天国の日々
―DAYS OF HEAVEN―


1978年米作品
監督・脚本…テレンス・マリック
撮影…ネストール・アルメンドロス、ハスケル・ウェクスラー
音楽…エンニオ・モリコーネ
アカデミー撮影賞、カンヌ映画祭監督賞
CAST
リチャード・ギア
ブルック・アダムス
サム・シェパード

この作品の中には理不尽なことと感じることを、受け入れながら生きていく人間の脆さと危うさ、そして強さをも感じます。

作品の冒頭では何枚かの20世紀初頭を代表するような写真が映しだされ、1920年のルイス・W・ハインの「発電所の機械工」などのあとに工場で働く人々の映像に移り変わります。

そして舞台は20世紀初頭のテキサス農村地帯へ。

20世紀初頭、アメリカの発展の中で進む工業地帯と農業地帯の描写にこの時代のひとにぎりの富む者とたくさんの貧しい者の姿を感じます。
ひとつ場所に落ちつき土地を持つことを夢見る放浪の民の姿。わずかな身の回り品と毛布を持ち仕事を探し農村を渡り歩く人たち。
広大な土地の中に建った門。この門をくぐった時に、ひとときその土地で働く農民になる。

話の筋だけ考えると、工場地帯で働いていたビル(リチャード・ギア)が工場でトラブルを起し、新しい土地へ移って行く。妹のリンダと妹と偽って連れている恋人のアビイと3人で、小麦農場の仕事に働き口を得る。仕事は辛く、刈り入れが終わったあとはまた違う仕事を探して歩かなくてはいけない。そんな時、農場主(サム・シェパード)はアビイに求婚する。ビルは楽な生活を望み、恋人のアビイに農場主との結婚を薦める。兄弟と偽りながらの奇妙な生活が続く。ビルの思惑を越えてアビイが農場主を愛しはじめてしまったことでその関係は.....
みたいな話なのですが......

登場人物の人間模様をベースとしながら当時のアメリカの姿や人のもつ無常の世界がとてもあらわれている作品のような気がしました。

1800年代末期、アメリカ大陸に歴史を刻んでいた1000万人のインディアンは、文明人と呼ばれるヨーロッパから移住してきた人々に滅ぼされました。難を逃れたひとにぎりの人々も土地を追われその歴史を奪われました。
都市で轟音をあげる工業地帯も、美しく広がる農村地帯も彼らの土地だったのです。

渡り着いて生活をしている文明人にも貧富の差があります。
リンダが農作業の時に、ポツリという言葉に重さを感じます。
「地主はどうやってこんな広い土地を手にいれたんだろう」
土地を持てずに生きるために仕事を渡り歩く労働者の数が多かった時代。
この時代を描く映画や本の中には必ず登場する大多数の人々です。
すべての富みを手にいれているかのような農場主でさえ、大発生したイナゴの大群のまえでは、なす術もなく収穫間際の作物を無にし大きな借金を抱えることになるのです。

この作品は映像の美しさを賛辞した話をよく聞きます。
わたしの感じたこの作品の映像の美しさは、その絵ひとつひとつの中に時間の流れと歴史を感じさせる奥行きを感じた美しさでした。

2001.1.20
ADU


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