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3-1 シリコン単結晶での例
本プログラムの計算方法の詳細を実際のプログラムの内容とともに説明していきます。
最も一般的な、シリコン単結晶、<100>方位ウェーハを例にとり考えます。 Fig.8にシリコン単結晶の結晶の構造ののモデルを示します。
このシリコン表面を<110>方向から見たのがFig.9で、結晶に網のように、あたかもたくさんの穴が開いたように見えることがわかります。
この一つ一つの穴がチャンネルで、この方向からイオンを注入した場合、位置によっては、イオンは結晶原子と衝突することなく、このチャンネルに沿って、結晶の奥深くまで、到達することが予想されます。これがチャンネリングと呼ばれる現象です。
本プログラムでは、最もチャンネリングしやすい<110>方向からイオンを入射させたことを想定し、イオンがどのような軌道を取るのかを計算しています。
3-2 結晶原子の3次元座標上での位置
計算に当たり、直交(3次元)座標を想定します。
まず、Fig.9にあるチャンネルの一つに着目します。
Fig.10に、このチャンネル部分を拡大します。
この方向から見た場合、結晶原子はチャンネルを囲む6角形を構成します。(ただし正6角形とはなりません。)
そしてチャンネルを構成する原子のみを抽出した構造をFig.11に示します。
本計算においては、座標軸の原点をこの6角形の中心、Y軸をイオンの入射方向、つまり<110>方向と平行に(Fig.10で見ると、紙面と垂直に)、そしてX軸、Z軸は、深さ方向と垂直面上にとります。
なお、結晶の大きさは、格子定数と呼ばれる結晶の単位格子の大きさで決められますが、シリコンの場合はその長さは5.43Åで、Fig.10に示した部分の長さになります。
Fig.12に、チャンネルを構成する原子のみ抜きだし、原点位置、X軸、Y軸、Z軸を記入した図を示します。
なお、このY軸の方向、<110>方向は、一般的な<100>方位ウェーハ表面と45°をなす角となります。
さて、チャンネリングという現象においては、イオンはFig.12にある、6つの原子 A、B、C、D、E、F、で囲まれた6角形の断面の管の中を進む事になります。ここで、原子A、B、C、の位置は同一のYの値、原子 D、E、F、の位置は同一のYの値を持つことがわかります。
それぞれの原子の位置は、座標上、シリコン結晶の格子定数を5.43Åとすると、下記のようになります。(Fig.12参照)
本プログラムにおいては、原子A、B、Cの座標(x,y,z)の値を"calculation"のシートのセルG7,H7,I7、セルQ7,R7,S7、セルAA7,AB7,AC7 に、原子D、E、Fの値を同シートのセルG10,H10,I0、セルQ10,R10,S10、セルAA10,AB10,AC10 にそれぞれ記載しています。
もし、結晶を構成する原子の位置を変更したい場合には、これらの位置を変更しなければなりません。
以下イオンの深さ方向への進行(イオンの入射方向を上から下方向に進むとしているので)に伴い、Yの値のみが3.84(=1.92Å*2)ずつ減少し、X、Zの値は同じ値をとることになります。
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