文:写真:イラスト/まん丸(無断掲載、使用は禁止よ〜)
フリー走行1回目。今年の席はS1、Pブロックの前から2列目。表彰台とフェラーリのピットの真ん前。でもプラットフォームの影になってピットの中がほとんど見えない。フェラーリは去年までエディが向かって右にいたけど、今年はシューマッハが右。かろうじてシューのマシンのあたりがのぞけそうなんだけど、群がるカメラマンの影でやっぱり何も見えない。おまけにエディのいるジャガーのピットにはちっと遠いし、ベルガーのいるウイリアムズに至っては、はーるかかなた。双眼鏡でのぞく。ベルガー発見。いつもの紺のベスト姿。前から思っていたけどこの格好って今時の女子高生みた〜い。エディのヒヨコ頭は目立つ。いい目印。今度はしばらくエディを観察。フリー走行が始まり、せっせと周回を重ねるジョニー。なのにエディはプラットフォームでおしゃべり中。モニターにも背を向けてひたすらおしゃべり中。たぶんマシンのセッティングを変更して、準備が出来るのを待っていたのだと思うけど・・・思いたいけど・・・。やっとエディが腰を上げたとき、すでにフリー走行開始から30分は経過していた・・・。大丈夫?
フリー走行中2回目。フリー走行中に地震が起こった。震度3くらい? 鈴鹿は8回目だけど地震が起こったのは初めて。マシンの走行には特に問題なかったようでそのままフリー走行は続行された。前の席に座っていたイタリア人らしき3人がオロオロしていた。でもそれが大きな地震だったってことは、ホテルにチェック・インしたあとに知った。
新聞書かれていたように、観客は何事なかったようにフリー走行を見続けておりました。
ホテルにチェック・イン。しかし、ホテル側の手違いで、金曜宿泊分の部屋が取れていなかった。「しばらくお待ちください」とドリンクのタダ券をいただいた。ラウンジでお茶しながら返事を待つ。いろいろ、やりくりしてくれて、デラックス・ツインに同じ料金で泊めてくれた。ラッキー! ちなみにこのホテルにはミナルディのスタッフも宿泊していた。
グランドスタンドの中央には関係者が通る階段がある。遠くからだけど確認できたのは、右京、アグリ、ルチアーノ・ブルティ、長坂アナ、サロの奥さん(派手!)、エディ・ジョーダン、デラ・ロサなどなど。日曜日には記念パレードを終えたジョン・サーティースが通り、観客から拍手が送られ、サーティースも手を振ってそれに応えていた。ちょっと暖かくていい光景だった。放送席に近いトイレに行くと今宮さんがいた。実はブランドルともすれ違ったのだけど、カメラ持ってなかったので、写真は撮れなかった。あまりブランドルに気が付いている人はいなかったようだ。
マッツァカーネにペナルティ。 金曜のフリー走行で、マッツァカーネのマシンがエンジンブロー。すぐに止めればいいものをコースを3分の1周ほどしてピットまで戻ってきた。そのあと、コースに撒き散らかされたオイルの乗って何台かがコースアウト。今日の予選のベスト2のタイムを没収されることとなった。たぶん順位的には影響ないだろうけど(失礼)心配なのは107パーセント・ルール。バリチェロは金曜、土曜とコースアウト。どちらもフリー走行だったからいいけど、ひょっとして鈴鹿が苦手?
予選はミカとシューの一騎打ち。もう好きにやって! でも、走るたびにタイムが塗り替えられるので見応えのある予選でした。金曜日はグータラしていたように見えたエディだけど、さすがに鈴鹿は得意なコース。最後の最後でラルフに抜かれたけど7番手は悪くない。鈴鹿って難しいコースなのに、ルーキーのバトン君が速くてビックリ! ウイリアムズはどっちも速かった。
予選のあと、パルクフェルメに戻ったシューマッハはマクラーレンのマシンをじーっと観察。ホント、穴が開くぞ!ってくらい見ていた。シューの背中はいつ見ても恐い。車検。シュー(1位)、クルサード(3位)のマシンがすぐ戻されたのに、ミカ(2位)のマシンがいつまでも寸法をチェックされていた。なんかあったか? まあ、本当にやばかったら、ロン・デニスが吹っ飛んで来るよね。
宿泊した津のホテルの近辺では、ちょうど津まつりのシーズンだった。友達と出かけるとミナルディのスタッフがウロウロしていた。明日は決勝だというのにこんなところで遊んでいていいのだろうか・・・。ミナルディっていったい・・・。しかもホテルのロビーにあるホワイトボードにはミナルディ関係者が書いたと思われるの謎のメモが! なかにはマッツァカーネやジェネの名前も。部屋割り?? まさかね。
さー、決勝。でもその前に楽しみなイベントがいっぱい。
● F1ドライバーズ・パレード
お天気がちょっと気がかり。私が車のオーナーだったら大事なクラシック・オープン・カーを雨で濡らしたくはないよなー。エディ様のお車は、白いジャガー。車は私の席の正面に待機している。ラッキー! エディが乗り込むとさっきまで後方のベンツに腰掛けてポーズをとっていたおねーちゃんが、いつのまにかエディの隣まできて、頬寄せて写真に収まっていた。おねーちゃんが目ざといのか、エディの手が速いのか? さて、エンジンがかかってパレードがスタートする。なのにバリチェロの車のエンジンがどうしてもかからない。あきらめたバリが通りかかったエディ車に飛び乗ろうとしたけど、エディ車はとっとと行ってしまう。別にエディが運転しているわけではないのでわざとじゃないよ。バリはそのあと来たアレジ車に乗っけてもらって、ようやくパレードに加わることができた。オーロラビジョンにエディが映る。どうやら車のオーナーに頼まれてサインをしていた模様。3枚ほどしていたけど、書き終わるたびに、色紙を座席に投げるように放っていたのがエディらしくて笑えた。
●HONDA 200 Grands Prix パレード
往年のホンダ・ドライバーがホンダの代表的なマシンに乗ってパレードする。お目当ては当然ベルガー。そのベルガーがコースに現れる。ホンダのレーシングスーツを腰の辺りまで下げ、左手に懐かしのヘルメット(写真:左)。普段はハゲただの、太っただの、お茶の水博士だのと言いたい放題のまん丸だけど、その姿が目に入ったときは一瞬、息を飲んだ。ベルガーって独特の雰囲気と色気があって、歩いているだけでサマになる。カッコいい〜〜。でも、なんか腹から先に歩いているような気もするぅぅぅ〜。タダでさえ狭いF1マシンにホントに乗れるのかなー。パレードのスタートは逆バンク辺りらしく、ドライバーはワンボックスカーに乗ってそこまで移動する。そのワンボックスカーがこれまた、私の席の正面に待機していて、ベルガー、中島悟、サー・ジャック・ブラバムら私の20mくらい前までやって来た。幸せ〜〜。ドキドキ、ドキドキ。
ワンボックスカーは、彼らが乗り込んだ後もすぐには出発せず、しばらくその場で待機していたので、その間、私はずっとオーストリア国旗を振ったり、双眼鏡で行動をチェック。車の真ん中の列に座ったベルガーはずっと後部座席に座っていた、たぶんサー・ブラバムを話し込んでいました。よくしゃべる男だなー。
で、車はパレードの出発点へ。オーロラビジョンに映ったベルガーがMP4/6に乗り込む。果たしてマシンに無事入ることが出来るのか!? 緊張の一瞬。でも意外とすんなりマシンに収まり「ホッ」と一安心。
マシンはゆっくりとコースを回る。それでも一瞬のことなのでまずはこの目に焼き付けて、次に来たとき写真に撮ろうと思っていたらその次がなかった。たった1周〜〜??? ブー!ブー!
パルクフェルメに戻ったマシンからドライバーが降りる。ドッと報道陣が取り囲む。双眼鏡で姿を確認すると、ベルガーはすでにレーシング・スーツのファスナーをおへそのあたりまで下げていた。まさかそのまま、乗っていた? 腰の辺りにも余分なお肉が確認できる。やっぱ、久しぶりに着るスーツはきつかったのかなぁ〜? 来年だったら絶対着れなかったぞ、あれ。インタビューが済むと、ベルガーはそのままの格好で、ピットに向かって歩き出した。あの姿でウイリアムズのピットに戻るつもりだったのかな〜? でも記念撮影がまだだったので、呼び止められてた。さすがに記念撮影ではファスナーを閉めていた(笑)。考えてみるとよくBMWがこのパレードの参加を許してくれたよね〜。おかげで寿命が伸びるようないいもの見せていただきました。ダンケ、BMW。
ベルガーには今まで2度ほどお目にかかれたけど、いずれも私服姿だった。やっぱベルガーはレーシング・スーツよね! カッコよさが5割増し! 特にマクラーレン・ホンダのスーツが好き! 思えば、私の鈴鹿詣ではは93年からなので、マクラーレン・ホンダのベルガーって初めて見たわけだ。今年も鈴鹿に来れてよかった。
●BMWvsメルセデス・ベンツ
金曜からウイリアムズ・BMWの旗を持っている人が多く、ファンが多いのかと思いきや、実はタダで配られていた。さらに日曜になると、今度はメルセデス・ベンツが例のグレーの旗を無料で配布。BMWの旗が紙製でB4程度の大きさなのに対し、ベンツの旗は布製で大きさも倍くらいあった。ベンツの勝ち! でも配られてもいないのにフェラーリの旗はやはり多い。やっぱフェラーリの勝ち!
●2000年日本GP決勝
決勝スタート。22台がいっせいにアクセルを踏み、アッという間に1コーナーに飛び込んでいく。ミカがシューの前に出た。シューはミカの方に車を寄せていたけど、あんなことしないでまっすぐスタートした方がよかったのでは? アウト側の方がレコードラインなんだしさ〜。1周して22台がグランドスタンド前に戻ってくる。エンジン音で辺りがいっぱいになる。楽しいな〜。
周回を重ねるごとにミカとシューの差が開いていく。ところが、S字の入口でアレジのマシンがエンジン・ブロー。コース上にストップしてセーフティ・カーの登場か!? これでミカとシューの差が詰まるのか!? そんな楽しいこと・・・と期待したが、日本の優秀で勇敢なコース・マーシャルがテキパキとマシンを除去して、何事ともなかったようにレースはそのまま続行された・・・。
エディはスタートで5位までジャンプアップして、ポイントを期待させたが、段々と調子を落としていく。シケインでジャックにパスされる。97年にはここでエディがジャックをパスしていたっけ。シューがエディのすぐ後ろまで来るが、ヘアピンであっさり先を譲る。周回遅れなんだから当然なんだけど、あまりに大ぴらな道のゆずり方に、まだNo.2気質が抜けないのでは?とちょっと心配した。でも、今回はFIAから「チャンピオン争いの邪魔をするな!」って厳しいお達しがでていたんだね。な〜んだ、てっきり、まだ無線で直接シューと話せるのかと思っちゃった〜。確かに関わりたくない。
41周目。ブルツがシケインのコース上でストップ。それを避けてシューが2度目のピット・イン。先にピット・イン終えていたミカはまだ130R。ピットを見て、最終コーナーを見る。ミカはまだ来ない。シューがピット作業を終える。ミカはこない。ようやくミカが最終コーナーを立ち上がったとき、シューはすでにピットレーンの出口だった。シュー、逆転! スタンドから歓声が上がる。
その後のシューは速かった。順調に周回を重ねていく。48周目。フェラーリのピット前を通り過ぎるシューが、小さく左手でガッツポーズをしたように私には見えた。ミカが猛烈に追い上げるけど、もうこれは無理だろう。ファイナル・ラップ。フェラーリのメカニックがピットから飛び出してくる。深紅のフェラーリが最終コーナーを立ち上がる。20世紀最後のチャンピオンが目の前を駆け抜けていった。
●愛のセレブレーション?
ミレニアム・イヤーのチャンピオンはステアリングを叩いて喜びを爆発させた。その姿がお猿のおもちゃのようでちょっと可愛かった。ジャン・トッドは携帯でお話中。きっとルカ社長と話しているのだろう。長髪のメカニックがなぜか頭を丸め始めた。願掛けでもしていたのかな? バリチェロはメカニックと一緒に喜んでいるようであり、一人取り残されているようにも見えた。表彰台のシューをメカニックと共に下から見上げるバリ。もしかして一番目の敗者がハッキネンなのだとしたら、二番目の敗者は同じ性能のマシン(のはず)に乗っていたバリチェロだったのかもしれない。パルクフェルメでエディが真っ先に駆け寄り、ヘルメットをバシバシ叩いてシューマッハを祝福する。結構おいしい役割だ。表彰式は感動的だった、途中までは・・・。ミカとクルサードが退散して、2人きりで残されたシューとジャン・トッド。表彰台の一番高いところで抱き合い、見つめ合って祝福のキスを贈り合う2人の姿にはちょっとっていうか、かなりー鳥肌立っちゃった〜。入っていけない世界だ。
●万歳三唱
1年前から楽しみにしていた3日間は今年も「アッ」と言う間に終わってしまった。あっけないもんだね。名残惜しくてしばらくスタンドでボーと過ごす。5時。メカニックが再びピットに集合する。一人がピット・ウォールに登りスタンドに向かって「万歳」を始める(長野オリンピック以来「万歳」はすっかり有名になってしまったようだ)。スタンドのみんなも一緒に「万歳」をする。もちろん私も。エディが移籍したトタン、シューがチャンプになるってのも心に引っかかるものもあるけど、でもやっぱりこの勝利は素直に祝いたかった。エディだって祝っていたし。だいたい、いい加減、勝たないと「年俸ドロボー」とか「世紀の大ボラ吹き」とか言われかねない状況だった。良かったね、シュー。にしてもフェラーリってこのチャンピオン取るためにいくらかけたんだろー。5時13分。シューマッハが現れる。ピット・ウォールに登り、スタンドに向かってガッツ・ポーズ。振り返るとすでにスタンドは日本のティフォシでいっぱい。普段はうるさいと思うチアフォンもこの日は心地よく思えました。
●最後の主役
この日、最後のイベントの主役はジョニー・ハーバート。ジャガーのピット前で起こるジョニー・コール。それに答えてジョニーが現れ、お立ち台のピット・ウォールに登る。ファンに手を振り、最後のご挨拶をする。ジョニーは「万歳」なのか、「ウェーブ」をうながしているのか、どっちか分からないような不思議な動きもしていた。でもなんかシューマッハのときよりファンの声援が大きかったような気がする。私がF1を見始めたとき、走っていたドライバーがまた一人去っていく。去年はヒルが同じように手を振っていた。来年もだれかが去っていくのかな? おなじみのドライバーが去っていくのはとっても寂しい。けど、無事にそのキャリアを終えられることは、きっときっと幸せなことなんだろう。祝っていいことなんだろう。ありがとう、ジョニー。いつまでも、いつまでもお元気で。
また行くぞ! 鈴鹿!
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