約者や被保険者です。
出て行くお金をどこかで減らさない限り保険料を安くすることは出来ませんね。

この視点で安売り保険の中身を検証すると話がとても分かりやすくなります。
@を減らすのは最後の最後。会社が潰れてまでも減らさなかった事例さえあります。(千代田生命や東京生命トップへの高額退職金等の事実)
Aはあまり減らすと売上も減ってしまうので、なかなか難しいのです。せいぜい売上の少ない効率の悪い外務員を辞めさせる程度です。
Bも今までの経営体質からして簡単ではないが、経費の掛かるサービスはなるべくやらないようにします。たとえばいちいち担当者が詳しく説明をすることを省いて簡略化するために販売ツールを定型化する。商品をパッケージ化してコスト削減する。また新契約以外の仕事を自動化するなどでしょうか。でも限度があります。

保険金の支払いを減らすのがもっとも効果の高い対策ですが、それでは保険になりません。でも今後のこととして加入条件が厳しくなるというようことはあるかもしれません。
リスク細分型自動車保険で事故率の低いグループが集まりやすくなるように、生命保険についても事故率(例えば死亡率)の低い人だけに保険を積極的に販売する、などということは決して無いようにして欲しいです。

さて牛丼は毎日食べない限りは、ちょっと肉が脂っこくなった程度で命を落とすことは無いでしょうが、保険の場合はことは重大です。

安い保険には必ず理由があります。安い以上は必ず何かが抜けているのです。その抜け落ちている何かが、たまたまその人にとって人生を棒に振るような結果をもたらすかも知れません。安くする方法については色々な記事で触れているのでここでは省略します。保険の安売り競争はもうそろそろ止めて欲しいとつくづく思うのです。
本当に良いものなら少くらいし高くても買いますよね。 みなさん。



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