商売人 | |||
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”商売人”というとみなさんはどんなイメージを抱きますか。私の場合は、良い方のイメージとしてはとりあえず「天秤の歌」の近江商人かなあ。
ご存知でしょうか? いわゆるセールスの世界に身を置いている人が、研修などの何かの機会にビデオを見ているはずのあれです。近江商人のタマゴが鍋の蓋を洗うあのドラマです。 でも、このコラムで言いたいのは本来の商売人のことではありません。 世の中には色々な「お仕事」があります。お仕事の本質は人が欲しいと思うもの(またはして欲しいこと)を供給することですよね。ご飯を食べたいという人に対してご飯を造ってあげることはお仕事ですから、お金をもらってそのことをしている飲食店はお金をもらってお仕事をしているし、普通の家庭の主婦もとりあえずお金は取らずに毎日お仕事をしています。 お仕事はお金をもらうとか、何かの引き換えにするとかいうのとは無関係です。ボランティア活動に出かける時に、「さあ仕事に行って来る」というのは自然のことです。 しかし、「商売」となるとちょいと違ってきませんか。「さあ商売、商売」なんて言って、ボランティアを始める人はまずいません。 人に何かを供給してその対価をつまりお金を受け取るのが商売です。「実に良い仕事をする人だね」というときのその人は金儲けがうまいとか儲かっているとかいう事とは無関係で、良いものを生み出したとか、感動を与ええくれたとか、そういうことですよね。 「あの人は商売人だねえ」という場合は、「お金を受け取るだけのことはあって、お客には気を遣ってるねえ」とか、或いは「なんだかんだいってもちゃんと自分の収入に結び付けちゃったねえ」というようなニュアンスではないでしょうか。お金が絡むのです。 さて、やっと本題です。世の中の様々な仕事の中には、これはあまり商売にはして欲しくないなあ、と思う分野が結構あります。 例えばすこし前に悲劇的な事件のあった保育所。 小さな子供の命にも関わる事のあるこういう仕事は「商売、商売」では困ります。 役所の仕事もしかり、印鑑証明1通で200円なんて信じられない。(脱線) 商売のみに徹すると、売れさえすれば良いということになり、従って売れた結果で多少世の中に迷惑を掛けてもそれは知らないよ。ということになります。 例えば私の尊敬する(していた・・かな?)ソニーさんのウォークマン。実に素晴らしい便利で快適な商品ですが、一方満員電車で隣の人のウォークマンのイアホンから聞こえてくるシャカシャカ音は耐えられない場合もあります。天下のソニーも間接的に人様に迷惑を掛けてしまう場合はあるのです。そこで良い意味の商売人は何をするかというと、音漏れの少ないイアホンを一所懸命に開発したり、取説で音量についてしつこく注意を促したり、一定以上に音量が上がらないようなスイッチを作ったりするのです。 次に悪い方の商売。わたしは、保険という商品は商売の道具にはしてはいけない商品だと思っています。だって、本来保険というものはです、貧しい庶民が(貧しくない普通のでもいいですが)、人が死んだり大怪我したり家が壊れたりして露頭に迷うことを少しでも避けようとして仲間でお金を出し合って貯めておき、事が起きたらその人のためにそのお金を使わせてあげる、という所謂相互扶助のシステムです。人間の賢さとか優しさとかがなければ成り立たない、とても暖かいものなのです。 これをです、自分のあるいは自分達の利益追求のネタにしてしまって良いと思いますか。 現金が毎月集まってきて、支払うことはあまり無い、つまりお金がどんどん貯まってゆくおいしい商売と思ってしまってはいないでしょうか。 多くの保険会社は社会的責任と言葉では勿論強調しますが、本音はおいしい商売などと思ってもらっては困ります。儲けをいかに保つかということを主眼に置いて商品開発をしたり、販売戦略を練ったりしては困ります。 保険の世界では本当に最低必要な適正利益の追求を本旨として頂きたいと思います。 がらりと話を飛ばしますが、大前研一さんの書籍の記述でこんなのがありました。 「日本人は一般的に12歳から22歳まで英語教育を受けるが外国人と英語で会話することができる人はあまりいない。日本の英語教育がなっていない理由は簡単なことである。つまり英語教師がいるからだ」 というのです。 外国人が学校に入ってきて、本当の英語を教え始めてしまえば、文法だ解釈だ作文だと理屈を言ってはいるが実際には外国人と会話も出来ない類の英語教師連中が商売にならなくなるからだ、という説です。なるほどと感動しましたね。 世の中は、なすべき仕事を「商売」にしてしまう人たちによって、いつも悪くなっているのだと常に感じています。保険、株式投資、金融商品、学校教育、受験産業、伝統芸能、マスコミ報道、書籍、パソコンの開発、役所の業務、不動産開発、土木工事、共済組合、原子力発電、病院経営、製薬、、、、もう面倒です。全ての産業において、その本来のお仕事を単なる商売のネタとしてしまうことで、本質を見失い、ポリシーを忘れ、人に迷惑を掛けることが先行してしまっても平気でいる企業人たち。 どうですか。どんなお仕事も商売になるのですが商売に利用してはいけない世界があると思うのです。商売として続けて行くには守るべき掟や、商売の本質、商売人の資質といったものがあるのです。他の世界はともかく、少なくとも保険という人類の知恵と優しさが生んだこの崇高な仕組みを商売に利用するのは絶対に止めて頂きたいものです。
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