Show Me Love

ショー・ミー・ラヴ
  ―Show Me Love―



スウェーデン発の青春葛藤物語です。

この作品の中で心の旅をしながら葛藤を繰り返す14歳から17歳まで少年少女たちは、わたしと同じ年代。
国はちがっても、この作品の中に登場する彼女たちを観ていると、かならず自分のまわりにいるタイプ。
かたちは違っても日常よくみかける光景です。
彼女達の目を通して観ている世界だから、大人の存在なんてほんの少し。自分にかかわりのある出来事、人たちの姿しか現れてこない。
そうよね、わかるわかると思っているうちに終わってしまいました。

わたしたちは、いつもイライラしているような気がします。
楽しくしていても、その裏側でやっぱり何かにイライラしている。
そのイライラのもとは自分自身だと気づいていながらも、ころころ考えを変えながらまわりのせいにしてむかついているのです。

この作品は、わたしたちの抱えている様々な問題を「陽」の部分を取り上げてとても分かりやすく表現していると思います。

友達が出来ず悩んでいるアグネス(レベッカ・リリエベリ)におとうさんが同窓会に行った時の話しをするシーンがあります。
自分もアグネスと同じくらいの年齢の時には、友人もいなく冴えない存在だったと。
そして、25年たった今は「人生の成功組」であること。
当時、カッコ良くもてていたヒーローやヒロインも今はそのかげもないというようなことを言ってなぐさめるのですが.........
ありがたい言葉だけど、これは空回り.......でも必要な言葉。何年か経って思い出すことがあるかもしれない言葉です。
なんのなぐさめにならなくても、こんな言葉をかけてくれるお父さんはあまりいないかもしれない。

アグネスは「25年後の幸せなんてどうでもいい、わたしは今すぐ幸せになりたい」と言い放ちます。
16歳のアグネスには25年後は自分が生きてきた時間より長い時間です。
おとうさんだって16歳のころは25年後の幸福よりその時の幸せを望んでいたはずです。
16歳の時の幸福、25年後の幸福。その間には大きな流れがあります。価値観がまるで違ってきてしまうのです。
16歳の時の幸せってなんだろう。
子供から大人への出口を探して自分自身を模索している時期です。
16歳じゃなくたって、人はみんな、今の幸福を望んで生きているんじゃないかしら

40歳をすぎたおとうさんにとっての幸福の価値は家族がいて、安定した仕事があり、社会的な立場が認められていることなのかもしれません。でも、それだって40歳をすぎたお父さんの今の幸福。
それを成功というか否かは、その人それぞれの価値観によって違うのでしょう。
彼女のおとうさんの価値観の上に立った、社会的意味合いからの成功組なのでしょう。

いろいろ思い詰めて自殺をはかろうとするアグネス。
友達が出来ずに悩んでいる様子や(この点については意外と本人はあまり悩んでいないのかもしれません)、同性愛をからかわれイジメにあうシーンもありますが、さほど深刻には写らなかった。
わたしたちのまわりにはもっと深刻なイジメもあるし、同年代の自殺もすごく多い。
生きることを望みながら、それでも耐えられなくなって決心するとき、 彼らはどんな方法で死を選んでいるか?
それは首をつることであり、また高いところから飛び降りることです。
確実に死ねる方法を選び、生きることを放棄します。

アグネスの自殺を考えるシーンは、それなりに真剣であり、深刻なことであっても、イヤなことに出会い自分でどうしようもなくなったときに誰もが思う衝動的な感じにしかうつりませんでした。
エリン(アレクサンドラ・ダールストレム)が小石を窓にぶつけなくても、彼女は死には至らなかったでしょう。

でも、深刻に死を考えたり悩んでいた瞬間であったのも事実です。
今の自分がイヤなのにどうしていいのか分からない。今の自分は本当の自分じゃない、手探りで自分を探している。そんな、わたしと同年代の心の葛藤をてとも身近に感じました。

特別なことでなく、日常抱えているわたしたちの葛藤を、とてもクールに明るく表現してくれているなあって感じました。

絶えずイライラを抱え、それをふりまいているエリン(彼女の家はどうやら離婚家庭のよう)も、自分をみつけられずにイライラしているアグネスも、自分自身をつかむために変化をもとめている同士で、互いにないものに惹かれあったごく自然な関係。これは恋愛とかじゃなくて、もっと本質的なところかな。

アグネスとエリンの物語はあれでよかったとして、気になるのは窮地に陥っている妹を放って、妹の元彼氏であり、自分の彼の友人のヨハンのあとを追っていったお姉ちゃんの三角関係に発展しそうな物語はどうなったのか?

美味しいものを食べて幸せを感じ、温かい部屋で幸せを感じ、友人とふざけあって多いに笑い、楽しいことも、イヤなことも山ほど抱えて、泣いたり、笑ったり、怒ったり、そうして、幸せを求めて自分自身に葛藤をおぼえ今日もわたしはイライラするのでした(笑)

監督・脚本…ルーカス・ムーディソン

1999年ベルリン映画祭
パノラマ部門国際芸術映画連盟賞
1999年スウェーデン映画祭
最優秀作品賞/最優秀監督賞/最優秀脚本賞/最優秀主演女優賞
1999年カルロヴィヴァリ国際映画祭
観客賞/審査員賞/ドン・キホーテ賞
1999年ノルウェー国際映画祭
最優秀外国映画賞
1999年バレンシア国際ヤング映画祭
最優秀作品賞

更新日 2000.11.27 ADU

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