放旅雁/白居易 漢詩から英詩へ
2021年度の高校3年生の授業では教科横断的な取り組みとして、国語科の先生に漢詩の授業をしてもらい、英語科の課題として A「100語程度の英語(散文)で要約」またはB「漢詩で伝えようとしている内容をもとに10行程度の英詩を作る」のいずれかを書かせた。講座選択者6名中5名までが散文の要約だったが、1名が英詩に挑戦していた。授業中の活動は主に相互添削・相互批評だったが、時間が余ったので、英詩に取り組んだものを黒板で扱って手直しをしたが、完成まであと少しという状態で終わった。相互添削の輪に教師も参加するため、自分の作品を作っておいた。題材は東京大学の2011年度入試で出題された漢詩。右側の英詩は John Pearlson の作。
原詩 | 書き下し | 英詩(JP) |
九江十年冬大雪 江水生氷樹枝折 百鳥無食東西飛 中有旅雁声最飢 雪中啄草氷上宿 翅冷騰空飛動遅 江童持網捕将去 手携入市生売之 我本北人今譴謫 人鳥雖殊同是客 見此客鳥傷客人 贖汝放汝飛入雲 雁雁汝飛向何処 第一莫飛西北去 淮西有賊討未平 百万甲兵久屯聚 官軍賊軍相守老 食尽兵窮将及汝 健児飢餓射汝喫 抜汝翅■為箭羽 |
九江十年冬大いに雪ふり 江水氷を生じ樹枝は折る 百鳥食無くして東西に飛び 中に旅雁有りて声最も飢ゑたり 雪中に草を啄みて氷上に宿り 翅は冷えて空に騰れども飛動すること遅し 江童網を持して捕らへ将ち去り 手に携へて市に入り生きながらにして之を売る 我は本北人にして今は譴謫せらる 人と鳥と殊なると雖も同じく是れ客なり 此の客烏を見るは客人を傷ましむ 汝を贖ひ汝を放ちて飛ぴて雲に入らしむ 雁よ雁よ汝は飛びて何処にか向かふ 第一に飛びて西北に去ること莫かれ 淮西に賊有り討つも未だ平らかならず 百万の甲兵久しく屯聚す 官軍と賊軍と相ひ守りて老れ 食尽き兵窮まりて将に汝に及ばんとす 健児は飢餓して汝を射て喫ひ 汝の翅翔を抜きて箭羽と為さん |
GEESE IN THE SNOW
Searching for food, |
■=令+羽 | 国語科教員の説明の中で、「換韻」によって場面転換をするという点にヒントを得て、第1連を過去時制、第2連を現在時制、第3連を未来時制にまとめてみた。直訳的な詩にはしていないが、メッセージの方向性はだいたいこんな感じではなかろうか。 |