買ってはいけないを買ってはいけない・・                   

「買ってはいけない」という本がベストセラーになったことがありました。 ブランドイメージや有名企業という看板の裏に隠された真実を暴き出して、消費者に警告するという発想はとても素晴らしいし、勇気もエネルギーも必要とする大プロジェクトだったのではないでしょうか。
しかし出版後の反論合戦を見ていて、一体どちらが正しいのか私には判らなくなりました。

記事を世に出したいがための無理な論理展開であるとか、「駄目である」という判定がまず有りき、という姿勢が見え見えだという指摘があったりしました。
『「買ってはいけない」は買ってはいけない』が出版されたあたりで一段落したみたいです。

私の専門分野の保険業界では、買ってはいけない保険があると私は思います。
しかし、そういうことを指摘すること自体が業界の禁止事項です。他社商品を誹謗中傷してはいけない、他社商品の説明すらしてはいけないのです。
(買ってはいけない保険とは、何か特定の保険商品を指すのではありません。 自分の必要性や考え方にフィットしていない保険のことです。)

自分の商品を正当化して優位を勝ち取るために他社の商品を悪く言ってはいけません、というわけです。 しかし、だからといって、人が明らかに騙されている、もとへ・・明らかに勘違いをして買っているという現実を知っていても黙っていなければいけないのでしょうか。
消費者と業界とどちらが大事なのだと、ついつい言いたくなることもあるのです。

自分の都合の悪い情報をあえて伏せておくとか、自分の有利な方向へ導くような表現を使うとかいうことも、業法ではっきりと禁止されています。
しかし現実問題として、全てを説明するのは不可能です。結局は「詳しくは約款をお読み下さい。」で逃げてしまう事もありえます。本当のことを言うというのは何とも難しいのです。

最近加筆訂正のうえ文庫化された村上龍さんの「あの金で何が買えたか」を読みました。バブル経済崩壊に伴う金融機関の不良債権問題、金融システム保護の問題等々に関してどんなことが起きていたのか、何が問題なのか、問題の本質は何かということを国民が「知ること」が最も重要であるという基本理念のもとにこの本はできました。

我々庶民が権力や巨悪の犠牲とならぬようにするための対抗手段は「知る」ことであるということです。全く同感ですし、庶民が本当のことを知って欲しいと思い続けて私は保険の仕事をしています。
またこのホームページも、本当のことを一人でも多くの方に知って欲しいと願いながら造っています。みなさんあまりにも知らな過ぎます。 「買ってはいけないよ」言ってくれることを待っているのではなく、自ら捜し求め、いつも本質を知るようにもっと心がけるべきだと思います。

良いお店は良いお客の数で決まるのです。良い保険会社は良い契約者の数で決まり、そして良い国は良い国民の数で決まる、と思ったりするのです。



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