※この話は、テルル・アイシャ・イゲ・サスハの四人が、果敢にも魔王(お酒ではありません。ここでは全ての悪の根源である存在を『魔王』として形容する。)に挑む大スペクタクルである?かなぁ?ジャンルは『消え逝く命の物語?』という事にしておいて頂きたい。
−登場キャラ設定−
テルル・ザラグ→ザラグ家の嫡男として生誕。ザラグ家の規律などに憤りを感じ、心を閉ざしてしまったため、無口で冷たい印象を与える。
職業:テロリスト(基本的には)
趣味:爆弾の製作
サスハ・ミラ・ナスラクア→中立国であるオーエンの王女。男勝りな性格である。とある事件がきっかけで、テルルと共に旅をする事を決心した。
職業:王女
特技:非物理的攻撃魔法・馬術
アイシャ・ブイラド→ある帝国の皇帝の直属部隊『リクタイ』のエース。普段は温厚だが、テンションが上がりすぎると手に負えない。そのため、『No brakeのアイシャ』という通り名で呼ばれ、恐れられている。(主に仲間から。)
職業:帝国軍第三課機動兵器部隊『リクタイ』部隊長
趣味:運転(無免許)
イゲ・リハヤ→ただのゲイであると同時に生粋のゲイである。いつの間にか仲間になっていた。
職業:アマゴルファー・デイトレーダー
口癖:「諦めようよ〜!」
テツ・オリオット→本編にほとんど関与しない弓使い。徹底的に関与しようとしない。
名台詞:「どうして俺達は戦わなければならないんだっ!?」
ドレル・ルレルル→魔王の懐刀。五常将とかいう位に就いているが、本編にはあんまり関係ない。
職業:軍人(五常将)
嫌いなもの:全ての人間
これより本編が始まります。情景を想像しつつ読むと、いっそう楽しめます。
〜最終話:最後の勝者〜
※あらすじ・・・ついにドレルの城に攻め入ったテルル達だったが、一人先走った満身創痍のイゲは、あっけなくドレルの前に倒れ伏した。残された三人は自分達の未来を守るために自己中心的に闘い続ける。
が、しかし、彼らは時間という名の伏兵によって窮地に立たされ、究極の選択を迫られてしまうのであった。
テルルとアイシャは『降伏』という選択肢を選ばず、果敢にもドレルに挑む。
そして、城に仕掛けられた特殊な魔法陣の影響で、城内では魔法を行使できないサスハは、城から無尽蔵に湧き出すドレルの魔力兵から村を守る為…そして、仲間の帰りを無事に迎える為、城の入口に残り、一人孤独な戦いに臨んだ。
「──くそっ!キリがねぇ!」
テルルが、珍しく冷静さを欠いている。その姿は、研ぎ澄まされた刃の様な印象を湛える普段の彼からはかけ離れ、まるで、燃え尽きる寸前の蝋燭のような…そんな、淋しげな印象を見る者に与えた。
彼の十八番であり、それと同時に、彼に相克する者を怯えさせた『優雅な舞を想起させる戦闘スタイル』は、いまや全くと言っていいほどその姿を見せない。どこか、死に急いでしまいそうな…ほとんど余裕を感じさせないような…そんな状況に置かれた事で、テルルは言い知れぬ焦燥に駆られ、彼を彼たらしめる特徴は、すっかり影をひそめてしまっていた。そんな彼は、常人には想像出来ない悪魔の様な形相で、並み居るザコ敵を薙ぎ殺していく。テルルの白銀の両刃の剣が煌めく度、敵(下級魔族や魔力兵)は虚しく…何の抵抗も出来ずに骸となり、または、風に散っていった。
攻めている自分たちが恐怖すら感じるほど、事は上手く運んだ。いや、運んでいる。そしてこのまま、全てが順調に運ぶと思っていた。
──そう、思いたかった。
…が、その時。
スピードにおいては、人間軍内でも一、二を争うアイシャが、何故か魔力兵の攻撃を受けてしまった。それがきっかけとなって、彼は群がる魔力兵と下級魔族に、次々と残虐な攻撃を仕掛けられた。
「ぐぅ…っ…あぁあっ!」
悲痛な悲鳴が虚しく響く。その声は、すぐに喧騒に溶け込む事は無く、水上に波紋が広がるように、空間に木霊した。
「大丈夫か!?アイシャっ!」
テルルはすぐさま自分の周囲に居る敵を薙ぎ払い、アイシャの元へと駆け寄った。
…思ったより、出血が酷い。これではもう…助からないだろう。
「俺は…もうダメだ…。情けねぇ…ここで…リタイアとは、な…あぐっ!……自分の事は…自分が1番よくわかる…後は…頼…んだ、ぞ……ぐっ…ゲホッ!…っ………」
「もう喋るな!くそっ…!ちくしょう…!」
テルルにとって、アイシャは唯一、気の許せる仲間だった。辛い時間も…楽しい時間も、全てを共有してきた『本当の仲間』だった。テルルは、その絆をここで失う事になるなんて考えてはいなかったし、想像すらしていなかった。そして、状況を受け入れられない彼は何も考えられなかったし、考えたくもなかった。このまま、戦うことを放棄してしまおうか、と…そんな気にまでなってしまう。(体は脊髄反射の様に動き、並居る敵を蹴散らしているが。)
しかし、事態は急を要した。今、ここで起こっている事象の何もかもがテルルに思考と行動を要求している。このままでは、いずれ数に圧され、テルル達の全滅は紛れもないものとなってしまうだろう。アイシャの事に関して言うなら、冷たいようだが、見捨てるのが得策なのだろう。随一の戦闘力を持つメンバーを最終決戦前に失うのは惜しい。ここから独りで戦う事は、大きな痛手となる。
かといって、ここには敵が溢れ返っていて、テルル一人では負傷したアイシャを到底庇いきれない。それだけではなく、庇っている時間も余裕もない。
「………」【俺は…一体どうすればいいんだ…?】
「先に…進めよ…」
不意に、もう既に虫の息となったアイシャが搾り出すように呟く。
「…っ!そんな事言ったって、全人類は俺一人には荷が重すぎる…。それに、お前が居なくなったら…お前が護った世界に何の価値があるっていうんだ!?」
「いいから…行けよ…。こいつらは…まとめて俺が引き受ける……ムリ、かもしれないが…な……」
まともに強がりすら言えなくなったアイシャには、本人の言葉通り、もうそんな力が残されていない事は火を見るより明らかだった。
しかし、テルルはアイシャのその言葉を聞き入れた。聞き入れるしか、なかった。
「帰ったら…きっと、またミニカーを買ってやるからっ…!一緒に……だから絶対に…死ぬなよ…!」
テルルはそれだけ言うと、立ち上がった。そして、振り返らずに…アイシャの姿を背にして走りだした。
先刻の、テルルのその声が、薄れ、遠退き、朦朧とする意識の中にいる…いや、意識の挟間にいるアイシャに届いたかどうかは、アイシャ本人にしかわからない。
ただ、テルルを見送ったアイシャは、苦笑を浮かべながら、敵の波に呑まれていった。
【サスハの想いに…早く気付いてやれよ、ドンカン野郎…。アイツを幸せにしてやれるのは、きっとお前くらいだぜ……】
──城の最上階。そこには、まともに立っていることすら難しいほど、重々しい空気が満ちていた。
しかし、ここまで来て、今更退く事は出来ない。数多の命の犠牲の上に、自分は立っているのだから。全ての雑念を排除し、テルルは最後の戦いへと赴いた。
「よく来たな…。やはり、残ったのは貴様だけだったか…」
「ドレル…!お前は…お前だけはっ!絶対にぶち殺してやる!」
憤慨するテルルとは対照的に、ドレルは至って冷静だった。落ち着いた口調で、諭すようにテルルに語りかけてくる。
「このまま退かずに一騎打ちを望むのなら、俺はそれでも構わないが…?この俺が、たかが人間ごときに遅れをとるはずがない……」
「お前はそうやって他人を見下す事しかしない…!どうしてそこまで人間を蔑む!?お前の憎悪はただの異常な殺戮衝動だ!」
「憎悪…か。ゴミクズに対して、そのような感情を抱いた事はない…」
「それは違うな…!お前は、人間の持っている未知なる力に怯えているんだ!その、人間の持っている力が恐いから…だからお前は、人間の可能性を必死で否定しているんだ!そうだろう!?」
「…テルル、貴様は人間の可能性と、自分の力を過大評価し過ぎだ。自分の事しか考えていない…そんな奴らに何の可能性がある!?人は夢の果てに、何を手にした!?…それは絶望…だ。人間は過ちを犯しすぎた…。私利私欲に溺れた人間どもは、今こそ粛清されるべきだという事が、なぜ分らないのだ!?それに、貴様は人間の可能性の果てに何を望む?何を求める?何を得ようとする!?仮初の自由か!?泡沫の平和か!?貴様も本当は気付いているのだろう…?人間の愚かしさに、な……」
「人間は愚かじゃない!人間を卑下するのは、お前が臆病だからだ!…お前のくだらないエゴはもう聞き飽きた……」
「人間は、存在している事自体が過ちだ!この人間至上主義的なセカイの全てが間違いなんだよ!貴様が俺に戦いを挑んだ事も、な…!」
「間違いかどうかは…俺が決める!」
──一進一退の戦いは長引いたが、一瞬の隙を突き、テルルはドレルに致命傷を与える事に成功した。
「何故…俺が敗れる…?」
ドレルは既に自由に動けない身で、倒れたままテルルに話し掛けた。
「お前には永遠にわからないだろう…。お前は今から、死ぬんだしな……」
強気に返すテルル。しかし、彼の体ももう限界だった。ドレルの考えがいかに歪んだものか、テルルは彼に思い知らせてやりたかった。だが、それ以上、口からは全く言葉が出なかった。それほどまでに、ドレルとの戦いでテルルは衰弱していたのだ。
「フフフフ…ハハハハハッ……!ただでは死なん。貴様も…道連れだ…。地獄まで付き合ってもらおうか……」
ドレルが呟くと、途端に城が崩れだした。そして、先刻まで荘厳な城を形作っていた物質は、みるまに瓦礫の山となった。
──気が付くと、テルルは空の下に居た。よく覚えていないが、咄嗟に城から飛び降りたらしい。そのせいだろうか、両足が動かない。動かないが、痛みだけは激しく存在し、疼く。
上半身だけを起こしたテルルの隣には、いつの間にか彼に寄り添っていたサスハの姿があった。
二人がともに見上げた空は、限りなく澄み渡った朝焼けの空だった。柔らかくも厳しい陽射しが目に滲みる。それと同時に、微風が心地良く頬を撫で、二人の間を吹き抜けてゆく。
ほんの些細な…当り前な事象。ただ、それを肌に感じるだけで、彼らは生を実感できたに違いない。
「いい風が吹いているな…」
不意に、テルルがそっと呟いた。
「そうね……」
サスハの相槌を聞いて、テルルは急に肩の荷が下りた気がした。
「朝焼けって…こんなに綺麗だったか…?」
「私達は、忘れていたんだと思うわ…。大切な何かを…」
「…綺麗な朝日の前では、俺達人間は汚すぎるのかもしれないな……」
そのテルルの言葉に、サスハは何も返さなかった。
「……テルル……アイシャは……」
サスハの突然の質問に、テルルの表情が曇る。テルルは何も答えず、彼女の純粋で無垢な眼差しから眼を背けてただ俯くだけだった。
テルルのその様子を見て、サスハは全てを悟った。自分は、大切な人を、また一人失った…護り切れなかった、という事を。
テルルと同じように俯いた彼女の頬には一筋、光るものが伝っていたように見えた。本当は声をあげて泣きたいのに、それを必死で堪えているような、そんな切ない表情だ。
「はぁ…………」
サスハが涙声の混じった溜息をついたその時、事件は起こった。
瓦礫の山の下から、突然アイシャが現れたのだ。彼は血塗れだったが、醸し出す雰囲気は何故か元気そのものだった。
やけに元気そうな彼は、口を開くと、おもむろに
「そうだっ!今日はミニカーの発売日だ!僕、車だ〜い好き!」
と叫んだ。
…そこに居たアイシャは、もう以前の『No brakeのアイシャ』ではなくなってしまっていた…。彼は、度重なる負傷とストレスによって、退行現象を起こし、心が幼児となってしまっていたのだ。心が幼児となったアイシャは、鼻歌を歌いながら、行く宛も無くテルルとサスハの前から走り去って行った…。
もう、テルルにはサスハ以外何も残されていない。
「未来は、俺達で創っていけばいい…」
この物語の、テルルの締め括りの台詞に、サスハはこう応えた。
「ええ……」
とだけ。
遠ざかる景色の中、眩しいくらいに明るい朝日が二人だけを照らしていた。
この物語はこれで終わりではない。まだ始まったばかりだ。終わりは始まりにしかすぎないのだから……
FIN
〜 Cast 〜
▼シリーズ構成:ウチ。▼キャラクター原案:俺。▼監督:私。▼設定:僕。▼編集:小生。▼制作担当:某。▼プロデューサー:だから僕です。▼エグゼクティブプロデューサー:稲井葉子/アイリス・E・リグレッタ
〜声の出演〜
▼テルル:勝手に決めて。▼サスハ:左に同じ。▼イゲ:左に同じ。▼アイシャ:左に同じ。▼テツ:左に同じ。▼ドレル:墮櫑惰楼▼謎の小説家:Sさん。