〜第六話:虚無への帰還〜
※導入部分・・・イスズとワドズンの死によって自制心が崩壊したオキタと、ガーネット姉妹の闘いは幕を開けた。時を同じくして、アクセルも、あの日出会った一切の敵意を持たない不思議な女が『neo-demise arch』の艦長だと知りつつも、闘いを始めた。
「悪いですが、加減は出来ませんよ…」
「フン…お前も、何か手品でもするのか?」
何故かはわからないが、先刻まで殺気に満ちていた部屋が、徐々に――じんわりと音を取り戻していく。
「手品…ですか?」
「お前のお仲間、キョウギクとやらは『見えない刃』を使っていたからな…。お前にも、何か隠し玉があるんだろ?」
「…かつて、私達『original four』の部隊は『silent force』と呼ばれていました…。その所以は、私達の武器の性質にあるんですが…言われてみれば、確かに、手品に近いですね♪本当は、使いたくはないんですが…そうはいきませんよね?」
「しつこいな…。俺は敵だ。それだけで排除の対象になるんじゃなかったのか?」
「敵とはいえ、命を奪うのはやはり忍びないんです♪貴方の命は、貴方自身のものですから♪」
「まだそんな事を言っているのか…?呆れた奴だ。俺には許せないモノが3つある。一つ目は他人に縋る奴。二つ目は平和主義を気取る奴。そして最後は…お前みたいなポンコツな機械だ。戦いを嫌う兵器に存在価値などあるはずが無い。それは、お前自身が一番よくわかっているだろ!?」
アクセルに罵声を浴びせ掛けられている間、スイレンは終始沈黙に徹していた。
――そして、黙り込み、俯いていた彼女が顔を上げた時の表情、気迫、そして醸し出す雰囲気は、先刻までとはまるで別人の様だった。
「――それなら…お望み通り、本気で行きますよ♪『厭舞・砲攣』(えんぶ・ほうれん)!」
刹那、風切り音と共に、殺意という名の輝きを帯びた――いや、まるで、殺意というものがそのまま一つの塊として具現化されたかの様な、ナイフ状の鋭い投擲兵器が、スイレンのやけに長い袖の動きに合わせて不規則に舞い飛ぶ。
その攻撃に対しアクセルは、道中、下級魔族から奪い取った軽目の剣でそれらを弾くという回避行動を取った。何故か、投擲兵器の中には、彼の身体を逸れて行くものもあったが、それは『面』での攻撃を意識したものだろうと判断し、その後は気にも留めなかった。
…地面に散らばった数多の殺意は、叩き落とされ音の一つも出さない。
不意に部屋に広がったのは、永遠よりも永く感じられる一瞬の静寂。それは、限りなく、どこまでも深いものだった。
「…それだけか…?」
余裕の笑みとも、嘲笑ともとれる表情を浮かべるアクセルに対し、すかさず、スイレンは次の一手を仕掛ける。
「『閼舞・砕崩』(えんぶ・さいほう)!」
彼女が叫んだその時、彼女の視界にアクセルの姿は無かった。
「…!?」
何が起きたか完全に理解出来なかったスイレンだが、ただ、アクセルが今、自分の背後に居るという事だけは判った。
「――くっ…!」
『ただの』前転。スイレンは、人間を軽く凌駕する身体能力から繰り出されるその身のこなしで、慌てて距離を取ろうとしたが、その力をもってしても、回避行動は間に合いはしなかった。
ごく浅くだが、背中に一太刀、もらってしまった。いくら機械の身体といえども、銃弾や刀剣の直撃には何発も耐えられない。
「へぇ、お疾いんですね♪でも…」
「フン、あんな重いモノを使わなければ、スピードなら誰にも負けない…」
今のアクセルは、軽目の所謂『普通の剣』のみを手にしていた。
スイレンが第二の攻撃を放った時に彼が居た場所には、スイレンの扱う『何か』によって半ばから切り裂かれた、赤熱剣の切っ先が突き刺さっている。
「それだけ、です…」
「お前も『見えない刃』を使うのか…。それに、この間合い、切れ味…ただの刀剣じゃないな…。これが、人外たる所以のようだな。」
「そう言う貴方こそ、人外の者では?さっきのは、高速の移動術『音速』(ソニック)…ですね?私の知る限り、それを使える人間はたった一人…でも、今はその一人もこの世には居ないハズ…まさか、貴方は…」
どこか当惑した風味を帯びたスイレンの言葉に答える様に、アクセルが喋る。
「…誰だと思う?お前は分かっているのかもしれないな。確かに、俺は『アクセル』だが、本当の意味で『アクセル』だというわけじゃない。」
「――もし、私の予想が当たっているのなら、この状態では到底勝てませんね…。『アレ』を使うしか…。…恨まないで下さいね♪」
…瞬間、スイレンが微笑み、言葉を発したのとほぼ同時に、部屋の至る所から濃い白色の気体が噴き出した。
「これは…毒ガス!?」
「自分の艦の中で、毒ガスを使うと思いますか?」
「これは…霧…?」
「…視界ゼロの濃霧『雨睡』(うすい)…。いくら貴方が疾くても、相手が何処にいるのか判らなければ意味はありません…。本当の闘いに『卑怯』という言葉はないですから…遠慮なくやらせて戴きますよ♪」
「そうやって声を出せばマルわかりだぜ!?」
そう言い放ち、アクセルは護身用の銃を声のした方向に二発撃ち込むが、命中音も、弾かれた時の金属音も、一切返ってはこない。
そう、弾丸はまるで、濃霧に吸い込まれるかの様に消えてしまったのだ。
――しばしの静寂が時を支配する。
…と、その時、アクセルの2〜3メートル左側のやや後方から、突然、スイレンの声が響いた。
「『偃舞・断醴』(えんぶ・だんれい)!」
瞬間的に『死』を感じ取ったアクセルは、何も考えずにその場所から動いた。
…が、すぐに右の上腕部に鋭い痛みを感じ、その痛みが身体と思考を支配する。
「ぐっ…ああッ!」【クソっ!どこから攻撃してきやがった!?声がしたのは明らかに左からだった…だが、この場所は、俺の前か後ろからしか攻撃できないはずだ…。一体どうなっている!?ああ、いや、今はそれよりも傷だ。痛みからして、これはかなり深く抉られたな…指先は動く、か?――よし、動く!傷の具合は…】
アクセルが傷に目を向けると、そこからは夥しい量の血液が溢れ出していた。想像以上に傷は深く、千切った服ですばやく腕を縛り止血をしたのはいいが、早くしないと大事に至る可能性がある。
【この傷…マズいな…。それに、さっきから頭がクラクラしやがる…睡眠性の気体か…?古い手使いやがって…!】
アクセルが様々な思慮に耽っていると、その様子を蔑むかのように、スイレンが彼に話し掛けてくる。
「私には、貴方の動きが手に取るように解り、そして感じる…。言っておきますが、どこに逃げても無駄ですよ…」
「機械が感じる、か…。おかしな世の中だ…」
「あら、そうですか?やはり、貴方の思想はナンセンスですね♪私の事をポンコツだ無能だと言っても、所詮貴方はたかが人間…。だから、貴方は私に対して手も足も出ないでいる。違いますか?」
「フン、ポンコツ、お前の手品はもう見切っている。だが、大した奴だ。少しは認めてやるよ。」
「それはどうも♪それでは、せっかくなので聞かせて頂けますか?私の手品が何なのか、を…」
「――まず、部屋を密閉し、霧の濃度を上昇。それと同時に睡眠性の気体を散布し、じわじわと感覚や思考を麻痺させていく。さらに、最初に投げたナイフ状の武器に音を発振する装置をあらかじめ付けておき、至る所から話しかける事と感覚麻痺の相乗効果によって、俺の動揺を誘う…って感じか。ちなみに、お前の『見えない刃』の正体はウォーターカッターだろ?レーザーは霧の中では充分に威力を発揮できないし、第一、斬られたところから大量に血が出たからな。それと、この最低な視界の中で俺の場所を把握した方法だが、おそらく、超音波による索敵…簡単に言えば、ソナーに似た技術を利用しただけだな…。まぁ、こんなところか?」
「…ご名答…です。素晴らしい分析能力ですね♪でも、それがわかったところでどうにもなりませんよ♪私に搭載されている、究極の統合索敵システム『音色』の前では、いかなるモノも逃げきるコトは出来ません♪」
「フン…誰も逃げようだなんて思っちゃいない…。次で、キメてやる。…フルスロットルで行くぜ!俺の最高潮、お前に見極められるか!?」
「面白い事を言いますね♪いいでしょう…勝負…です…。『音色限界起動:極音・無限音響』(ねいろげんかいきどう:ごくおん・むげんおんきょう)!…これで、貴方の瞬き一つでさえ、私は捉える事ができます。そして―――」
「…っ!」
突如、激しい耳鳴りがアクセルを襲う。そのあまりの強烈さに、平衡感覚が削がれ、睡眠性の気体の効果と相まって、自分の体がどの様な状態になっているのかさえ分からなくなってきてしまった。
「どうしました?次で決めるんじゃなかったんですか?」
「…『嫣贐』(エンジン)1st gear…『前奏曲』(プレリュード)…!」
多方向から聞こえる、アクセルを嘲笑うかのような風味を含んだ声を聞きながら、アクセルは呟き、ぼんやりと靄がかかったままの思考回路をフル稼働した。
【相手のいる場所が判らないのなら…攻撃が自分の体に当たった瞬間に位置を把握、突貫するしかない。そのためには…より速く!…そう、音のように…より、光に近付くように…】
「――終わりです!『焉舞・華蘖』(えんぶ・かげつ)!」
アクセルの思考とは無関係に、スイレンは両手のウォーターカッターを同時に使用する、最強にして最後の舞を繰り出した。その声とほぼ同時に、アクセルの左肩に痛みが奔る。
「そこか…!『弾丸』(バレット)!!」
…次の瞬間、一瞬だけ霧が晴れた。
――――――同刻:艦橋――――――
「――あ〜あ、こんなにボロボロにしちゃって…後で艦長に怒られても知らないよ!?」
「…生きているのだから、何ら問題はない。」
「く…そっ…!」
二人の少女の前に、傷だらけで、まさに満身創痍といった様子の男が片膝をつきながら唸るように零した。
「さ〜ってと!早く艦長に報告しに行かなきゃね!」
「そうだな…。この男も、これだけ傷ついていてはどこにも逃げられないだろう。」
「…ってことだから、貴方はここでゆっくりしててね。さ、行こう、エリス!」
「ああ……おっと、行く前に私からも一つ。お前を待ち受けているのは、殺してくれと叫びたくなるほどの拷問だ。エルスの言う通り、今はせいぜいゆっくりしておくんだな。」
もはや、ほぼ無力となった男に背を向け、二人の少女は艦長室を目指して歩きだした。
「待……て………!」
残された男は力なくうなだれ、遠ざかる二人の少女の背を歯噛みしながら見送った後、そのまま床に倒れ伏した。
――――再び、艦長室。
…霧が晴れた時、アクセルはスイレンの背後に立っていた。そのスイレンの首筋には、何か棒状の物が突き刺さっている。
「この勝負、俺の勝ちだ…。お前の反応速度では、俺のフルスロットルは捉らえられなかった様だな…」
「くっ…!」
彼女は素早く首筋の物を抜き捨てるが、全ては手遅れだった。
「なっ…!何コレ…ッ…く…、うぅっ…!ひっ…ぃあっ…!くっ…はぁあぁぁうっ!」
悲痛な絶叫と共に、頭を抱えて両膝から崩れ落ちた彼女に、アクセルは冷たく応える。
「何かって?対機械人形用の秘密兵器『NOx』…強いて言うなら、『他愛の無い情報』だ…」
「うっ……、情…報…?」
「膨大な量の情報を一瞬で強制的に流し込んで、お前をオーバーロードさせる。ウィルスが効かないのは知ってるんでね…。お前らのペイロードじゃ、その辺が限界だろう?お前の破滅へのスピードは加速した…さよならだ……」
「さっきのわ…ざ、貴方…一体…何…も…の……です…?く…うぁっ!」
「…!オーバーロードはしないのか…。流石だな。が、全体的な処理速度は大幅に遅くなっているようだな。」
「嫌味な…方…です…。くっ、あぁあっ!…うっ…。…私には…本当の意味での『優しさ』が…欠落…していた……のかも…しれません…ね………」
「いや、お前は優し過ぎたんだ。愚かなまでにな…。でも、もう悩まなくていい…。回復しきる前に、機能を停止させてやる。」
「………………」
「最後に教えてやろう。俺は…」
――その声は、部屋の壁が爆砕される音に掻き消されたが、スイレンには聞き取る事が可能だった。それが耳に入ると同時に、彼女は腹部に鈍い痛みを感じ、仰向けに床に倒れ込んだ。
…破られた壁(つまりは、壁のあった場所に空いた穴)から、女が一人、入って来る。
女は、入ってくるなり辺りを見回し、瀕死といった状態のスイレンの姿をその目で捉えると、一瞬眼を伏せ、今度は、その敵意を剥き出しにした深淵の瞳にアクセルを映した。
「何故、艦長を殺した!?」
「殺してなどいない。破壊したんだ。艦長はもういない…投降しろ。」
「誰が投降など!」
「その声…ソフィ、ですか…?」
ソフィと呼ばれたその女は、不意に地面から響いた声に反応し、慌しく声のした方へと駆け寄る。
「艦長!まだ生きて…」
「艦長が不在…及び、指揮続行不可能時は…副艦長が、艦長代理と、なる……今から…アナタが……艦長…で……す…」
それだけ言い残し、スイレンは永遠に黙した。
【すみません、ティーナ様…私は本当に…貴女のお役に立てたのでしょうか…?】
人知れず、スイレンが最期にこう想ったことも、彼女が己の存在を忌み嫌い、平和を希求したことも、全ては過去に帰結する事実となり、そして―――
決して、未来へ繋がる事はなくなった。
―――――――――同時刻:滑走路―――――――――
アクセル達が警備兵達を片付けたため、誰もいないはずの滑走路に、二つの影があった。
「…雨が、降り出しましたね。」
「この状況…どうやら、先客がいたようだな。雨の中で敵の増援…しかも、雑魚と戦うのはゴメンだ。さっさと終わらせてくれ、『カイゼル』。」
「あまり焦らないで下さい…そういうところがいけないのですよ、『アビス』。それに…」
「「雨が降っていた方が好都合ではないのですか?」だろう?だから俺は、雑魚相手には絶対に有利な状況で戦いたくないと言っている。できれば、強い者を相手にする場合も、な。まぁ、今はそんな事はどうだっていい。頼むから、早くしてくれ。俺は、こんなところからはとっとと撤退したいんだ。」
「…わかりましたよ…。まったく、困ったお方ですね……それでは、始めますので、少し、離れていて下さい。」
「ようやくやる気になったか。どっちが困ったヤツだよ、ったく。」
『アビス』と呼ばれた影が呟くと、『カイゼル』と呼ばれた人影は、腰に携えた鞘のようなものから、何かを抜き放った。いや、正確に表現するなら、何も『抜き放って』はいない。ただ、刀の柄のようなものを、それがくっついていた鞘から取り外した、というのが適切な表現だろう。
――次の瞬間、『カイゼル』という名を持つ人影は、その『刀の柄のようなもの』を空高く放り投げた。そしてそのまま、祈るように両手を合わせ、そっと眼を閉じた。
「…『刃技の理:巨刃ノ弐・斬艦刃』(じんぎのことわり:きょじんのに・ざんかんじん)!」
軽く閉じた眼を見開くのと同時に、何か、かくばった儀式じみた言葉を叫ぶ。
…半瞬間後、『neo-demise arch』を、重力に従って空から落ちてきた『刀の柄のようなもの』から生えた巨大な刃が貫いた。
「あとはこの刃を、艦の端まで押していくだけです。」
「いや…その必要はない。聞こえるだろ?波の声が…。『二重:高波・漣』(ふたえ:たかなみ・さざなみ)!」
『アビス』と呼ばていれた影が叫ぶのと同時に、野獣の咆哮にも似た轟音を響かせながら、荒波が二つの影を呑み込み、巨大な刃を艦の半ばまで押しこんだ。
―――そして、所在は三度艦長室。
「艦長…艦長っ!…っつ…うぅ……」
ソフィアは、スイレンの横でさめざめと泣いていた。アクセルは無抵抗の相手に攻撃を加える気にはとてもなれず、ただただその様子を傍観していた。
――それにしても、先刻の衝撃は一体何だったのだろう?そんな事に気を取られていて、彼は、自分の後ろに二人の少女が迫っている事に気付くのが遅れた。
「あれー?これって一体、どうなってるの?」
「さぁな……」
「…!?」
場違いな黄色い声に反応し、アクセルが振り向くと、そこには二人の少女が立っていた。
【こいつら、魔族!?くっ…、ここまでか…】
…アクセルが諦めかけたその時、突然、艦長室の天井に綺麗な切れ目が大きく、いくつも入り、そこから細かく亀裂が走り、伸び、そして、曇天が姿を現した。
破壊され、落下する天井の瓦礫を伝い、長髪を後ろで一つに束ね、腰に聖柄の長刀を携えた一人の女が舞い降りた。それに続いて、小型のヘリが女の背に降り立つ。
―――空から、細かい雨粒が降り込む。外では、いつの間にか雨が降っていた。
【あのヘリ、艦載式だな…近くに母艦が…?しかし、今降りてきたあの女、相当な使い手のようだ。それに、俺の後ろには魔族も二人居るときてる。このままでは、確実に殺られるな…】
――だが、アクセルの想いとは裏腹に、二人の少女は彼がここに居る事すら関係無い様に彼の横を素通りし、ヘリに近付いて行った。
「まさか…ティーナ様っ!?どうして…あっ!もしかして、この艦が沈むから、迎えに来てくれたんですね?それなら、さっきの揺れも納得できますしっ!」
ヘリの中の人影に向かって、横で二つに縛った髪を揺らしながら、片方の少女が叫ぶ。
「は…うっ…うぅっ…」
「………………」
ヘリの前に立つ女は、少女の背に、泣き崩れるソフィアの姿を捉えた。
…そして、
「あの女、利用価値が有りそうですね、ティーナ様…」
と、ヘリの中の人影に向かって、確かに、静かに言った。
ティーナと呼ばれた女はヘリの中から淡泊で平坦な声で「そうね…」とだけ答えた。
【この雨…スイレン、泣いて…いるのね…?】
この時、ティーナが人知れず巡らしていた想いは、誰にも伝える気はなかったし、伝わる事もなかった。
依然ヘリの前に立つ、冷たい雰囲気を纏う女は、同じ様な雰囲気の少女に目で合図をし、スイレンの傍らにへたり込むソフィアを、召喚獣でヘリの中へと運び込ませた。それと同時に、その少女もヘリに乗り込む。
「…残念だが定員オーバーだ。中級、お前は置いていく。お前の召喚獣ならヘリ程度には追い付けるはずだ。問題はないだろう?それと、ゴミの処理を頼む。」
女は一通り作業を終えると、アクセルを一瞥し、明るい方の少女に吐き捨てるように言った。
「そっ、そんなぁっ!」
「戦いは引き際が肝心だからな。私達がここに来た本来の目的は、もはや達成のしようがない。長居は無用だ……」
「つまり、何らかの作戦に失敗して、この艦まで失って…面目まで失うのが恐いから、生存者を『作る』ために少しでも戦力を回収して、逃げるってことか?」
少女と女の会話に、アクセルが挑発を交えた横槍を入れる。
「戯言を…。この場合は、戦略的撤退と形容するのが正しい。まぁ、貴様はせいぜい足掻くんだな……」
女は言い終えると、華麗にヘリに飛び乗った。
大した間を置かず、ヘリは艦から飛び去る。
「――えげつない上司だな。さて、どうする?ゴミのお掃除は。さっさと済ませるか?」
強がりを言ってはみたものの、激闘を終えた今のアクセルにはもう、闘える体力など微塵たりとも残ってはいない。
「うぐっ…っひ…うわあああ〜ん!」
アクセルが生き残るための策を多少なりとも編み出そうとし始めた時、急に、少女は大声をあげて泣き出した。
確実に殺されると思っていたアクセルは、突然の事態(嬉しい誤算ではあるが)に、面食らってしまった。
「助かった…のか?」【…しっかし、何なんだよ、次から次へと…】
しかし、半瞬間後には、その束の間の安堵は音を立てて崩れ去る事となる。
主を失った『neo-demise arch』はゆっくりだが、確実に崩壊を始めていた。
続く