Stagnazione

 「貴方はっ……もう少し自分のことを理解してください…」
 不意に乳首を捻りあげられ、虎徹は声も出せずに足を突っ張らせて身体をのけぞらせるが、それが余計に引っ張られる結果になって痛みを与え、涙を零す。
「ぁあ……イイですよ虎徹さん。ここ…痛いくらいのほうが気持ちいいんですね。中が締まって…すごくイイです。こっちも萎えてない」
 ちらりとバーナビーが視線を向けた先にある虎徹自身は、もうすでに数度放っているのに萎える気配はない。
 嬉しそうに滴を垂らして震えている。
「ほら、虎徹さん。動いてください…煽るだけじゃなくて…僕のことも気持ち良くしてください。ほら」
 またきゅ、と胸の突起を両方合わせて潰される。
 じんじんとした熱が胸から背中を通り抜けて、下半身に繋がる。
「や…痛いっ…。無理…動けない…」
 腰を動かしてみようとするが、もう力の入らない下半身は虎徹のいうことを聞いてもくれない。
 バーナビーに跨ったまま、虎徹はどうしようもできなくてバーナビーに突起を引っ張られながら泣いている。
「嫌じゃないでしょう。中は僕のを美味しそうに咀嚼してきますよ。虎徹さんが動けないなら、このまま気持ちよくさせてもらいますね」
 その言葉通り、バーナビーはお気に入りなのだろう虎徹の胸の突起を弄る。引っ張って、そして爪を立てる。押しつぶし、擦り合わせる。
「やッ……あぁああ…」
 年甲斐もなく泣きながら、虎徹はバーナビーにされるがままにいじられ続ける。
 ひくひくと内壁をうごめかせながら、とうとう身体を支えることもできなくなって、虎徹は前のめりに倒れる。その瞬間に中で咥えていたバーナビーの角度が変わり、予期していたなかったところを押し上げられて精液を再びバーナビーの腹筋に向かって吐き出した。
 ぐったりとバーナビーの胸元に倒れこんで、大きく肩で息をする。
 バーナビーの臭いが鼻孔をくすぐり、虎徹はこんなときにうっとりとしてしまう。
「虎徹さん。まだ、ですよ。僕はまだイけてない」
「ひぅッ…」
 放心していた所を、身体を持ちあげられて虎徹は情けない声を上げる。
 一度虎徹から自身をを引き抜くと、バーナビーは上体を起こしてベッドヘッドに身体を預ける。
 今度は虎徹の身体を包み込むように、背後から刺し入れる。
 しっかりと背後から突き上げながら、またバーナビーは虎徹の胸を弄る。
 もう虎徹からはまともな反応は帰ってこない。酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら、朦朧とした意識の中でも身体だけは快感に反応してバーナビーを締め上げる。
「可愛い…虎徹さん」
 ぼそりと呟くバーナビーの声は虎徹には届いていない。
 背中からしっかりと虎徹を抱きしめ、バーナビーは虎徹を突き上げる。
 数度突き上げると、バーナビーは小さく呻いて虎徹の最奥に精を吐き出す。
 脈打ちながら吐き出せば、虎徹の身体もそれに合わせて痙攣し、すっかり薄くなった精を吐き出していた。
「ああ…意識もないのに、出せるんですね…」
 
 
 
 
 
 虎徹が気づいたとき、ちゃぷん、と水音が響いたていた。
 身体を動かそうとすると、心地よい温度の液体に包まれていることに気づいた。
「気づきましたか、虎徹さん」
 耳元で囁かれ、虎徹はびくりと身体を跳ねさせる。水しぶきがつられて跳ね、虎徹の顔を濡らした。
 立ち上がろうとするが、しっかりと身体を抱えられていて動くことができない。
 あたりを見回せば、バーナビーの家の風呂場で。バスタブの中でバーナビーに抱きしめられていた。
「な、な……」
 虎徹は意味のない声を零して呻く。
「中はちゃんと洗ってありますから、大丈夫だと思いますよ。でも、虎徹さんってば、乳首好きなんですね。もっともっとこれから可愛がっていきますね」
 そろりと撫であげられ、虎徹は背をのけ反らせる。
 さんざんいじり倒された突起は真っ赤に腫れあがっていて、触れられるだけでじんじんとした痛みを伝えてくる。
「バニーっ……!!」
 思わず名前を呼んで虎徹は抗議しようと振り返るが、唇を押し当てられて抗議は封じ込められる。
 軽い触れるだけのキスに、虎徹はつい何も言えなくなってしまう。
「虎徹さん、好きです。一番になれないのは分かっています。でも、それでもいいんです。貴方が一番大切なものの、その次でいい」
 不意に真剣な声で告げられ、ぎゅっと背後から抱き締められる。
 その言葉の重さに、浮上しかけた心がまた深く沈みこむような気がした。
 きっと虎徹はバーナビーを全ての一番にすることはできない。
 それでもいいと言ってくれる。
 辛い思いも、嫌な思いもさせるに違いない。
「虎徹さん、僕は、貴方がほしい。少しでもいい。人と一緒にいられることの温かさを、貴方と分け合いたい」
「バニー…俺は……バニーのことが好きだ。でも、きっと全てを与えることはできない」
「それでも構いません。それでもなんでも、貴方がほしいんです」
 泣きそうな声で告げられ、虎徹はそっと腰にまわされたバーナビーの手に触れる。
 指でそっと手の甲を撫で、くすぐる。
「こんな俺でいいんなら、やるよ」