角笛の詩(ホルンのうた) 高校卒業文集

僕が毎日通った部屋
そこにはいつも君がいた
僕がいない時には
君は黙って僕を待っていた


君を僕の胸に抱けば
僕の吐息は君の歌になる
君は僕の思い通りに歌ってくれる
かつては僕に
見向きもしなかった君が


流れる汗をぬぐいながら
乾いた唇を君の口に押しあて
君と僕とは一体になって
同じメロディーを口ずさんだ


風の吹き抜ける廊下でも
君と僕とは歌った
冷たかった君の肌も
歌っているうちに
だんだん温かくなっていた

君の友達に恋したこともあった
そんな時にも君は温かく
僕を迎えてくれたけど
僕は君が好きなのさ
君の歌が

だから
これからも一緒に歌おう
もちろん二人きりじゃあない
君の仲間も僕の仲間も
一緒になって
一つのハーモニーを
一つの音楽を
作っていこう

 

今読み返すと、かなり稚拙で恥ずかしいのだが、高校生の頃は自分の気持ちを素直に表現できず、技巧の中に本心を隠そうとしていた。題名を見ずに詩の内容を見ると、高校生に似つかわしくないエロティシズムを感じてしまうかもしれないが、もちろんこれは擬人法で、私が毎日吹いていたホルンという楽器に対するメッセージである。しかし、この作品は「何だ、擬人法か」と思わせておきながら、同時に投影法も用いており、人間を対象とした恋心も密かに述べている。ホルンは当時想いを寄せていた女の子に重ね合わせた存在であるし、「君の友達」とは楽器でいえばトランペットのことなのだが、実際にもう一人気になる女の子がいて自分の心が揺れていたことを吐露しているのだ。35年も前のことだから、今では笑い飛ばせるが、当時は「誰かに見抜かれたらどうしよう」と臆病になっていた。第3連の「乾いた唇を君の口に押しあて」は最後まで迷った記憶がある。「乾いた唇を重ね合わせ」の方が詩的には美しいと思っていながら、見抜かれにくい表現、見抜かれた時にも恥ずかしくない表現にしようとして中途半端になってしまった。