タイトルは、お題配布サイト「my tender titles.」様より、恋しい響き内の「6.ラベンダー」をお借りしています。
my tender titles.




ラベンダー










それを知ったのは、偶然だった。

たまたまテレビを観ていて、たまたま北海道の特集がされていて、たまたまそれが紹介された。

ただ、それだけのことだった。


(へぇ〜、初めて知ったな)


そう思った瞬間は、新しい知識を得たという感覚しかなかった。

けれど、次の瞬間には。

ふと、そんなことを思いついていたのだ。

そして思いついたら、それはとても素敵で素晴らしい名案のように思えて。


「ちょっと出かけてきます!」


私は居ても立ってもいられなくなり、その思いつきの勢いのまま家を飛び出していた。






「ありがとうございました〜」


明るい女性店員の声に見送られながら、私はそれを大切そうに抱えお店を後にした。

少し強めの芳香が鼻先をくすぐる。

アロマなどでも使用されるだけあって、その香りは不思議と心を安らげてくれる。


(本当は、このまま送れたらいいのだけれど)


さすがに生花を送ることは難しく、現実的ではない。

だからせめて。


「ただいま〜」


玄関を開け靴を脱ぐなり、私はバタバタと2階の自室へと戻る。

慌てていたので階段を上るときに大きな音を立ててしまい、下からお母さんに叱られてしまったけれど、でも今はそれどころじゃなかった。

大切に大切に抱えて戻ってきた花束を、一旦机の上に置く。


「携帯、携帯」


ベッドの枕元に無造作に置かれていた携帯を手にすると、再び机の前に戻り。


カシャッ。


カメラを起動させ、机の上の花束を撮影し始める。


「少し、画像が見づらいかなあ」


撮っては確認し、首を捻りつつ再び撮り直す。

そうした行動を2、3回繰り返した後、ようやく満足いく写真が撮れた。

アップすぎず、小さすぎず、画質も悪くない。

これなら、ちゃんと何が写っているか分かってもらえると思う。

写真が何の花か分からないと、まったく意味がなくなってしまうから、写真の画質はすごく重要なのだ。


「国光先輩、知ってるかな?さすがに、これは知らないよね」


頭が良くて私が知らないこともたくさん知っている先輩だけれど、さすがにこれは知らないだろうと予測する。

仮に知っていたとしても、そのときはどんな返事がくるのかが楽しみなので、私としてはどちらでも構わないのだけれど。


「メールだと表情が見られないのが、残念だな〜」


少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべながら、私は今撮影したばかりのラベンダーの写真と共に、たった一言を先輩へと送信した――。


『これが、私の気持ちです』







2011.01.04


※ラベンダー(花言葉:「あなたを待っています」)

このお題の隣に補足としてこの花言葉が書かれていたのを見た瞬間、手塚が思い浮かびました。
ドイツ留学してしまう手塚と日本で待つにピッタリなタイトルだな〜と。
そんなわけで、かなりご無沙汰して放置しまくっていましたが、久しぶりに書いてみました。

国を超えた遠距離恋愛のふたりにとって、「待つ」とか「我慢」とか「(会えない)寂しさ」とか、他のカップルより切実ですし、決して避けて通れない現実ですが、それでもにはできるだけ明るくいてほしいな〜と思いながら書きました。
因みに、かなり前にお題で手塚がに動画を送る話を書いたのですが、はそれを受け取っていたので、今回のことを閃いたという管理人だけの脳内設定があります(笑)
つまり、X'masネタ→ラベンダーな時間軸です。

長期放置申し訳ありませんでしたm(_ _)m
そして、ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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