ウエイクアップ！ネッド
―Waking Ned Devine―
イギリス映画 10月9日 銀座テアトル西友
土曜日だけど公開から3週目、朝一なら大丈夫とたかをくくって行ったら、もう既にほぼ満席・・・上演時間には席がなくて座布団をもらって階段に座って観る人がいるほどの込み具合でした。（次の回もほぼ満席だったのではないかと思います）
銀座テアトル西友は初めて行ったのですが、とても感じのよい劇場でした。
19、40、4、7、25、29
宝くじの当選番号がひとつづつ発表されていく。うん、そうそう宝くじが当たっちゃう映画なんだよね。この人がネッドかな・・・でも奥さんがいるから違うね。ネッドは身寄りがない老人なんだから。などと、前書きで知っていることを考えたりしている。あっ、やっぱり違った・・と同時にオープニングの軽快な音楽が流れてきました。
アイルランドの美しい風景、そして海が現われ、人のよさそうな老人が登場。あっ、この二人が、チラシのジャッキーとマイケルなんだ。がっちりと体の大きくて悪知恵をはたらかせながらも、どこか真面目で、この人憎めないなと思えるジャッキーと、ひょろひょろの体に身のこなしがちょっとユーモラスで人がよさそうなマイケル、この二人の初老の紳士！！なんて、ステキな組み合わせと思ってしまいます。宝くじの当選者をさがしてそのおこぼれを授かろうと、知恵をしぼりながらも、このジャッキーとその奥さんのアニーとマイケルの人のよさが、みえかくれします。
そして、ついに核心へ、宝くじの購入者で当選者を探るためのチキンパーティに現われなかった人物を探り当てました。（でも、この時そのことを知っているのは、ジャッキーとアニーだけ）
ジャッキーが嵐の中、チキンをもって、その張本人”ネッド”の家に行き、宝くじを握り締め微笑んで亡くなっているネッドを発見します。（そう、宝くじが当たった身寄りのない老人が当選金を受け取らないうちに死んでしまう。そこで、代役をたてて、村ぐるみでその当選金を手に入れようとする。うそをつきとおすことが出来るのか？果たして、当選金を受け取ることができるのか・・・・というような予告を観たような気がします。だからここまでは、分かっている話。チラシにも書いてあった）。
この作品の温かさは、ジャッキーが宝くじをネコババして自分自身が当選者にならなかったこと。ネッドのことはアニーしか知らないのだし、ジャッキーも宝くじを買っていたのだから、自分が当たったことにしてもよかったのじゃないかな（そんな話の映画もあったような）、でもジャッキー達にとって、あくまで、宝くじが当たったのはネッドなんだから、だれかネッドの代役を立ててネッドが当選金を受け取らなければならない。という不思議な構図の出来上がり。この村は52人の住民がいるのだから、ネッドが死んで51人になっても、当選金を割り算するときは52人で割り算している。そう、この作品の中に出てくる人たちは、なんだかみんな人がいいのです。
バイクの移動シーン以外はあまり動きもなく、セリフのある住民も限られた人だけ、うっかりすると中だるみしそうな感じですが、キレのいい音楽と美しいケルト音楽、素朴で美しい村の風景、そして海。そこに、登場人物たちのどこか滑稽な会話、ユーモラスな動き、普通の人たちの普通でなくなくてしまった普通の生活が描かれてとっても楽しく観ることができました。
ネッドになりすますはずだったジャッキーも保険の調査員と鉢合わせしたとたん、自分の役目を放棄、しかたなく、うそなんてつけない人柄のマイケルがネッドになりすます。このやりとりの中で、有名なマイケル老人のすっぽんぽんバイク走行が・・・このネッドになりすますシーンは見物です。
そして、やはりジーンとくるシーンはネッドの葬式ですね。（家に帰ってサントラの中の、この時のジャッキーのセリフを聞いたときは、またジーンときてしまいました）
というわけで、よかったよかった？という話なのですが、果たして、本当に良かったのか？？
えっ、これで終わってしまっていいの？そのあとの結末を観客に想像させるような終わり方でした。やっぱり、イギリス映画なんですね。
とにかく、愛らしいマイケルとジャッキーの二人の初老の紳士に拍手です。とても、素敵な映画でした。こういう映画を観た後は心の中がポッとあたたかくなりますね。アイルランドの自然を目にして、一度は行ってみたい場所になってしまいました。
監督・脚本―カーク・ジョーンズ (KIRK JONES)
製作総指揮―アレクサンダー・ヘイレン (ALEXANDRE HEYLEN)
共同製作総指揮―スティーヴン・マーゴリス (STEPHEN MARGOLIS)
製作―グリニス・ミュレイ (GLYNIS MURRAY)
製作―リチャード・ホルムズ (RICHARD HOLMES)
共同製作―ニール・ペプロー (NEIL PEPLOW)
撮影―ヘンリー・ブラハム (HENRY BRAHAM)
音楽―ショーン・デイヴィ (SHAUN DAVEY)
編集―アラン・ストラチャン (ALAN STRACHAN)
プロダクション・デザイナー―ジョン・エブデン (JOHN EBDEN)
出演
ジャッキー・オシェア―イアン・バネン（IAN BANNEN)
（ブレイブハート（95）戦場の小さな天使たち（87）ガンジー（82）ゴーリキー・パーク（84））
マイケル・オサリヴァン―デヴィッド・ケリー (DAVID KELLY)
（白馬の伝説（93）フランキー・スターライト 世界で一番素敵な恋（95）恋はワンダフル（97））
アニー・オシェア―フィオヌラ・フラナガン (FIONNULA FLANAGAN)
（SOME MOTHER'S SON（96）栄光のエンブレム（86））
マギー―スーザン・リンチ (SUSAN LYNCH)
（フィオナの海（94） インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア（94））
ピッグ・フィン―ジェイムズ・ネズビット (JAMES NESBITT)
（日陰のふたり（96）ウェルカム・トゥ・サラエボ（97）GO NOW(95)ヒア・マイ・ソング(91)）
ネッド・ディヴァイン―ジミー・ケオー (JIMMY KEOGH)
リジー・クイン―アイリーン・ドロメイ (EILEEN DROMEY)
パトリック神父―ダーモット・ケリガン (DERMOT KERRIGAN)
モーリス―ロバート・ヒッキー (ROBERT HICKEY)
［さようなら ジャッキー爺さん］
愛らしきジャッキー爺さんを好演した
イアン・バネン (Ian Bannen) 氏71歳が
11月3日水曜日、交通事故で亡くなりました。
11月4日に追悼特集を組みました。
〈オリジナルサウンドトラック〉
抽選をはじめよう ―Let the Draw Begin―
フィッシャーマンズ・ブルース ―Fisherman's Blues―
(Performed by The Waterboys)
レッド・ヘリングス ―Red Herrings―
マギーとフィン ―Maggie and Finn―
天国の呪い ―Gursing in Heaven―
ネッド・ディヴァインのバラッド/魔女のリール
―The Ballad of Ned Devine/The Witches' Reel―
(Words:Shaun Davey/Kirk Jones)
ジャッキーのテーマ ―Jackie's Theme―
マイケルの疾走 ―Michael's Ride―
夢と魂を越えて ―Beyond Dreams and Spirits―
(Guest vocal:James Nesbitt)
ヒア・ミー ―Hear Me―
(Words:Shaun Davey/Kirk Jones)
天使も涙する話 ―An Angel Will Cry―
宝くじの男 ―The Lotto Man Cometh―
(Guest vocal:Raymond McCormac)
我が永遠の友よ ―Lux Eterna,My Eternal Friend―
(Guest appearance:Ian Bannen)
(Words:Shaun Davey/Kirk Jones)
タリーモア・ポルカ/魔女とフィドルと電話ボックス
―The Tullymore Polka/The Witch,
the Fiddle and the Phonebox―
別れの杯 ―The Parting Glass―
Including "Forever in your debt"
Poem:Kirk Jones(trans.Liam O'Maoniai)
音楽―ショーン・ディヴィ
演奏―リアム・オ・メンリィ（ヴォーカル）、ジョン・マクシェリー（イーリアン・パイプ）、ナリグ・ケイシー（フィドル）、アーティ・マクグリン（ギター）、リタ・コノリー（ヴォーカル）他
発売・販売―ユニバーサルミュージック株式会社 定価￥2548
サウンドトラックには、ネッドの葬式の時のジャッキーが言った別れの言葉が収録されています。また、酒場で盛り上がっているときの、The Tullymore Polka/The Witch,the Fiddle and the Phoneboxでは最後のフィドルの絃が切れる音もはいっています。
1999年10月10日
ADU
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