雨鳥


鳥は焦がす
歩いた跡が濡れ
こすれあう羽根のあいまをぬって
落ちてくる光が熱い
鳥は響く
影はついてこない
ひとりきりでこしらえた水たまりを
素足でわたる
鳥は鳴く
影はやってこない
地面に落ちた葉のりんかくをたどる
家族をはなれ
何ねんも旅をして
あなたは

穴を掘り
積みあげた土に
根のない花をさす
鳥は震える
まぶたに陽が降って
はなびらの真ん中が黒くなる
咳きこんで
赤い匂いが
雲に連れていかれる
あなたは浮かんだ
水たまりと水たまりのあいだに
水路をひき
底を流れる絆を結ぶ
鳥は開く
心臓を押さえて
水のなかに落ちる
あなたは沈んだ
林檎の葉をちぎり
蒼い匂いをばらまいて
猫を誘う
鳥は瞑る
あなたの夢

泥のなかに横たわる
いくらでも汚れていく衣服のしみが
花やら蔦やらを描く
耳の穴に流れ込む音楽
海から運ばれるプランクトンを
鳥は啄ばむ
あなたの音楽を啄ばむ
重ねられた小石のひとつに
雑じる、影
塀のてっぺんを目指すサラマンダー
向こうの風景を
鳥は知りたくない

あなたは乾く
葉の緑を増やす細胞たちが
風を呼び
あなたは失う
あなたは声をあげる
あなたは死なない
鳥は見つける
猫は呼ばれるのを待っている
土の下ではミミズがモグラに捕食され
戦いやら争いやら
燃やされていく紙(それはだいじな報せ)のあげる煙が
白い壁にぶつかりつづける
鳥は眠る
あなたが指す
穴から
オキアミやらアビシニアンやらカピパラやらミズミミズやらバシリスクやらアキアカネやら、キュビエルカシカイマンやらヤマネやらウミバラやらクモザルやらキリンやらモグラやら蝙蝠やらシャチやら羊やらシードラゴンやら

噴き出てくる
鳥はいかなる由来も
ききたくない