未来ネタです。
ふたりとも中学生ではありません。
中学生以外のふたりには興味がない方や苦手な方は、この先をスクロールされないことをお薦めいたします。
大丈夫!という方だけスクロールをして、どうぞお読みください。↓
タイトルは、お題配布サイト「my tender titles.」様より、君がいる生活内の「おうちに帰ろう」をお借りしています。
おうちに帰ろう (赤也バージョン)
「なぁなぁ、」
「ごめん、ちょっと待って」
「な〜ってば」
「だから、ちょっと待ってて」
「んだよ。最近、冷てぇじゃん」
――そんな、事の発端。
バンッ!と物凄い音を立てた玄関で、赤也くんが本当に出て行ったことを知る。
(いつまでも子どもみたいなんだからっ)
私は、心の中で赤也くんに呆れてため息を吐く。
何度呼んでもまともに相手をしてくれないとか、最近の俺への態度は冷たすぎるとか、さっきまで延々文句を言っていたと思ったら、突然キレて「出てってやるよ!」とリビングを飛び出して行ったのだ。
そして、続いて聞こえた激しく玄関が閉まる音。
(何も出て行かなくてもいいのに)
開いたままになっているリビングの扉をちらりと振り返る。
出て行かなくても、たとえば別の部屋に移動するとか、もっと他の方法だってあるのに。
怒ると頭に血が上って冷静さに欠けやすいところは、今も昔も変わらない。
(そういうところも含めて、好きなんだけど…)
でもこの件に関しては、ため息を吐かざるを得ないから。
他のことならつい、私が折れちゃうことも多いけれど、諦めて帰ってくるのを待ってみようかな?
そんなことを思った矢先、目にしてしまったもの。
テーブルの上に置きっぱなしの携帯とお財布。
(何も持たずに出て行ったの!?)
それを見ると、まさか。という思いが頭をよぎり、慌てて赤也くんの部屋へと向かう。
(何考えてるのよっ!)
入るなり、少し乱暴なくらいに勢いよく開けたクローゼット。
よぎった予感どおりに、そこに掛かったままの赤也くんの上着。
本当に何も考えず、勢いのまま飛び出して行った事実に気が付き、私は少し苛立ちを覚えた。
真冬の夕暮れ。
そんな状況で上着も持たずに飛び出して行くなんて、本当に信じられない。
風邪を引くことを望んでいるとしか思えない行動だ。
(――もうっ!!)
赤也くんの上着を引っ手繰るようにハンガーから取ると、私は寝室で自分のコートを羽織ってから、室内ですやすやと眠っていた宝物をそっと抱き上げ、夕暮れの町へと飛び出した。
「――やっと、見つけた」
町へ飛び出してから、どれくらい経ったのだろう。
必死で町中を探し回ったおかげか、時間の経過と共に気温は確実に下がっているはずなのに、むしろ私の体感温度は上昇するばかりで、寒いどころか少し暑いとさえ感じ始めた頃、ようやく赤也くんを発見した。
「上着も着ないで出て行くなんて、風邪でも引いたらどうするつもり?」
公園のベンチに座ったまま、驚いた顔で私を見上げている赤也くんに、私は片手で抱えてきた上着を頭の上から落とす。
怒っているので、バサッという音がするくらい少し乱暴に。
「…別に」
落として被せられた上着を取ろうとも着ようともせず、不機嫌そうに横を向いてしまう赤也くん。
それに私は、内心でため息を吐きつつも、
「別に、じゃないでしょう?風邪引いたら困るじゃない」
努めて冷静に答えを返す。
でも、怒っている赤也くんにとっては、それさえも新たに拗ねる要因でしかなかったようで。
「俺が風邪引いたって、には関係ねぇじゃん」
そっぽを向いたままボソッと呟かれた一言。
それには、さすがの私もムッとする。
「…本気で、そんなこと思ってるの?」
「だってお前最近、いつもそいつのことばっかりで、まともに俺の相手してくれねぇじゃん」
心底拗ねているという様子で、私の腕の中で眠っている宝物を顎で指し示す。
「それは、仕方ないじゃない。まだ赤ちゃんなんだもの」
「仕方なくねぇよ」
「仕方ないってば。…もう。いつまでも子どもみたいに拗ねないでよ。本当は赤也くんだって、ちゃんと分かってるくせに」
「………」
少しの沈黙の後、分かってるけどよ。という小さな呟きが聞こえて、私はそれに苦笑する。
渋々ながらも認めましたという雰囲気が、ムッとしていたはずなのに、つい笑えてしまったのだ。
「――笑うなよ」
不機嫌そうな声。
でも私は、苦笑が止められない。
「ごめん。でも、言い方が妙に可愛かったから」
「どうせ、分かってるのに駄々こねて、いつまでも子どもだって言いたいんだろ」
「うん」
「お前…ハッキリ認めるなよ…」
私のあっさりと返した肯定に、はぁぁと大きなため息を吐き、肩を落とす赤也くん。
「だって、本当のことじゃない。でも、そういうところも含めて、やっぱり好きなんだよね」
肩を落とす赤也くんとは対照的に楽しそうに笑い声を上げて、私は宝物を片手で抱きなおすと、空いた片手で赤也くんの頭を優しく撫でた。
「すっげー複雑」
「どうして?好きって言ったのに」
されるがままになっているので、もっと赤也くんの頭を撫でながら私は笑う。
「――もう、いいや。帰ろうぜ」
急にアホらしくなってきた。
完全に戦意喪失した赤也くんが、頭から被っていたままだった上着を羽織り、座っていたベンチから立ち上がる。
「そうだね。寒いし、家に帰ろ」
結局肝心のことは何も解決してなくて、すべて有耶無耶のままだけれど、当事者の赤也くんが納得したような諦めたような状況なので、今日のところはこれでいいのかなと、頷いてみせる。
たぶんきっと、近日中に同じようなことでまた駄々をこねる姿が目に浮かぶけれど。
(そのときは、大好きな人との子どもだから大切で、優先するんだよ。って言ってみよう)
心でそう思いながら、抱いていた眠る宝物の額にそっとキスをしたら。
「コイツばっかりずりぃ。、俺にも」
と、近日中どころか早速やきもちを妬かれたので、私は盛大なため息をわざとらしく吐いてみせたのだった。
2010.02.01
夫婦ネタ第2弾です。しかも今回は+α付き。
注意書きにその旨もネタバレしておこうか少し迷ったのですが、結局書きませんでした。…書いたほうがいいでしょうか?(汗)
ネタ的には、我が子にここまでやきもちを妬くって現実的じゃない気もするのですが、赤也ならもしかしてあるかもしれないという僅かな希望を込めて!
そしてなら怒ってても呆れてても、上着を持たずに飛び出した赤也を心配して、結局探しに出てくれると信じてます!
それでは、ここまで読んでいただいてありがとうございました!