令和1年7月発行 No.5 フード・セーフティー
hy_food-safety@kxf.biglobe.ne.jp
今月は卵をテーマとしました 「鶏が先か玉子が先か」
60年前、太平洋戦争で荒廃した日本の統治に乗り出したGHQが、実施した政策のひとつに、国民栄養状況の改善がありました。再び戦争を起こさない豊かな民主主義を定着させるには、当時の日本に不足していた豊かな食料を安定供給すること。この施策が即効的効果のあることを彼らは心得ていました。それまで日本では比内鳥等の地鶏が中心で年間の産卵数は1尾当り45-50個が一般的でし た。米国の意向によって日本に導入した白色レグホンは、これに比べ5倍以上の産卵数が確保でき、あっという間に全国に普及して行きました。
はり「完全食品」といわれる牛乳以外には見当たりません。
また、わが国で数少ない食料自給率100%を維持しているのも鶏卵とお米です。
しかし、効率的な生産技術を追求するあまり最近では数々の問題が確認されています。
【サルモネラ保菌鶏】
工業生産品的な飼育環境により親鳥の疾患感受性の低下、純系種が進みすぎたことによるウィルス抵抗性の低下があります。最近の危険性としては増加するSE菌(サルモネラ・エンテリティディス)の急増があります。さらに近年では渡り鳥や不良ワクチンを原因とする鳥インフルエンザが大きな問題として取り上げられています。
幼ヒナ時にサルモネラ菌の汚染を受けると、ヒナはサルモネラ菌に感染します。感染したヒナは、
(ア) 発病し死に至るものと、(イ) 発病はするが死亡しないで回復に向かうものと、(ウ) 感染はしたがまったく臨床症状を示さないものがあります。(イ)臨床症状がなくなっても体内に菌を持ち続けているヒナや、(ウ)臨床症状を示さないが体内に菌を保有しているヒナは、そのまま成長を続け、同時に菌を排泄し、畜舎を汚染し続けるヒナになる場合があります。
玉子とサルモネラ菌
生玉子が原因となるサルモネラ中毒は,他の食品に比べて少な
いのですが,身近な食材であることから高い関心が持たれており
ます。また、サルモネラが原因の食中毒の半分以上がSE菌
であり、鶏卵の数万個に1個はSE菌汚染卵があることが大きな
問題です。この菌は輸入されたヒナと一緒に入ってきたと考えら
れています。
優秀な採卵鶏と肉用鶏(ブロイラー)の原原種鶏は欧米由来で、
海外に品種を握られているのも残念な事実です。
【賞味の目安】
養鶏場で産卵された玉子は,加工場に集められ次亜塩素酸ナトリウムで洗卵されます。次いで,破卵や血卵などの異常卵を選別し,サイズ別(Lサイズは1個あたり64g以上〜70g未満)にパックされて出荷されます。流通は室温のため生食できる期限は,保存温度により変わります。冬(10℃)は約57日,春秋(20℃)は約30日,夏(30℃)は13日(家庭の10℃の冷蔵庫に7日保管を含む期間)が一応の目安です。最近は賞味期限が表示されています。
【アレルギー表示に気をつけましょう】
2000年の調査で小児から成人まで国民のおよそ一割が何らかの食物アレルギーを有すると考えられ、卵は主要5品目中28%で第一位でした。また、食物アレルギー患者は、全年齢において郡部と比較して都市部に多いことが知られています。主要5品目の中でも小麦などと同様、相当数の加工品に卵もしくはその成分が使用されていますので、成分表示にはくれぐれも正確性と確認が必要と言えます。
【卵検査について】
・ 微生物学的検査 大腸菌・サルモネラ菌 の汚染調査 |
・卵殻強度試験 玉子の殻の固さを調べます |
・残留抗生物質試験 エンロフロキサシリン アミノベンジルペニシリン ノルフロキサシン セファロスポリン 出荷時に残留していてはいけません |
ハウユニット 白身の盛り上がりの高さを測る 最高級品位(AA級)はハウ単位:72以上 |
・アレルギー試験 食品中の意図しない 玉子成分の微量混入を調べます |
|
・栄養成分試験 水分・蛋白質・脂質・灰分・炭水化物・エネルギー・ビタミン類・金属・ミネラル |
・注意 鶏インフルエンザに関しては家畜予防法上の制約から当施設では受託できません
検体検査・食品衛生に関するお問い合わせは フード・セーフティー
お問合せ先 hy_food-safety@kxf.biglobe.ne.jp