押し絵は、写真や画像で見ると絵画であるかのように見えてしまいますが、実際には立体感を持たせた工芸作品です。下絵を細分化した型紙に綿を乗せて布でくるみ、ふくらみのあるパーツを作成し、図柄にあわせて貼り込んで作品に仕上げます。日本の伝統的なパッチワークとも言われています。
押し絵技法は平安時代(西暦700~1100年頃)、屏風やふすまに施す「貼り絵」に発する技法といわれています。その後ほそぼそと伝承されてきたようですが、宮中女官たちが、絹織物生地などの端切れ和布を使う楽しみとして屏風、雛人形、香箱などを作ることで技法が継承されてきたようです。
日本各地に押し絵が広まったのは、徳川幕府の体制が落ち着き、鎖国のもと、日本独自の文化が生み出されつつあった江戸時代の元禄年間(西暦1700年前後)と言われています。最も一般的な作品としては、いわゆる元禄文化として、京都大阪などの上方の庶民に愛好された人形浄瑠璃・歌舞伎の役者・美人・相撲などを題材にした豪華な押し絵羽子板です。この押し絵羽子板は、日本のお正月の風物詩として現在まで伝承されています。また、地方では京都から伝えられた押し絵技法をもってお雛さま人形、節句飾り等の工芸品が盛んに作られてきました。しかし、昭和時代に入って徐々にすたれ、現在は極く僅かな地域での作家や数少ない愛好家が、手工芸としての技法を継承しています。
幕末から昭和にかけての時代に、天然染料で仕上げた日本独自の風合いを織り成す着物生地のうち、正絹である「縮緬古裂(ちりめんこぎれ)」を主な素材としています。各地の骨董市などで古布として扱われている着物生地の余り布・帯地等の絵柄および色調を、原画にあわせてデザインしています。しかし、時代とともに古布そのものが国外にも流出するなどして消滅しつつあるなか、価格の高騰もあり古布の収集に苦労しています。
① 下絵を作成する。
② 綿を貼った芯地に下絵パーツ図を写し、切り抜いて型紙を作成する。
③ 和布に型紙を乗せのり代をつけて裁断する。
④ 裁断した和布で、接着剤と電気ゴテを使用して型紙をくるみ、パーツに仕上げる。
⑤ 各パーツを下絵デザインにあわせて貼りつける。
一般に見られる押し絵では、目鼻口などは絵筆で手書きされていますが、道庵/越山道子は絵筆の利用は極力抑えて、顔のつくりや手足の指など細部に至るまで押し絵技法で作り込み、より立体感のある作品に仕上げています。画像にカーソルをあててください。
道庵/越山道子は、題材の多くを歌舞伎・文楽・浮世絵にもとめ、日本伝統のしなやかな布遣い・色遣いを作品に反映させ、日本の伝統工芸品として広く海外にも紹介すべく制作活動を続けています。
|
|
||||||||||
|
Copyright c Michiko Koshiyama. All Rights Reserved.