※あらすじ・・・ドレルとテルル達の戦いから17年……人間と魔族との間で繰り広げられる争いの決着は未だつかないまま、世界には仮初の平和が訪れていた。その偽りの平和の中で、戦いでの消耗から体の調子を崩したサスハは、若くしてこの世を去った。あっけなさすぎるほどの、突然の別れ。テルルに残されたのは、年頃の息子と娘だけだった。テルルが悲しみに暮れる最中、ここぞとばかりに兵を送り込んでくる魔王。心神耗弱状態のテルルの力を借りずに魔王の侵攻に対抗するため、魔族に抗う術を持たない人間達は禁忌の力『超科学』に手を染めた。その事態を重く見たテルル親子は、人間軍の指揮下から離れ、独力(テルルとロウスは別行動。人間軍の士官学校を首席で卒業したフィアラは、サスハの遺した牧場で一人生活を営んでいる。)で魔王討伐の旅に出た。今回のテーマは、『始まりと終わりの物語』。割と暗い話なので、苦手な人は注意。

  −登場キャラ設定−
テルル・ザラグ→前作の主人公。前にも紹介したので、特筆すべき事はない。職業などは前作と変化ナシ。
ロウス・ザラグ→テルルとその婚約者であるサスハとの間に生まれた。親の放任のせいで、少々ワガママに育ってしまった。正義感が人一倍強く、自由奔放で、どちらかというと母親ゆずりの性格。
職業:流浪人
趣味:刀を研ぐ事
フィアラ・ザラグ→ロウスの妹。父親に似て冷静沈着な性格。大体の事は人並み以上にこなすが、少々ブラコン気味で、兄の事になると周りが見えなくなる傾向がある。サスハの娘だが、魔法は使えないようだ。
職業:狙撃手・牧場主
特技:狙撃
ユリナ・ムラド→名門の軍人一族であるブイラド家の分家、ムラド家の出身。父親はたった一代で富を築き上げた才能豊かな人物で、一人娘であるユリナも、紛れも無くその才能を受け継いでいる。幼少の砌に魔王に誘拐され、以来魔王直属の戦士として育てられた。割と冷たい性格。しかし、何故か妙に熱血なところもある。膨大な魔力を持ち、防御の魔法術に長ける。
特技:魔力から物質を創り出す事
魔王→そのまんまの魔王。
アイシャ・ブイラド→前作で消息不明となったが、魔王の優秀な部下としてロウス達の前に姿を現す。
職業:人物抹殺計画参謀
Die Born→その性格から人間軍を追放され、魔王に与した人間。薬物中毒で、情緒面に問題アリ。痛みを感じない。
職業:アイシャの護衛
ドレル・ルレルル→前作でテルルに敗れたが、死んではいなかった。復讐のため、再びテルル達の前に立ちはだかる。
職業:魔王近衛師団師団長
テツ・オリオット→前作にも登場した弓使い。今回は物語に関与しようとしたが遠距離戦では銃が主流となったため、活躍の場がない事を悟り隠居生活を始めた。

〜第5話:反発〜
※これまでのあらすじ・・・旅路の途中、突如ユリナの奇襲を受けたロウス。交戦の末、二人の行き違いはユリナのはやとちりと、魔王による微かな洗脳によるものだった事が判明し、彼女はロウスの打倒魔王の旅の仲間となる。その後、ロウスは自分の妹を戦力とするために牧場へとフィアラを迎えに行ったのだが、ユリナはフィアラに変な疑いをかけられてしまう。

「ちょっと…兄さん。誰よ、その女?」

渋い顔でフィアラがロウスに尋ねる。

                                             [※画像クリックで大きい絵が出ます。]

「フィアラ、お前…いきなりそれは失礼だろ!?この人は…」

ロウスのその言葉を遮り、フィアラはユリナを問い詰め始めた。

「貴女、一体兄さんの何なの?」
「何って…別に…」

突然の出来事に困惑するユリナ。ロウスはロウスで、体裁を気にして止めに入ろうとはしない。

「ふ〜ん……私は認めない…。貴女みたいに無愛想な人が、兄さんと一緒に行動するなんて絶対に認めないからっ!」

そんなこんなで、いきなり内部決裂。一体どうなってしまうのか!?


……アホらしい演出から話はいきなり飛んで、緊迫の第33話!

〜第33話:過去との邂逅〜
※あらすじ・・・一連の騒動の黒幕と元凶は、魔族側に寝返ったアイシャの存在であった。ドレルとの戦いで右足を負傷したロウスは、現在フィアラと共に人間軍第5支部で療養中であり、戦いに参加することができない現状に歯噛みしていた。しかし、歯噛みしようが歯痒い思いをしようが、傷が早く癒えるということはない。戦線からの完全離脱を余儀なくされた彼らは、最新の通信システムにより前線基地で待機するユリナと交信し、彼女に僅かばかりの情報を提供している。テルルは単身、アイシャ達との決着をつけるため…そして、人類抹殺計画『Fine』(Finagle inroad new empyreanの略称。)の実行を未然に防ぐため、魔力で浮遊する魔王軍の最終兵器である巨大戦艦『demise arch』に潜入した。その操舵室(コントロールルーム)で、ついにアイシャを発見し、説得を試みたテルルだったが、いいところでDie Bornに邪魔されてしまう。Die Bornは魔王軍が新開発した多耐性衝撃吸収鋼(その名の通り、衝撃を吸収する。純度が高い程吸収率が高い。銃弾程度なら低純度でも防げる。ある一定値以上の高温に曝される、又は磁力を受ける、又はある一定の薄さ以下になる事で、効力を失う。生成法は、全くの謎である。)を繊維状にして織り込んだ服を着装していて、苦戦を強いられてしまう。

「──そいつは殺すなよ!」

アイシャは言葉によりDie Bornの行動を制止しようとしたが、肝心のDie Bornは激しい猛攻を止めようとはしなかった。

「うるせぇなァ!どいつもこいつも…。俺は俺の好きな様にやらせてもらうぜ!」

流石、情緒面に問題があるだけあって、Die Bornは上司であるアイシャの言う事を全くと言っていいほど聞かない。

「ハハッ!愉しいなぁ!お前も愉しいだろ?このスリル!命の駆け引き!たまんねぇよ!これが好きだから、お前も戦うんだろ?」

緊迫感溢れる戦いに歓喜しながら、Die Bornはテルルに問い掛ける。

「最低な奴だな…。貴様の傲慢さと浅ましさには呆れ果てる…」
「ハッ!言ってろよ!」


……激闘の末、テルルはついに多耐性衝撃吸収鋼を織り込んだ服ごとDie Bornを斬り裂いた。

「ハァ…ハァ………っだよ…息…が…できねぇ……」
「最後まで道具の力に頼った己の愚かさを怨むんだな…」
「ウルセェよ…テメェ…。自分…の為じゃ…ないってんな…ら…お前は…何の……為に…戦ってんだ…?」
「…………」
「ヘッ…!黙り込み…やがって……どうせ…仲間の…為…とかだろ…?…くだらねぇ。」

負け惜しみを漏らしながら、笑みとも憐れみとも取れる表情を浮かべてDie Bornは静かに永遠の眠りに就いた。

「自意識だけが過剰に肥大したカスは死んだか…」

アイシャが軽蔑の眼差しでDie Bornの亡骸を一瞥する。

「来い!テルル!あの時の…決着をつけようぜ…!」
「望むところだ…!」

二人は、戦う事で相互に理解し合おうとした。この相克こそが、出会った頃の二人が求めた希望であり…そして、絶望だった。二人は最初から気付いていたのかもしれない。いつかはこうなるということに。

「フン…やはり、俺達はあの頃と何一つ変わってはいないようだな…。お前の『音速』(ソニック)、相変わらず極悪な力だ…」
「お前こそ…その『Spiral Of Rot』を扱う腕前は錆び付いてはいないようだな…。寧ろ、腕を上げたか?テルル!」

次第に激化する戦闘。近接戦闘が主軸の二人の間に大きな距離が出来ることはなかった。その戦闘の激しさは両雄がぶつかり合う度に加速し、互いの剣と刀、信念と理想が激突するその刹那に生きる彼らの姿は、迸る火花のような美しさと華麗さ…そして、儚ささえ感じさせた。

しかし、戦いの最中、テルルはアイシャの動きに違和感を覚える。そして、その違和感は徐々に確たる『不安』として彼の心に宿った。そして、ふと、テルルはアイシャの異変に気付いた。気付いてしまった。瞬間、二人の間に距離という名の物理的な溝ができた。

「アイシャ…お前、まさか…」
「お前の眼は誤魔化せないか…。そうだ。俺は、恒久の平和と永遠の爆走を追い求めた代償に、左目の視力を失った。今の俺に、もはや車を運転することは出来ない。運転の出来ない俺に存在価値があるのか…?俺は迷った。しかし…しかし、だ。そんな俺にもまだ出来ることがあると魔王は教えてくれた……そして、俺は全てを悟った。その時…お前ならば、永遠の平和を築くことが出来ると、唆された。だから俺は、俺のやり方で平和を求めた。だが、最後に辿り着いたのは孤独が内包する絶望、だった。笑っちまうよな?」
「アイシャ…お前、本当は…」
「確かに、一時は世界に平和が戻っていた…しかし、あの平和は紛い物だったんだよ…。そんな張りぼての平和は、魔王の強大な力の前にあまりにも脆く崩れ去った。あの時、魔王は永遠の平和を築けると言っていた。その言葉を信じて、ドレルを倒したあの日から今日まで、新たなる秩序と平和を築くため、俺は戦って来た。だが、いつしか世界の本質に気付いていた自分がいたんだ…。争いによって作られた平和は、所詮仮初の平和でしかないと、な。…俺の求めたものは、真の平和とは程遠いものだったんだ。それどころか、俺が戦う事で徒に被害は広がり、世界はその空洞に渾沌とした戦慄を含むだけの形骸と化してしまった……。今となっては、もうどうにもならないだろう…。」
「…………」
「こんな世界を修正してやりたいという気持ちに偽りはない。だが…俺に残された時間は少ない……あまりにも、な。」
「アイシャ…」
「お喋りが過ぎたな…。そう、俺は道化にしかなれなかったんだ…。お前と違って…な…。…今一度言う。俺にはもう時間が無い…」

アイシャが呟き、俯いたまさにその時だった。ドレルが操舵室に現れたのは。

「「!!」」
「これだから…人間というのは使えない…。せめて自分のノルマくらいはこなしてもらいたいものだ……」
「ドレル…またお前か…。性懲りもなくやられに来たのかよ!?」

ドレルは黙ったまま、ゆっくりと右腕を翳した。もちろん、テルルの安い挑発に応じる様子はなかったし、その言葉に耳を傾けてすらいないようだった。

「正直言って、お前のような役立たずは不要なのだよ、アイシャ・ブイラド…!」
「……!」

ドレルが翳した腕を振り下ろすのと同時に、アイシャは右の胸部から、まるで斬撃を受けたかのように大量の血を噴き出し倒れた。

「ぐッ…!?」
「これは…!?お前、魔法は使えないはずでは…!?」

突然の事態と情景を受け入れられず戸惑うテルルに、ドレルは嘲笑を浮かべながら答える。

「使えるさ…。あの時は、城自体に魔力を抑制する仕掛けを施しておいた…。あの王女様に暴れられると困るのでな……」
「やはり…そうだったか…。サスハは……」
「お前も薄々勘付いていたのだろう?あの女の秘めたる力に…。フフッ…それにしても、あれだけ強大な力を持っていながら、あっけなく病死するとは…お笑い草だな。」

ドレルはせせら笑い、優越感にも似た感情に浸りながら、テルルの神経を逆撫でする。

「…サスハは…戦うことに苦しみを感じていた…。精神を疲弊させながら戦っていた…。そんなアイツを、戦いに駆り立てたのは誰だ!」
「…俺だと言うのか…?フン、筋違いも甚だしい…。無駄話はこれくらいにしようか…。俺は、お前と違って多忙なのだよ。己の正義を貫く為、成し得なければならない大義がある。」
「お前にとっての正義は、俺にとっては悪だ…!」
「フン…俺も同じ言葉をそっくりそのまま貴様に返させてもらおうか!」
「何だと…!?」
「貴様は自分の正義の名のもとに、どれほどの命を奪った…?貴様も俺と同じ人殺し…だ。いや、同じじゃないな…。お前は人間…俺達魔族は異端……いや、人間こそが異端だったのだ。」
「何を言っている…?人間が異端だと!?笑わせるな!お前は、俺がもう一度この手で殺す!」
「殺(や)れるのか!?お前が!俺を!貴様…俺をナメるのもいい加減にしろよ…!もはや、貴様に明日はない!」
「戯言を…!死ぬのはお前だ!大人しくおねんねしているんだな!」
「…黙れっ!黙れ…黙れ…黙れよっ!」
「黙るのはそっちだ…。さっさと来い!」

(後編へ続くよ。)