「落下する呼吸、繋ぎとめるいと」


アスファルトと道路と空
建築に伸びる影に曳かれ
音を立てて
水が撥ねる

みずすましが
やせ細った手足を伸ばし
ガラス窓を昇っていく
その額に映る青

滴の先にみえた世界は
いつ消えるかもわからない
その脆弱さに光が差し込む

黙せ
ただ、
空の底へ底へ と

呼吸をなぞらえた いと
ほそくのばされたかたちに
しめらせた午後の いと

都会の空のしたで
陽が高く沈んでゆく
ばらばらにつなぎとめられた
生のさなか

いと に抱きすくまれて
誘われている
でも まだ眠れない
傾いだまま落ちてゆきたいのに

近づくほどに遠い
白い月の水面に移し込んでいる
揺らぎを
もう一度掬って

まぶたははだけたまま
白紙にはぼやけた遠さだけが聴こえて
まだ
誰も知らなかった
水面の下にも
めくられた空の果てにも
からみついた いと
閉ざされることのない眼があるのを

さしのべられた 白のおもて
かしいだ空の ただなかにあって
おとのない水面をおしのべる
ただなかにあって

狂躁がある
世のなかの蓋にゆびのない足先を押し当てる
あぶくが路地を渡る
浅いみずたまりの日々だ

走れない 足はもういらない
そして落下する 呼吸
震えない 耳たぶは必要ない
そして世界はからまった いと だけになる

空回りしたまま吊り下げられて
時計の音がするのを待つ
深夜の教会の前で
子どもたちが騒いでいる

(黙せ
離れていった十字の ゆびよ
どこまで、)

転倒したまどのきわで ゆびさきのいろは

みあげた底 つむぐ呼吸の果て
さしのべられた 空のかたち





thema「溺れる魚」:FMO(偽 title:キキ
(一連ずつ)洛陽キキ→FMO(偽→原口昇平縞田みやぎ