未来ネタです。
ふたりとも中学生ではありません。
中学生以外のふたりには興味がない方や苦手な方は、この先をスクロールされないことをお薦めいたします。
大丈夫!という方だけスクロールをして、どうぞお読みください。↓































ふたりだけの誓いのKiss










婚姻届けを提出した翌週の土曜日、大安。

ついにその日を迎えたふたり。

純白のドレスを身に纏い、神妙な面持ちをしている自分と鏡の前で対面すると、無自覚だった緊張に今更ながら気付かされる。


「よくお似合いですよ」


そんな内心を見透かされたのか、ヘアメイク担当の女性が鏡越しにを見つめ、柔らかく微笑んだ。


「ありがとうございます」


その言葉に照れくさそうにが微笑み返し、もう一度鏡に映る自分の姿を眺めたとき。

コンコン。

新婦控え室のドアがノックされる。


「はい、どうぞ」


その音にが返事を返すと。

ガチャリ。

扉がゆっくり静かに開き、そっと顔を覗かせたのは…


「準備はできたんか?」

「はい。今終わったところです」


蕾だった花が咲き開くように満面の笑みを浮かべる

その視線の先には、持ち前のスタイルで見事に婚礼衣装を着こなす最愛の彼の姿があった。


「入ってええかのう?」


準備は終わったと言われたものの、の背後にまだヘアメイクが立っているのを見た仁王が尋ねる。

は、それににっこりと笑いながら立ち上がった。

そのタイミングでヘアメイクの女性はに退出の挨拶をし、仁王にも軽く会釈をする。


「ありがとうございました」


仁王と入れ替わりに退出するヘアメイクの後ろ姿にが礼を述べたので、仁王もすれ違いざまに軽く会釈をした。

パタン。

扉が閉まると同時に、がゆっくりと仁王の目の前にやって来る。


「あの、どうですか?」


気恥ずかしそうに、照れくさそうに、でも少し誇らしげにドレスの裾を摘み小首を傾げて見せたを、仁王はしばらく無言で見つめていた。

当日まで秘密だと言って衣装合わせのときでさえ見せてくれなかったのウェディングドレス姿が、息を呑むほど美しかったからだ。

今日まで仁王なりに純白のウェディングドレスとヴェールで彩られる当日のを想像してはいたが、実際に目の当たりにしてみると、その姿は自分が想像していたよりも遥かに美しかった。

見惚れて言葉が出ないとは、まさにこのことかと思ったほどである。

だがそれを勘違いしたは、悲しげに瞳を曇らせて俯いてしまう。


「…もしかして、似合ってませんか?」


生涯に一度だけの晴れの日。

最愛の人と永遠の愛を誓うための特別なセレモニー。

女の子ならば誰でも自分の人生の中で最も美しい姿でいたいと思う日だというのに、お世辞にも褒めてもらえないほど自分のドレス姿は似合っていないのだろうか。

そう思うと悲しくて顔を上げていられなくなった。


「お前さんは、相変わらずじゃのう」


早とちりで落ち込むに苦笑しつつ、仁王は目の前で俯いている新婦の身体を引き寄せる。


「きゃっ」

「その逆じゃ。あまりにも似合いすぎてて、ビックリしたぜよ」


両腕を背に回し、しっかりと閉じ込めながら耳元に囁くと、の身体が一瞬遅れてビクンッと小さく跳ねた。


「あ、ありがとうございます…」


一瞬前には褒めてもらえないほど似合っていないのかと落ち込んだというのに、実際に褒められてみれば、それはそれで気恥ずかしくてこそばゆく、は自分の頬がみるみる赤く染まっていくのを実感する。

それを隠す意味合いも込め、自らも抱きつくように両手を仁王の背にそっと回すと、更に力強く抱きしめられた。


「なんだか現実じゃないみたいです。…もしかして、夢なのかな」


しばらく無言で抱き合っていると、ふいにがポツリと呟いた。

その言葉に、仁王は苦笑する。

確かに今日という日を迎えるに当たって、ここ数ヶ月というものお互い準備に追われバタバタとしていた。

それこそ、じっくり喜びや幸福を噛み締める暇もないほどの忙しさだった。

だから、ようやく迎えられた今日という良き日に現実感が伴わず、まるで夢のように思えるのも仕方ないことなのかもしれない。

かくいう仁王自身も、まだどこか地に足が着いていない部分があることは事実だ。

だが、これが本当に夢では困るのだ。

たとえ実感が伴わずとも、夢ではなく現実であってもらわねばならない。

なぜなら…

やっと、と結婚できたのだから。


「夢だったら、困るぜよ」


そんな想いを胸に秘めながらもう一度耳元に囁くと、がくすぐったそうに首を竦めた。

それから、少しだけ身体を離して仁王を見上げる。


「――私もです」


しばらく仁王の表情を窺うように見上げていたが、やがて嬉しそうに微笑み、背中に回されていた両手にもキュッと力が込められる。

まるで仁王が言葉にしなかった想いを、その表情から正確に読み取った合図だとでもいうように。


「一生離しはせんから、覚悟するんじゃの」


仁王はそんなに、何か策を企んでいるときによく見せるニヤリとした意地悪そうな笑みを向けたかと思うと、掠めるように赤く柔らかいの唇に口づけを落とした。

一瞬だったものの、浮かべた表情とは正反対の優しい口づけ。

――それは挙式の前、ふたりだけの誓いのキス。







2012.12.20


PC不調からしばらくご無沙汰してしまいましたm(_ _)m
そして、残っていたお題無視でいきなり仁王×の結婚式ネタという。

唐突すぎて申し訳ないです(汗)
でもなぜか急に結婚式ネタを書きたくなったので、書いてしまいました。
しばらく書いてなかったので、今まで以上にキャラが掴めてない感じもしますが、書いていて楽しかったことだけは事実です(笑)

相手を仁王にしたのは、以前「Neige poudreuse」というおはなしで、いつか本物(のヴェール)を被せてやると言わせたので…
結婚式というネタを書くなら、最初は仁王かな〜と。
思えば、これまで結婚後や結婚します〜的な内容は書いたことあったものの、式当日というのは初ですね。
今後機会あれば、他のキャラでも書いてみたい…かも?(笑)

それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました!

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