定年退職           
このテーマは本気になれば一冊の本になるようなものと思いますが、今回は急に思い立ったので少しだけ触れてみます。

保険の相談者の方々からのコメントに「60歳の定年までに保険料を払い終えたい」というのがよく登場します。 そういう場合に私は、60歳定年というのはもう現実にはありませんと話すことにしています。もちろん完全に無いということではありませんが、無くなりつつあると考えるのが正解だと思います。

私は所謂サラリーマンの立場を12年経験し、その後9年間のソニー生命営業社員(LP)時代は半分会社員、半分独立自営、そして完全に独立してからほぼ6年になります。 ソニー生命もその前の会社も所謂定年は60歳でしたが、今は保険代理店経営ですから私にはもう定年はありません。 死ぬまで(というか、できる限りは)働いていようと思っています。

私は厚生年金も切れ目なく加入し続けましたし、現在は国民年金の保険料を毎月夫婦で収めていますから老齢基礎年金も老齢厚生年金もいくらかは受け取れるでしょう。しかし年金などよりももっともっと当てになるのは、自分で収入を生み出すことです。
生涯楽して暮らせるだけの資産を60歳までにつくる自信は全くありませんし、公的年金はひょっとすると現状の半分くらいの水準になる可能性もあると思っているので、やはりできる限り働き続けることのできる環境を確保するべきだろうと考えます。

60歳で定年退職し、あとは退職金と年金で悠々自適にのんびり老後を・・・ などということを少なくとも今50歳以下の人はもう考えるべきではないと思います。 まあ、あと数年で定年、ローンもあと数年でおわり、退職後も5年〜10年くらいは子会社、関連会社(または天下り先)で雇ってもらえるし、なんていう恵まれた方も中にはいらっしゃるでしょう。
しかし、現在50歳未満の普通の勤労者で、そんなことがハッキリ分かっている人は、ほんの一握りの例外的な方々ではないでしょうか。

お役人だって、大企業の幹部クラスだってあと10年もすれば環境は激変しているかもしれませんよ。 まして40歳台以下の人達にとってはもう「60歳定年」なんていう時代もう終わっているのだと私は思います。
退職金制度を見直し、場合によっては廃止する企業がどんどん出てきています。 雇用環境、労働市場、退職制度、社会保険、医療制度等のすべてが大きな変化の途上にあります。

では定年は65歳になるのか、70歳になるのか、、そうではありません。 長引く不況から脱出したとしても、企業が60歳とか65歳までの就業を誰にも約束してくれることはもうないと思います。定年、という観念自体があまり意味を持たなくなるというように考えています。
(20代前半のサラリーマンのアンケートでも、同じ会社に定年まで勤め上げる、と答える人はもうあまりいないそうです。働く側の意識もだいぶ変化しています。 )

第一、60歳で働くのをやめてしまって、それから20年、30年も一体何をして生きるんでしょうか。 今、各方面で盛んに取りざたされる年金問題についてのコメントは、政府がいい加減だとか、国民を説得できるような対策をうつべきだとか、税金方式にしろとか、年金制度の方法論ばかりです。

そうした議論も確かに大切ですが、私の思うに”ばら色の年金制度”の復活などは、少なくとも私が生きている時代には多分やって来そうもありません。 年金制度の改革を提唱する学者は、それはそれで頑張って頂くとしても、その人達が高齢になった我々を養ってくれるわけではありません。 ここまで疲弊した制度を根本的に立て直すのは並大抵のことではないでしょう。
年金が仮になくなっても、なんとか自分でやっていけるようにする努力を早く始めないといけません。 自分でなんとかすることをまず考えておくべきです。
自分でなんとかなるようにしておいて、それに国の制度がプラスされれば、よりゆとりが持てるというように考えておくべきだと私は思っています。

「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」 のです。
これからは個の自立の時代、人生100年の時代、誰もがいつかは独立自営業者、生涯現役こそ幸福、と言う主張を20年も前からうったえ続けている人がプロの講演家・田中真澄氏です。
こうしたことについて、興味をお持ちの方には田中真澄氏の本をお勧めします。
沢山ありますが、PHP文庫の「人生は今日が始まり」、40歳以上の方なら講談社+α新書の「50歳からの定年予備校」などとお勧めします。是非ご一読を。

ところで、少し前に国会議員の定年70歳とか73歳とかいう議論がありましたが、これもおかしな話です。国会議員は国民が選挙で選ぶべき人なのですから年齢などに関わり無く、当選した人は残り、落選したら消えればよいと思いますが。選挙で投票をされないのにいつまでも残って頂く、なんていう変なルールを作ることがおかしいのです。

定年制とか年齢制限とかは社会の仕組み上一定のものは当然に必要だとは思いますが、少なくとも個々人の生き方がそこに寄りかかってしまうのは問題です。 気が付けば突然、例によって「自己責任」の御旗のもとにバッサリと切られてしまうかも知れません。
自分のことは自分で決めましょう。 そして、「生涯現役」という考え方について、皆さん少し考えてみて欲しいと思います。




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