Spearmintとその香り
『Another story』(特別編)
この物語は、『Spearmintとその香り』の登場人物たちが紡ぎ出す、それぞれの過去、現在、及び未来のいずれかに該当する物語である。キャラクターの知られざる一面を垣間見て頂きたい。
〜From eyes of Ono〜
〜暴走AGELESS〜
「――――はっ…はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
今日は、新しい『思想』の授業の先生が赴任する日なんだ。
だから、昨日の夜はどきどきして眠れなかったんだよ。
―――え…?遅刻の言い訳?あちゃ〜、ばれちゃったか。嘘は苦手なんだ、私。嘘をついても、いつもすぐに見透かされちゃう。
だからって…べ、別にいつも遅刻してるわけじゃないからね!?
――あっ!自己紹介を忘れてたね♪私は新那。『尾野 新那』(おの にいな)っていうの。
なーんて、自己紹介をしているうちに、授業中の教室にこっそり侵入しちゃったりしてるんだけど、この後、あたかも最初からいたかのように見せ掛けようとしてる私って、意外と狡猾なのかな?
まぁ、いいや。
とにかく今は、見つからないように、見つからないように………
「…そこ!何をしている!?」
「…っ!?」
げげっ!ば、バレた!?
「ははははははひっ!?す、すみません!私で横断歩道が来る途中でおばあさんに…!」
あああ、もう、テンパっちゃって自分でも何を言ってるんだかわかんないよ…。
クラスのみんなの笑い声と視線がイタい…。
「…お前、名前は?」
「私…ですか?」
「この状況で、お前以外に聞く相手がいるように見えるか…?」
「それもそうですね!あっはっは!」
「あっはっは、じゃ、ない!」
「す、すみません…」
私、なんだか謝ってばっかりだ。別に悪い事なんかしてない…ってこともないかぁ。
「…すまない、名を尋ねる時、自分から名乗らないのは少し無粋だったな…。私は、今日からこのクラスの『思想』を担当する『万位 瑠怜魅』(まんい るれみ)だ。さて、次はお前の名を教えてもらおう。」
「私は『尾野 新那』です!これから、よろしくお願いしますっ!」
「あ、ああ…。それでは、新那。早速一つ注意しておく。もう少し声のボリュームを下げた方がいい。」
「おをうふっ!いきなり思想のお話ですか!?」
「いや、ただ単にうるさいと思っただけだが…?」
「ひ、酷いッ!」
あー、なかなか面白い人だ。それに、ちゃんと私に合わせてくれてる。その辺りが、私には真似できない『教師』としての威厳と風格を感じさせる、なんて、知的な表現を無理して使ってみたり。
…それにしても、キレーな人だなぁ。この人が新しい『思想』の先生なんだ。これから、『思想』の授業が楽しみで眠れそうにないや。別に、これは変なイミじゃないよ?
「さぁ、新那、早く席に着け。」
「は〜い!」
「――それでは、授業を再開する。いいか、人にはそれぞれ、戦うべき場所と時がある。――(中略)――人生とは、選択の積み重ねだ。人は選択無しでは先に進めない。足を止める者は必ず路頭に迷う。かといって、無理に『選ぶ』ことや、闇雲に進むことが正しいことではない。」
「…………………」
「それらは、愚かな行為としか言いようがない。しかし、選択することを恐れるな。確かに、僅かな選択ミスの蓄積が、人を破滅へと追いやる事もある。だが、恐れているだけでは何も変える事はできない。成せばなる。成さねばならぬ、何事も…だ。」
――先生が言い終えると、タイミングよく授業終了の鐘が鳴った。
「よし、今日はここまで。ただし、新那…お前には、宿題を課す。」
「はい?」
「授業に遅れ、なおかつそれをごまかそうとしたことについての反省文を、2000字以上2300字未満で書き上げてくる事。いいな!?」
「はい……」
人生は、甘くない。そう痛感する新那であった。
FIN

この文章は、氷幕が作成しました。