クリスマスで5題
01.待ち合わせ場所 (日吉×) 2009.12.30up
02.キミに花束を (赤也×) 2009.12.31up
03.舞い落ちる雪 (手塚×) 2009.12.18up
04.夜景の綺麗なレストラン (鳳×) 2009.12.24up
05.メリークリスマス! (?×) 2010.01.06up
(お題配布元「キミの記憶、ボクの記憶」様)
読みたいタイトルをクリックすると、ページ内ジャンプします。
読んだ後、上記タイトル部分へ戻りたい場合は、ブラウザの戻るを押してください。
01.待ち合わせ場所 (日吉×)
13時に駅の噴水前ね。
そう言ってが電話を切ったのが、昨夜。
12月24日。
クリスマスイブだ。
そして今日は、12月25日。
クリスマス。
俺は、昔からクリスマスが嫌いだ。
何が嫌いかというと、クリスマスになると毎年飽きもせず街中がお祭り騒ぎになるのが嫌だった。
イルミネーション。
クリスマスケーキ。
クリスマスプレゼント。
そんな単語をあちこちで目にするようになり、外を歩く人間たちもどこか浮かれた様子になる。
そして俺が何よりも嫌いだと思っていることが、世間ではまるで等式のようになっている『クリスマス=恋人同士で過ごす日』というイメージ。
この時季の街は、どういうわけだか普段よりもカップルが目につく。
どこへ行っても、浮かれたカップルだらけだ。
それが俺は、昔から一番嫌いだった。
そもそも、クリスマスなんてキリスト教を信仰しているわけでもない大半の日本人にとっては、本来あまり特別な日ではないはずだ。
それをこうして日本中がお祭り騒ぎをして、大イベントのようになっていること自体がおかしいと思う。
馬鹿馬鹿しいと思う。
正直、世間が騒げば騒ぐほど自分はその仲間になりたくないと思い、クリスマスに浮かれる人間たちを密かに見下す気持ちを抱いていた。
――が。
「それじゃあ、13時に駅の噴水前ね」
昨夜、俺はとクリスマスの約束をした。
あれほど馬鹿馬鹿しいと、仲間にはならないと思っていたはずなのに。
「どうしよう、若くん。楽しみすぎて、私今夜眠れるかなあ」
電話を切る直前、そう呟いたの声が耳に残っていて、思い出すたびに自然と笑みが零れてしまう。
(…浮かれた馬鹿は俺のことだな)
勝手に零れる笑みを自覚し、思わず自嘲をするが、不思議と悪い気はしない。
あれほど嫌いだと思っていたはずなのに。
頑なに世間と同調することを拒否してきたはずなのに。
が楽しみにしているというだけで、今まで嫌いだと思っていたことさえたいしたことではないように思えてくる。
むしろ、今までなぜここまでクリスマスを嫌いだと思っていたのかという気持ちにさえなってくる。
現金すぎる?
自分でもそう思う。
だけど、本当にそう思えてしまうのだから仕方がない。
今ならきっと、たとえ世界中が祝わなくても、俺はとふたりでクリスマスを祝うだろう。
「プレゼント、用意しないとな」
約束の時間まで、あと3時間。
の喜びそうなものを探すため、俺は一足先に家を出た。
2009.12.30
02.キミに花束を (赤也×)
彼女ができたら、絶対にしようと決めていたことがある。
それは、最初のクリスマスプレゼントに花束を贈ること。
クサいしらしくねぇし今時と思わなくもないけど、小さい頃観た映画に、クリスマスに男が彼女に花束を贈るシーンがあって、それがなぜか未だに俺の中で強く印象に残ってる。
映画のタイトルは思い出せねぇくせに、すげぇクサくてキザな演出だけは鮮明に記憶に焼きついてる。
だから、もしも自分に彼女ができたら、最初のクリスマスプレゼントは花束だって決めてた。
これだけは、ぜってぇ譲れねぇ!
「ねぇ、赤也くん。何ソワソワしてるの?」
待ち合わせ場所に先に来ていたが、俺の顔を不審そうにに見上げる。
「な、何でもねぇよ」
見上げられた俺は慌てたように首を振ったものの、その態度は明らかに怪しかったと思う。
その証拠に、はまだ不審そうに俺のことを見上げてやがる。
「怪しい…。赤也くん、何か隠してない?」
いつもは鈍いくせに、こういうときだけは妙に勘が鋭い。
ったく、こういうときこそ鈍くていいのによ。
「何も隠してねぇって!」
もう一度、さっきよりも強めに否定すると、ようやくはじっと俺を見上げることをやめた。
「それならいいんだけど」
ふぅ。
危ねぇ、危ねぇ。
どうにか誤魔化せた…かな?
慣れねぇことで、ついソワソワしたせいでに怪しまれたけど、今ここでバレるわけにはいかねぇ。
まだ早い。
だって、こういうのはさ演出も大事だろ?
らしくねぇって笑うかもしれねぇけど、どうせらしくねぇことには違いない。
それなら、とことんらしくねぇことを貫いてやるまでだ。
「それじゃあ、またね?赤也くん」
待ち合わせた場所と同じ場所で、が別れの手を振る。
「おお。またな!」
俺はそれに答えるように手を上げ、そこで何かを思い出したかのようにに声をかけた。
「…っと。そうだ、」
「なに?」
歩き出そうとしていたが、もう一度俺を振り返ったところで、俺はの目の前にある物を差し出す。
「…鍵?」
「忘れモン」
そんな俺の言葉に、は戸惑ったような表情を浮かべる。
「私のじゃ、ないんだけど…」
「バーカ。よく見てみろよ」
ニヤっと笑った俺の顔と、手渡された鍵を交互に見る。
「これ…ロッカーの鍵?」
「そういうこと。ってわけで、そん中に入ってるモンお前にやるから」
「…え…で、でも、どこの…?」
俺の意図を察したが、少し震えだした声で呟く。
おいおい、泣くのはまだ早いだろ?
だけど、そんなが可愛くて、俺は思わず小さな笑みを漏らしてしまう。
「帰りに開けてから帰れよな。忘れんなよ?」
真っ直ぐに駅を指し示す俺の指。
コクリと頭だけを動かして返事をする。
「よし。じゃあ、またな!」
本当は今すぐを抱きしめたい気持ちを抑え、俺はに背を向け歩き出し、ひらひらと手だけを振る。
映画の男も、こうやって帰り際に彼女に花束の置かれたロッカーの鍵をプレゼントしていた。
完全に真似するのもどうかと思ったけど、これ以外にには内緒で花束を保管しておく方法が思いつかなかったから、全部映画どおりにすることにした。
「赤也くん…ありがと…」
遠ざかる俺の背中に、のお礼が投げかけられた。
だ〜か〜ら〜、まだ開けてもないうちから礼なんて早いだろ?
後ろ手に手を振りながらそう心の中で答えた瞬間、俺はずっと思い出せなかった映画のタイトルをふと思い出した。
ああ、そうだ。
あれは確か…
『キミに、花束を』
2009.12.31
03.舞い落ちる雪 (手塚×)
日本の日付が変わる間際に、空から舞い落ちてきた雪。
それを見た瞬間、柄でもないと自覚しながら携帯を開いて動画を撮った。
「東京でホワイトクリスマスって、滅多にないですよね」
そう呟きながら空を見上げていた去年のの姿が、今でも鮮明に記憶に残っている。
この動画を送ったら、はきっと喜んでくれるだろう。
「国光先輩、ありがとうございます」
そう嬉しそうに弾ませた声が今にも聞こえてくる。
ドイツと日本。
会いたいと思っても簡単に会いにいける距離ではないけれど、動画は飛行機で十数時間の距離ですら一瞬で飛び越えてくれる。
来年は一緒にクリスマスを過ごしたい。
照れくさくて言葉にはできそうにない想いも込めて、俺は撮ったばかりの動画をへと送信した。
2009.12.18
04.夜景の綺麗なレストラン (鳳×)
「わ〜。見て見て、長太郎くん」
隣に座っていたキミが、注意を惹きつけるように俺の腕を小さくっ張ったので、俺は読んでいた本から視線をキミへと移した。
「どうかしたかい?」
「回転展望レストランだって。オシャレだね」
眺めが良さそうだね〜。
開いていたページを俺に見せるとキミは満足したのか、そう言いながらキラキラと輝く瞳を再び雑誌へと戻す。
「あ、夜景もやっぱり綺麗なんだ」
「運が良ければ、富士山も見えるって」
俺に話しかけているような独り言のような、そんな呟きと共に雑誌を真剣に眺めているキミ。
「」
「なに?」
それでも俺が名前を呼ぶと、すぐに雑誌から顔を上げ、ふわりと微笑んでくれる。
「あの、さ…」
今こんなことを言うのは、さすがに気が早すぎるんじゃないかと、自分でも思う。
でも、瞳を輝かせているキミを見ていたら、言わずにはいられなくなったんだ。
「今の俺にはまだ無理だけど、大人になったら絶対にキミを夜景の綺麗なレストランに連れて行くよ。だから…」
だから、それまで俺のそばにいてくれるかな?
俺なりに勇気を出した言葉。
中学生の俺には、まだキミの願いを叶えてあげることはできないけど。
大人になっている未来の俺なら、キミの願いも叶えてあげられるはずだから。
だからそれまで、ずっとキミと一緒にいたいんだ。
無言で、ギュッと俺の腕に抱きつくキミ。
ねぇ、それが答えだって思ってもいいんだよね?。
2009.12.24
05.メリークリスマス! (?×)
去年までは、家族で過ごす日だった。
夕食に少し豪華な料理が並んで、可愛くて美味しいクリスマスケーキも食べて。
そして、お父さんとお母さんからプレゼントをもらう。
それが私のクリスマスだった。
けれど、今年は違う。
今年は…
目の前を通り過ぎる人たちをなんとなく視界に入れながらも、私の心は落ち着かない。
ソワソワ。
ドキドキ。
時間が近づくにつれ、鼓動が速くなっていく。
今にも雪が降り出しそうな天気なのに、不思議と寒さも感じない。
(あと、5分)
腕時計をちらりと確認すると、頬が勝手に赤く染まっていく。
それがなぜかとても恥ずかしくて、思わず、俯いてギュッと目を瞑る。
はやく、会いたい。
でも、少し照れくさい。
そんな矛盾した気持ちが忙しなく交互に現れて、私は顔を上げられなくなってしまう。
「」
ひたすら俯いたままでいたら、ふいにかけられた声。
ハッとして顔を上げると、目の前ににっこりと微笑む顔。
大好きなあの人の、大好きな笑顔。
「あ…」
瞬間、顔が熱くなる。
「」
もう一度呼ばれる、名前。
そして。
「メリークリスマス!」
とびきりの笑顔と共に、差し出されたリボンのかけられた小さな箱。
「………」
私は、今にも溢れそうな嬉し涙を必死に我慢しながら、
「メリークリスマス!」
大好きな彼に、そう笑顔を返した。
2010.01.06
書くペースが遅いため、クリスマスを大きく過ぎてようやく終了しました…。
季節外れでごめんなさい。
でもお題自体は書いていて楽しかったので、また機会があれば他のお題にも挑戦してみたいなと思っています。
ちなみに、5番目の「メリークリスマス!」がネタ的に思い浮かぶのに一番時間がかかりました。
相手を誰でもいいような仕様に!と思ったのが、たぶん敗因です…。
内容も、こじつけ感が満載で申し訳ないです(><)
読んでくださった方、ありがとうございました。
ウィンドウを閉じてお戻りください。
2010.01.06記