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 The Virgin Suicide

監督&脚本…ソフィア・コッポラ
原作…早川書房「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」

CAST
ジェームズ・ウッズ
キャスリーン・ターナー
キルステン・ダンスト
ジョシュ・ハートネット
マイケル・パレ
スコット・グレン
ジョバンニ・リビシ
ハンナ・ハル
チェルシュ・スウェイン
A・J・クック
レスリー・ヘイマン
ダニー・デヴィート

リズボン家の美しい5人姉妹。一番下の13歳のセシリアの自殺未遂から1年の間に自殺してしまった5人姉妹。彼女達のことと自分たちの少年時代を回想していくナレーター(ジョバンニ・リビジ)の声で話が進んでいきます。
何年たっても、何故なのか分からない彼女達の自殺。
彼らに分からないように、同じ年代でありながらもわたしにも分からない彼女達の自殺。

自分たちの通う学校の数学の教師の父親。少し、厳格すぎる母親。

数学の教師らしく計ったようにそろった13歳から17歳までの仲の良い年子の5人姉妹。
何が原因かと考えれば、彼女達が年子で仲の良い5人姉妹だったということくらいかもしれない。

幼いころから5人姉妹は5人でひとくくりのような生活をしてきたのではないか?
異姓の兄弟がいれば違ったかもしれない。年が少し離れていたら違ったかもしれない。
2人か3人だったら違っていたかもしれない。

思春期、友人を含めてたくさんの他人と話したり接したりすることで、家族というひとくくりの世界観から自分を中心とした別の世界ができあがっていく時期かもしれない。
親が作った世界から一歩二歩と外の世界へ進んでいく時期かもしれない。

姉妹で世界が出来上がってしまっているので、どこにも飛び出すことが出来ない。
彼女たちもその世界に満足しているのか、彼女達の友人の姿はどこにも出てこない。

セシリアの自殺は何だったのか、現実からの逃避だったのか、メキシコから来たドミニクへの恋心が原因の自殺なのか、彼のマネをして飛び降りてみようとした事故なのか、何かにびっくりして足を踏み外した事故だったのかもしれない。
町中のニレの木に貼られた赤い紙。病気に犯されて、生きたまま、切られてしまう運命を背負ったニレの木々。

13歳のセシリアが自殺してしまったあと。何故かを考えることもなく、とじこもり、残った娘たちにより厳しく接することを選んだ母親。神父さん(スコット・グレン)はどんなアドバイスをしたのだろうか。

気持ちが外を向くのではなく、セシリアを欠いても5人の絆の深みにはまってしまった姉妹。

その世界がかわったかもしれない出来事。トリップ(ジョシュ・ハートネット)がラックス(キルステン・ダンスト)に恋したことから外の世界へ出る機会を得たかのように思われたのもつかのま。
トリップはラックスを抱いたことで、恋の熱病が冷めてしまう。
何かの中毒者の病院での治療中と思われる、大人になったトリップ(マイケル・パレ)が語る。

朝帰りしたラックスに、より厳しい生活をしいる母親。ラックスにだけではなく、やはり4人ひとまとめで家に閉じこめてしまう母親。この母親にとって娘たちは一体何なんだろう。
末娘のセシリアの自殺からはじまって、妻の狂気じみた対処と、トリップとの交際を認めた自分が招いた不幸に、現実から逃避気味になってしまった父親。
4人になっても、まだ5人姉妹の影をひきずっている娘達の姿に気がつかない両親。

こんな状態になっても、親に反抗するでもなく。家を飛びだすでもない姉妹たち。奔放に思える、ラックスでさえ、そういう行動にはでない。
母親にとって、彼女たちは玄関に飾った娘たちの初めての靴同様に、宝箱のなかのひとまとめの自分の宝石なのだろうか。子どもたちを、いつまでも自分の所有物のように思っている母親が悪いのか。
一家でただひとりの男性である父親がたよりないのか。
親離れ、家離れを出来ない彼女たちの心に問題があったのか。

外の世界に飛び出すことよりも、死ぬことを選んだ少女たち。

この話を回想しているのは、彼女たちの近くに住み、彼女達に憧れ、触れてみたいと思っていて、その願いが叶うのかと思った時に彼女達の死に遭遇した少年たちの中のひとり。
彼らの好奇心に似た恋心は、とても幼稚なものだったのだろう。

彼女達も彼女のまわりにいた少年たちも、大人になりきれずにいた時。

大人になりきれないままに死んでしまった5人姉妹。

時を経て、大人になった少年たちの中で、大人にならないままに死んでしまった彼女達の想い出は、そのまま時を止めてしまっていつまでも残る、そしておとなになればなるほど、彼女達の死が謎となっていく記憶であり、聖域なのかもしれません。
セシリアが自殺未遂の後に言った「先生は13歳の女の子じゃないもの」、だれにでもあった世界でもおとなになってしまうと分からなくなってしまうことっていっぱいあるんだろうな。

2001.2.12
ADU




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