物語は少しだけ飛んで、感動?の最終話!
〜最終話:月華の残照〜
※あらすじ・・・激闘の末、なんとかドレルを倒したテルルだったが、息つく間もなく魔王が直々に駆る二隻目の『demise arch』がユリナの居る前線基地に向かっている事が判明。魔王は最初から二カ所同時攻撃を予定していて、当初からの目的は前線基地の尽滅であったのだった。負傷したアイシャとテルルは、『demise arch』同士を衝突させる事で、魔王の『demise arch』もろとも海に落とし、前線基地への攻撃開始を防ごうとする。一方で、前線基地に待機するユリナにも、もちろんその情報は入った。ユリナと戦況管理人(前線基地から指示を出す奴ら。オペレーターのようなもの。)達は迎撃体制に移るが…
────『demise arch』操舵室…
「お前だけに、いい格好はさせねぇよ…」
アイシャがテルルの横で呟く。その表情からは、いつもの気さくさは微塵も感じられない。テルルは、一瞬アイシャと目を合わせ、ぼそりとこう零した。
「今のお前では…」
「…戦力外…か?」
アイシャはテルルの言葉を予想したつもりだった。しかし、テルルから返って来た答えは意外なものだった。
「いや…。ただし、足手纏いにはなるなよ…!」
「フツー、このシチュエーションなら『無理はするなよ』とでも言うべきだろ?」
「フ…やはり、相変わらずだな。」
「ハハ…そのようだ…」
気の利いた冗談の一つも出ないような状況で、二人は笑い合った。だが、時間はそのささやかな幸福すらも許さない。この幸せが続くのは、進路の軌道修正を行ったアイシャの『demise arch』が魔王の『demise arch』に衝突するまで……。この時、二人に残された時間は、あと5分だった。
────────その30分前…
既に、ユリナ達の戦いは始まっていた。ユリナは素早く、前線基地の動力炉から直接電力を供給される簡易型のレーザー発振装置の使用による迎撃作戦を考案した。ただし、動力炉の安定動作域を越えて電力を使用するため、前線基地がその負荷に耐えられるという保証は無い。
しかし、ユリナ達には選択の余地は無かった。多めに見積もっても、作戦の成功確率は3割を超えない。そんな作戦とも呼べないような作戦に縋るしかない現状。
敵、仲間のパフォーマンス、時間。その全てが、苦しい戦いをユリナ達に強いる。
成功率がいくら低かろうと、可能性がある限り、必死で生に執着し、足掻くこと。それが、今のユリナ達に残された唯一の生き残る術だった。
そしていよいよ、作戦は実行に移される事となる。
「アナタ達は逃げて…。死ぬのは私一人でいい…」
ユリナは他の者達に撤退を促すが、誰一人として逃げ出そうともしない。ややあって、器材の電子音の海の中、様々な情報が表示されているディスプレイに向かい合う一人の男が口を開いた。
「何を言っているんですか?始めから皆死ぬ気でやってるんです!今更…逃げません!」
ユリナはその言葉を聞いて、少し躊躇った。焦りを感じた。
極力、犠牲は出したくはない。作戦を実行するには、自分一人がいれば事足りる。なのに、今、同じ空間にいる人達は、自分の命を犠牲にするかもしれないという状況の中で、作戦に最後まで関わることを…作戦の成功を見届ける事を望んでいる。
【この人達となら…きっとやれるわ…!】
ユリナは皆の顔を見渡し、微笑んでこう応えた。
「わかったわ……やりましょう、皆で…!総員!レーザーの照準の最終調整を!」
士気高揚のために…そして、込み上げてきたものが溢れ出たために、思わず叫ぶユリナ。だが、その時、異常は突如として発生した。
「レーザーの出力が理想照射レベルに達しません!」
まったくの、想定外の事態。しかし、その問題に対しての、ユリナの対応は完璧だった。
…自分達が生き残る可能性を削ぎ、多くの命を犠牲にする可能性を高めるという点以外は。
「脱出装置、その他、諸々のレーザー照射に必要なシステム以外への電力供給をシャットダウンして!」
「了解しました!…数値、順調に伸びて行きます!レーザー発振装置展開!照射角、修正開始…上下角の修正、完了!」
「左右角の修正も同じ!システムオールグリ…いや、照準システムにエラーが…!」
「問題ないわ…。私の魔法でレーザーの集束率を微調整するから。これが元魔王の手足としての、最期の罪滅ぼしってとこね…。いくわよ!レーザー、照射!」
「了解!レーザー、照射!」
前線基地から放たれたレーザーの光は、魔王の乗る『demise arch』をみるまに飲み込んだ。
──しかし、現状は何ら変化しなかった。たかがそれだけで『demise arch』が消え去ることはなかったのだ。
「目標、依然として直進中!」
「限界を越えてまでしても、破壊しきれないって言うの…?」
絶望的な状況に拍車をかけるように、『demise arch』の副砲が何度も前線基地に命中する。
「総員、対衝撃防御!」
「どうやらダメな様ね…もう、ここからは逃げようもない…。どうしたものかしら…」
その時、突如、ユリナの通信機に通信が繋がった。その通信は…第5支部から戦況を見守る、フィアラ達からのものだった。
「ユリナ、大丈夫…よね…?そんな所で死んだりしたら、許さないからっ!」
自分なりにユリナを勇気付けようとするフィアラだが、当のユリナには、もう手は残されていない。
「…もう…希望なんてないの…。貴女達は……未来を掴み取って…。私の望んだ未来を…皆が望んだ未来を……」
「何を言ってるの!?帰って来るって…言ったじゃない……」
フィアラは必死で強気に振舞おうとするが、感情を隠しきれず、自然と涙声になる。
そんなフィアラの様子を見かねたロウスはユリナに話し掛けた。
「フィアラの言う通りだ……また皆で海に行くって…約束しただろ!?」
「ゴメンなさい…。私は………じゃあ、さようなら…。泣き言なんて、聞かれたくはないから……」
そう言って、ユリナは通信を強制的に遮断した。
『demise arch』の主砲の直撃を一度受け満身創痍の前線基地は、もう次の攻撃には耐え切れそうにない。
「これで…満足なのよね…?」
ユリナは自分自身に問い掛けた。ユリナはその問い掛けに答える事はできなかった。しかし、答える代わりに、ユリナは微笑んだ。微笑む事が出来た。ただ、微笑む事だけが……
半瞬間後、『demise arch』の主砲の第二射が発射された。
…その直後、フィアラ達には監視塔から最も認めるのが嫌な現実が突き付けられた。『前線基地、沈黙。』と。
その無機質な電光表示が、ロウスの己の無力感を掻き立てる。
「クソッ…!なんで…なんでだよっ!?…どうして…」
────そして、時間はテルル達に戻り……
「…へっ…。何か今生の別れみたいだな…。運転の無い世界に未練はないが…死ぬのは恐いものなんだな…。テルル、お前は早く逃げろよ…。俺は、こんなところでは死なないぜ…」
強がりを言うアイシャを前に、テルルは逃げる気など毛頭なかったが、『あの時』と同じように…彼はアイシャに背を向けて駆け出した。そうするしか、なかった。
「行ったか…。さぁて、最後の…仕事だ…。最期にまた…運転できる事に満足してるとは、な…。おかしな話だ…」
自嘲気味にアイシャが呟く。だが、彼の隣にはもう、その零れた言葉を掬う者はいなかった。
一人の男の人生が終わりを告げる時は刻一刻と迫る。
しかし、魔王の『demise arch』が目前に迫った時、突然アイシャの『demise arch』が傾いた。
「なっ…!?」
「ククク…くハは…!ハハハはハハはハハッ!」
不意に、操舵室にドレルの高笑いが響く。振り返ったアイシャの眼には、真っ二つになり、スパークを散らすコントロールパネルが飛び込んできた。
「ドレル…!」
「愚かな人間め…。アイシャ、貴様に世界を救うことは出来ない!貴様はここで俺と共に海の藻屑となり、朽ち果てるのだ!」
ドレルは絞り出すように叫び、それきり何も言葉を発することはなかった。
「くッ…!」
アイシャは既に限界を超えた体に鞭打って、『demise arch』のコントロールパネル(操作盤)に辿り着き、そのままそれに体を預けた。自然と、操作盤に縋り付くような体勢になる。舵を戻すには、緊急時用のレバーを引いて予備の操作盤を出すしかない。
だが、その程度の力でさえ、今のアイシャには残されていなかった。
「くそっ…ここまでか……」
アイシャが独り言を言ったまさにその時、机を思い切り叩いたような音と共に操舵室の扉が開いた。
──テルルが再び操舵室に現れたのだ。
「テルル…なんで…どうして戻ってきた!?」
「お前だけにいい格好はさせない…お前の受け売りだろう?」
「そうか…お前は根っからの馬鹿野郎だよ……」
二人には、2分37秒後に確実な『死』が待っていた。しかし、その時の二人は永遠の平和を感じていたのかもしれない…。
〜Epilogue〜
父とユリナを立て続けに失った事で、ロウスはPTSDによって半廃人化してしまう。そんなロウスを連れて、フィアラは皆で約束を交わした海へ来ていた。テルルとアイシャが命と引き換えに撃沈した二隻の『demise arch』は、今頃この海の奥底で魚の住家にでもなっているだろう。
「星が…綺麗だね…。兄さん……」
「……………」
「それに、波音もすごく静かで…何だか寂しくなってきちゃった……ね…?」
「………………………」
決して言葉を返す事の無いロウスに、フィアラは語り掛け続けた。
静かな波音は、それでも十分にフィアラのか細い声を掻き消した。
止むことのない波音は、まるで二人をそのまま永久に包み込むかのように響き続けている。
フィアラもそれと同じように、ロウスに語りかける事を止めはしなかった。
兄が自分の呼び掛けに答えてくれるまで、フィアラは言葉を紡ぎ続けるだろう。
いつまでも、いつまでも……そして、何度でも。
FIN
〜 Cast 〜
▼シリーズ構成:お・れ!▼キャラクター原案:やっぱ俺。▼監督:やっぱ私。▼設定:やはり僕。▼編集:結局小生。▼制作担当:タミフラー▼プロデューサー:ムギチョコ君。▼エグゼクティブプロデューサー:アイリス・E・リグレッタ
〜声の出演〜
▼テルル:どうでもいいでしょ?▼ロウス:左に同じ▼フィアラ:左に同じ▼アイシャ:左に同じ▼ユリナ:左に同じ▼テツ:左に同じ▼ドレル:墮櫑惰楼▼Die Born:左に同じ▼謎の変態小説家:S氏▼魔王:魔王