令和1年7月発行 No.2 フード・セーフティー
今月は しらす干
カタクチ鰯の幼魚のこと。体長15〜20ミリの小さなしらすが育つのは、成育条件の整った三河湾や駿河湾のみで、とくに駿河湾で取れるしらすは質、量ともに日本一といわれています。しらす干は、漁れたての新鮮なしらすの旨味と栄養素を逃さぬように、「海水」を使って大きな釜で茹で上げています。
近海魚類の美味しい時期に注意しよう
食中毒(腸炎ビブリオ)
腸炎ビブリオの発見と命名の歴史
腸炎ビブリオは日本で発見された細菌です。1950年
(昭和25年)に、岸和田市から泉佐野市で「シラス食中毒事件」が発生しました。行商で売られたシラス干しが原因で、患者272名、死亡者20名にのぼる大事件が発生しました。毒物混入の疑いを含めてさまざまな方面から検査が行なわれた結果、阪大微研の藤野恒三郎博士がそれまでは知られていなかった細菌が検査材料(シラス干)に沢山付いていることを発見しました。この菌は、1955年に国立横浜病院の滝川厳博士が確認した好塩菌と同一種であり、パスツレラ・ヘモリティカと命名されました。さらに1963年ビブリオ属の定義が確立されるとビブリオ・パラヘモリティカとなり、ビブリオが男性名詞であることから現在のビブリオ・パラヘモリティカスと落ち着きました。福見秀雄博士が和名「腸炎ビブリオ」を提唱し、1964年官報で正式に和名が決定しました。 Vibrio parahaemolyticus(ビブリオ・パラヘモリティカス)
腸炎ビブリオの生活史 なぜ夏に多いのでしょうか
水温18℃以上になると 塩分濃度0.5-2.0%の汽水域で盛んに増殖し、
こうして沿岸海域に流れ込みます
腸炎ビブリオ菌は動物性プランクトンに付着する性質を持ちます。また動物プランクトンの餌となる
植物性プランクトンは、沿岸海域を主として生息していますこのために遠洋海域で捕獲される魚種からは、ほとんど検出されません。マグロなどからは検出されず、近海の鯵・鯖・鰯や貝類が原因となることが多いのです。海水温が低いときには汽水域の底質に潜んで生きながらえます。
ほとんど世界中の沿岸に生息しますが、人の腸管に接着し病原性を発揮する菌は、全体の
10%に満たないといわれています。また、海外では急性腸炎として扱われ、腸炎ビブリオとして
同定されることが少ないようです。
なぜ海水浴に行っても腸炎ビブリオ症にならないのでしょうか
夏場100mlの海水中には、103個程度の腸炎ビブリオが含まれていますが
人がお水を飲む場合でも200-400mlが一般的で、通常の海水はしょっぱくてこんなに沢山飲めません。中毒発症には105-106個が必要といわれています。このくらい一時に胃の中に入りませんと胃酸で溶菌されてしまうということです。
だから海に入っても発症することはありえません。 (太田建爾)
月別発生状況
図1の「2002年〜2004年月別発生状況」から分かるように、毎年食中毒発生
件数が多発しているのは7月から9月です。
図1 2002年〜2004年月別発生状況(厚生労働省調べ)
1.
腸炎ビブリオは真水が大嫌い
鮮魚は新鮮でも必ず、鰓・内臓を下処理したら浄水で洗いましょう
2.
海産魚介類を直接さわった手指で別の食品を調理したり盛りつけをしない。
調理品ごとこまめな手洗いを習慣づけましょう
3. 海産魚介類で汚れたまな板、包丁、ザルなどの調理器具を用いて調理や保管をしない。
二次汚染を防止し、清潔な容器(水洗い・熱湯消毒・速乾性アルコール)を使用しましょう
4. 魚介類は生鮮野菜とは一緒に調理しないこと。
食材の保管場所は明確に区分しましょう
情報共有のための複写を許可します、但し無断転用は禁じます
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