都会のアリス
―ALICE IN DEN STÄDTEN―


1974年西独作品
監督・脚本…ヴィム・ヴェンダース
CAST
リューディガー・フォーグラー
イエラ・ロットレンダー
リザ・クロイツァー
エッダ・ケッヘル

アメリカによせる大きすぎる思いを書くためにアメリカに滞在していたのに思うように書くことが出来ずに資金も底をついてドイツに戻ることになったフィリップ(リューディガー・フォーグラー)。

文章にしたくても書くことが出来ずに、ひたすら観た風景をポラロイド写真に写す。
浮かび上がってきた写真が、少し前に自分の目と感覚がとらえたものとは違うことがわかり結局は書くことができない。

アメリカに大きく気持ちを残したままドイツへもどって写真を観ながら書くことを決心。
ところがドイツの空港のストで足止めをくらってしまう。
それがきっかけで英語があまり得意ではないドイツ人の母子と知りあい、母親の方は伝言を残したまま姿を消しフィリップはアリス(イエラ・ロットレンダー)を抱え込むことになります。

アリスを祖母のもとに送り届けるためにアメリカからオランダを経てドイツまでの旅。

ちょっとワガママそうに感じるアリスの気持ちの表現がとてもよくわかるような気がしました。

アリスの記憶に翻弄され途方にくれてアリスを警察に頼んでひとときの自由を手にいれたフィリップはポスターをみつけてチャック・ベリーのコンサートに出掛け、アメリカの夢にひたります。
宿に戻ったフィリップの前に現れたアリスに再び警察の保護をたのむこともできるのに、あえて二人旅を選ぶふたりの間には、出口をさがす気持ち、そして孤独感という共通の思いが信頼というかたちに変化していったのだと思います。
アリスにフィリップが必要だった以上にフィリップにアリスが必要だったのかもしれません。

一番心に残ったシーンは、目覚めたアリスがフィリップと女性が一緒のベッドにいるのを目にしたときのアリスの痛い気持ち。
信頼という形をかりてアリスの心の中に芽ばえているものは、幼い恋心のような気がしました。
『レオン』のレオンとマチルダにたとえるとちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、そんな感じなのではないかって思えるのです。

祖母の居所もわかり母親もドイツに帰国していることが分かって、アリスを送る列車の中で開いた新聞のジョン・フォードの訃報の記事。
アメリカを描き続けたジョン・フォードの死とともにフィリップのアメリカへの夢が終着したような感じがします。

最初、このフィリップがヴィム・ヴェンダースを代弁しているのかと感じて観ていたのですが、眠れないアリスにフィリップがおとぎ話をしたあたりから、映像の中に現れるフィリップはアリスの目を通した姿のようになっていくように感じ、この作品でヴィム・ヴェンダースはアリスを通じて自分を語っているのではないかという気がしてしまいました。

記憶にのこる素敵な作品ですね。

2001.1.21
ADU

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