<そして伝説のラストライブ>

その後も延々と練習を続けていた検尿ズ。
ある程度曲もモノになってきた頃、ギターの岡村家にてミーティングを行った。

まず、当日の衣装について。
これは二手に意見が分かれた。「前回(学園祭)同様全員同じ衣装がいい」「個人個人好きな服を着たい」
結果今回は個人個人で好きな服を着ることになった。
ただし皆検尿ズがどのようなバンドであるかということはしっかりと認識していたので、お互い
強制で「こんな服を着ろ」とかは一切無かった。

そしてステージ構成。
ここでは検尿ズのブレインである岡村がさまざまなメンバーが驚くような発想を出し、それでいくことになった。
ヤスの意見は全く役立たず。


そしてついに当日を迎えた。
会場は港区のホールで、クラシックコンサートなどにも使えそうなかなり広いホールであった。
500人くらいは入るだろうか。
初めて会場を見た5人もさすがに緊張の色を隠せない。

よくよく考えたら学園祭でのライブは4人、卒業ライブは3人。検尿ズ5人そろってでのライブはこれがはじめてであった。だが同時に5人の「検尿ズ」としてのライブはこれが最後となる事は本人たちも知る由も無かった。

そして今回のライブには水内が解雇されたバンド「BEAT BOX」も出場していた。
自分がボーカルを勤めていたバンドを今度は検尿ズとして見る水内はどんな気持ちなのだろう。

当日スタッフの人に「ドラムを横向きでお願いします」と頼んだのだが、8バンドも出るという事もあり「無理」と言われる。仕方なくドラムを気持ちステージ前面に出してもらう事とドラムのみにスポットライトを当てるということで妥協した。


<ステージスタート>

検尿ズの出番がやってきた。

ライブ構成は劇仕立て。
誠吾(b)が司会を務め、検尿ズのライブスタート。

1曲目、三郎(g)が「ストッキングマン」に扮して一人で熱唱。
2曲目終了後、メンバーにドラムのスピードがおかしいと罵倒され、ヤス激怒。ステージを離れてしまう。が、これは演出。メンバー全員自作の衣装にお色直しして再登場。


ベース高橋誠吾・オヤジ下着にネクタイ。
ギター岡村埋蔵金・前面は服、背面は裸、に見えるように肌色の自作服。
中央・ドラムのヤスはそのまま(メガデスTにニットキャップ)。しかしスポットライトがあたっている。
ボーカル・コルボーン竹中は女子の制服。
水内三郎はそのまま(顔に被っていたストッキングは取った)。





3曲目終了後、ヤスのドラムソロコーナー。観客の中にはヤスの姿にYOSHIKIをダブらせた人もいたのではないか。
途中で疲れたのか一旦叩くのを止めてしまうという失態や、相変わらず万人には理解しがたいスピードの変化があるドラムソロではあったが、魂がこもったドラムソロに観客の怒号まじりの拍手が。

ドラムソロが終って戻ってきたメンバーの衣装がまた変わっている・・・!?

観客からまたしても悲鳴にも近い歓声が。
検尿ズとしてラストの曲「トランジスタ
ラジオ」が終ると幕が下りてくる。
ついにショーも終焉である。
(ちなみに1バンドの30分と決められていたのに検尿ズは時間オーバーでスタッフに何度か注意を受けていた)
幕が下がって客がほっと胸をなでおろし、他のバンドの10倍のくらいの拍手がおこる

と・・・思ったのもつかの間
また幕が上がり・・・着替えをしている検尿ズの面々が・・・。

で、一言全員で「やめてくれよー」

客はやや引いていたように思えるが、ごとオチまでつけ、検尿ズとしてのライブは終了した。またも伝説だけを残した。
ライブ後の打ち上げの顔はメンバー皆達成感にかられていた。

このライブの後はどういう活動をするかという話し合いもしていたのだが・・・。


<自然解散>

ところがこの5人で集まる事はこれ以降無くなった。
皆伝説を残したという達成感のあまり、先の展望が見えなくなったのか、

高校を卒業し、個々の生活がまたもいちぢるしく変化したのが原因だったのか・・。

コルボーンとヤスが「GUN教室」というパンクバンドを組んだり
個々に連絡は取ったりしていたのだが・・