口デカ女
(口→くち…)
私がまだビデオ派ではなくて
映画館が好きだった頃
B型の血液に侵略されたお友達と
よく映画を観に行っていた。
本来は1人で行くのが好きなのだが
その子がどーしても一緒に行きたい
と言い張るので
引きずられて行くのだった。
私のお友達はお喋りが多い。
その中で特に際立っているのが彼女だ。
サテンで2時間会話するとしたら
彼女115分。残りは私の分だ。
それに声がド・でかい。
彼女が笑うと
半径1キロ四方の生命が死滅する。
まあ そんなこんなで映画に行くのだ。
その子は感情の起伏も激しい。
悲しい映画 観に行くと。
(来るぞ来るぞ)鼻をすする音から始まり
「う…う…」ってデカイ嗚咽を漏らすのだ。
号泣し始めたらパニックだって思いながらも
何だか笑いがこみ上げてくる。
悲しい映画見て吹きそうになってるのは
私くらいだろう(何だかな)。
笑える映画は周りを死滅させるだけだ。
恐い映画の時が私にとって最悪なのだ。
突然「ギャーッ!」って言って
私に襲いかかる。
映画の100倍は恐い思いをする。
得したような…???。
ポルノ映画でも観に行ったら
何されるかわからない。
(行かないっつーの)。
見終わって外に出ると彼女に試練が
「顔。溶けてるよ」って私。
「わッ!!」とトイレに駆け込む彼女。
厚化粧が流れ落ちてるのだ。
泣いても笑っても涙を流すって
美しい。…。
映画館が嫌いになったのは
この子のせいではない。
これはこれで 楽しかったのだ。
