ふ、あぁぁぁぁ〜……。
あ〜、よく寝た〜…。
何で夜ガッツリ寝ても、真昼間の昼寝ってのは気持ちが良いもんかね。
止められねーよ、これ、マジで。
あー…でもこのままじゃ1日家に居たら引き籠りみてーだから、1回くらい外に出とくか。
日光を浴びないないとね。
グッズグズになっから。
「………………………………………………」
ん?
何か…部屋が広くね?
ぁれ?こんなに広かったっけ?
てか、起き上がってるのに、天井高くね?
気のせいには出来ねーくらいに。
何で、どして??
「ワフ」
…あれ、定春もデカくね?
否、標準サイズからして規格外なのは知ってっけど、でも何かいつにも増して…。
成長期?成長期なのか、お前?
つか、これ以上成長されてもマジ、困んだけど!
「…フンフン」
ちょっ!定春君!!
匂い嗅ぐの止めて!!それじゃぁ銀さん臭いみたいじゃん!
ちゃんと風呂入ってっから!!
清潔にしてますから、銀さん!
「ワフ?」
「ミャ?」
…ミャ?
え、何この声。
何、って言おうとしたんだけど。
「ワン!」
「ふぎゃっ?!」
…。
……。
………。
…ちょっと待て。
落ち着こう。
何か変だ。
何かが変だ。
認めたくないが、何か変だ。
えー、まず。これが頭。
…。
……。
………。
何。何か頭の上に、柔らかいもんがあんだけど。
つか。前に何か似たような体験したような…。
…。
……。
………。
あーと。
発声。発声をしてみよう。
んん、咳払い。…あー、あーあー。
「ニャー、ニャーニャー」
「ワン!ワンワン!!」
「に、にゃぁ〜…」
「ワフ?」
ちょっと待て!
何で「あー」って言おうとしてんのに、実際に発せられるのは「ニャー」な訳?
これってアレ?考えたくねーけど、アレ?!
…否。ちょっと待て、俺。
もしかしたらアレだ。
『ネコの鳴き声しか出ない病』かも知れねェ。
「………………………………………」
恐る恐る自分の手を見て。
「………………………………………」
…うん。
儚い夢だった。
人の夢と書いて『儚い』だもんね。
うん。
こんにちわ。懐かしき…肉球。
って事は。
ジっと定春を見る。
その真っ黒のつぶらな瞳には。
「………………………………………」
…汚ェ毛玉。
……嫌々。自分の姿にゲンナリ。
何で?どうして?何でぇ???!!!
前のは猫の墓に小便掛けちまったからだろ?!
今回は何で?!俺、ただ寝てただけだぜ!?
「…ミャッ?!」
もしかして…ホウイチに何かあったとかか?!
「………………………………………」
タっと外に出ようと、玄関まで行って。
…カシカシカシ…
「………………………………………」
…うん。
猫手じゃ開かねェ…。
定春〜…。
「ワフっ」
お…、流石定春。
俺の言わんとしてる事が解るのか?
それともアレか。動物同士、通じるもんでもあんのか?
まっ、何はともあれ開けてくれてサンキューな…
「ワン!」
って、あれ?
あれあれ、定春君。
何で銀さん咥えんの?
え、あ、ちょっ、定春君?!
ちょっと待ってちょっと待ってぇぇぇぇぇ!!!
はし、走んないで!!!!
揺れ、揺れるぅぅぅぅ!!!!!うぇぶっ、揺れ…気持ち悪、気持ち悪い…。
「…ふ、みゃぁぁ〜…」
で、出そう…昼間食ったモンが出そう。
そして内臓的なモンも一緒に出て来そう。
揺れ…ぅぷ、く・口から…な、ナイアガラが…ナイ、アガラ、が…。
「ワフ?!」
「ふみゃ?!!」
あ、ぁ痛ててて…。
な、何だ何だ?どうしたってんだ、一体。
ぇ、あれ…?さ、定春君…??
…。
……。
………えー、定春君…置いてっちゃうの?
こんな姿の銀さん、放置しちゃうの?
お前も大概Sだよな…。
『…何だ、誰かと思ったらギンじゃねェか』
『あぁ?』
『また呪いに掛かっちまったのか、ギン』
『ホウイチ…オメェ、……無事、だったんだな』
『あぁ?何言ってんだ?』
『否……こっちの話だ。気にすんな』
突然定春に放り出されて、呆然としてたら。
ひょっこりホウイチが現れた。
平然としたその様子に。
どうやらホウイチ達に何かあって、この姿になった訳じゃねェんだな。
…ぇ、そうなると何で?
何で俺、また猫の姿になった訳?
『どうしたんだ、ギン。人間に戻ったんじゃなかったのか?』
『そうだよ。さっきまで家で寝てて、起きたらまた、こんな姿になっちまったんだよ』
『また猫の墓にでも小便掛けたんじゃねェだろうな』
『馬鹿言え!二度と、んな恐ろしい真似するかよ』
『じゃぁ何で、……ぁ』
『あ?』
話してる途中で何かに気づいたらしいホウイチがタっと背を向け、走り出す。
そして。
『逃げろ!ギン!!』
『へ?何?どったの、急に。逃げろってどう言ぅ…どわっ?!!』
いきなり逃げろと言われて。
ハ?と思ってたら、身体がふわりと浮いた。
な、何だ?!今度は何だってんだ?!!
「また会ったな。…毛玉」
「…ニャー…」
…あぁ、今日俺、絶対厄日だ。
「あれっきり見ねェと思ってたが、やっぱり歌舞伎町の猫だったんだな、お前」
首の部分掴まれて。
自分の目線上まで俺を持ち上げて、んな事を言う。
何処持ってんだ、テメェェっっ!!
つか!顔近い、顔近いぃぃぃぃ!!!
「…!」
「あぁ?」
不意に感じた、この匂い。
…たい焼きの匂いだ!
匂いのする方に顔を向け、クンクンと鼻を動かす。
それに気づいたのか、土方もそちらに顔を向け。
「あぁ?もしかして…この匂いか」
「ミャーミャー!」
そう言えば、昼寝から覚めて、今日の甘味食ってなかった!
「これって…魚の形してっけど、猫って食うのか?」
「ミャーミャー!!」
「あぁ、わーったよ。…欲しがってるし、まっいっか。……親父、1個くれ」
「あいよ!」
「熱いけど…大丈夫か?」
「ハッハッハッ…!」
早く、早く寄越せ!このマヨラー!!
「ほらよ」
「もぐもぐもぐ!!」
んー!超美味い!!
いつもは2、3口で終わるけど、猫だと良いな!
たい焼きもなんかデカい感じだ!!
「ふみゃ〜……」
は〜…、食った食った。
んじゃーまー、…帰っか。
「おい。待て、コラ」
ひょいっと首根っこを掴まれて。
「これで帰れると思うなよ?」
「…にゃー」
で・す・よ・ね〜…。
てか、猫に何さす気だ!この変態マヨ!!
「んじゃ、屯所に帰るか」
「………………………………………」
ポスっと胸ん所に入れられて。
てか、んなトコに猫…否、俺だけれども!入れんな、馬鹿っ!!くそ、動けねェェェっっ!!!
……そんなこんなでそのまま、屯所に連れてかれて。
土方の部屋で下ろされる。
「…?」
何…?何だってんだ?
「何ビクビクしてんだ?初めて来る訳でもねェだろうが」
否、確かに初めてじゃ………ん?
ぁれ?アイツ、俺って事に気づいてんの?
「前に総悟に連れられて来ただろ?」
「………………………………………」
…あぁ。そっか。
そう言えば、総一郎君に連れられて、ココに来たっけ。
すっかり忘れてたぜ。
ん…?足音?
「副長、差し入れあったんで良かったらどうですかー…って、またその毛玉。どうしたんですか」
ぁ、ジミー君だ。
ヤッホー…てかお前まで言うか!毛玉!!
「あぁ。そこで拾った。…で?何だって?」
「とっつぁんからの差し入れです。饅頭なんですけど…、副長食べます、か?」
「俺が甘いもん好きじゃねェの知ってんだろ。要らねー……って、コイツが食うみてーだ。そこに置いとけ」
「あ、あぁ……はぃ、解りました……って良いのかな、猫に饅頭って」
饅頭!饅頭饅頭〜♪
「ハグハグハグ…」
「本当…銀時に似てんな、お前は。やっぱ、お前の名前はギンだな」
嫌々。だから俺だって。似てるつうか、本人ですから。
…は〜、うん。なかなか美味かった。
満腹満腹。
「ふ、みゃぁぁ〜…」
あぁ、何か満腹んなったら眠くなっちまったな…。
「あぁ?満腹んなったら眠くなっちまったのか?」
「…ぅみゃ…」
「…ほら、こっちに来い」
ぅっさいよ…。
もう放っといてくんないかな…。
「あぁ、もう。しょうがねェな、ほら」
「ふにゃ…」
そのまま土方の言葉をシカトして寝ようとしたら、ひょいっと身体を持ち上げられて。
そっと下ろされる。
…あぁ、何かあったっけぇな。ココ何処だ?
土方の膝の上か…?おいおい、膝枕とか、本当もう勘弁してくれよ。
…でも気持ち良いな、こりゃ。
もう何でも良いや。
「はは、毛並みもアイツそっくり。ふわふわだ…」
「…にゃぁ…」
あぁ、それも気持ち良い…もっと撫でろや、この野郎…。
手がヤニ臭ェのがたまに傷だが…お前が近くに居るって…解るかもな…。
「あったかいな、お前」
「………………………………………」
ったり前だろ、こっちとら、生きてんだから…。
「…寝た、のか?」
「………………………………………」
心地良い眠りの誘いに、俺は購う事なく目を閉じる。
(俺、こんなトコで寝てる場合じゃねーのに…)
(人間に戻る方法、探さなきゃなんねーのに……)
(でも、それより。何でこの姿になった原因、探った方が良いのか………)
(あぁ、でも…この眠気には逆らい難い。…ん、起きてから考えよう。起きてから、起きて、から…………)
・
・
・
・
・
「………………………………………」
パカっと眼が開いて。
見慣れない天井に、ぁれ?ココ何処?と思って。
「…ぅわ、……あぁ、そっか」
起き上がって見れば。
隣に土方の姿。
それであぁ、そう言えばコイツ連れられて屯所のコイツの部屋に来てたんだっけ、と思い出す。
…しっかし、参ったな〜。
今の内に逃げだそうにも、この手じゃ襖、開けらんねェしな。
このままココでコイツに飼われちまう?
嫌々。そんなん嫌だ。これじゃチューも出来ねーし。
ぁ、チューは出来るか。…出来るか?
嫌々、それは問題じゃない。問題はエッチ……じゃなくて!
とにかくコイツが寝てる間に早く…あぁ、でもこの手じゃ襖……
「でもこの手じゃ…、この、手?」
フと自分の手を見ると。
…ぁれ、見慣れた手。肉球もない。
「…あ」
あ、声。ミャァじゃねェ。
…って事は。
「………………………………………」
バババっと自分の頭を触る。
…ねェ。何もねェっ!耳も、尻尾も、肉球も…、普通の…人間 の身体だぁぁぁ!!!
「…ん……んで、お前が…ココに居んだ……?」
「あぁ、ハヨ。土方君」
「…ギンは?」
「は?」
「ぁ、否。……猫、は?居ただろ?何処行った?このっくらいの、毛玉みてェな猫だ」
「…毛玉は余計だ」
「あ?」
「あぁ。んでもねェ。…見てねェよ」
「っかしいなぁ……またどっか行っちまったのか」
納得いかないらしい土方は、部屋を見渡してから、襖を開け、庭を見回している。
居ねェよ。つか、その猫の正体俺だから。
「チっ、また逃しちまったか…。…もしかして、テメェが来た時に逃がしちまったんじゃねェだろうな」
「してねェよ。つか、んで、んなに執着してんだよ、テメーは。たかだか、猫だろ」
「たかが猫だけど…、そうじゃねェんだょ……」
「あぁ?」
「んでもねェよ。…チっ。てか、何でテメーがココに居んだよ」
「ムっ。…テメーが連れて来たんだろーが」
「はぁ?俺が?お前を?」
「んでもねーよ。…暇してて、通り掛かったから、暇潰しに寄ってやっただけだよ」
「本当は淋しかったんじゃねーのか?…そう言えば、最近忙しくて会いに行ってやれなかったもんなぁ」
「…ニヤニヤすんな。気持ち悪い」
「照れんな照れんな」
「おい、マジでちげーかんな。本当に暇潰しだかんな。じゃなきゃ、こんな男クセぇトコ来ねーつーの」
「悪かったな。男所帯なんだから仕方ねーだろ。…ったく、本当に暇潰しかよ」
「だからそうだつってんだろ」
「ったく、可愛くねーな。もうちょっと張り合いのある事言えよな」
「あぁ?何よ、張り合いって」
「俺が仕事頑張れる、張り合いのある言葉だよ」
「馬鹿か。テメーが仕事バリバリ出来るって、世の中に取ってワリー事だろーが」
「……あぁ。そう言われてみれば確かに」
俺の言葉に、真顔で頷く土方に。
俺は何だか可笑しくなって。
「はは。仕事の詰め過ぎで頭イかれたんじゃねーの?土方君」
「……かもな」
「…何か妙に素直で気持ちワリー」
「放っとけ。…パフェでも奢ってやるから、それ食ったら帰れ」
「マジで?何か知んねーけど、ラッキー♪」
「…来週の休みに、万事屋 行くからな。覚悟しとけ」
「あぁ?覚悟って……何の?」
急に上機嫌になった土方と、吐かれた言葉に訝しげに問えば。
襖を開け、とっとと土方の部屋を後にしようとしていた俺にスっと近寄り。
耳元で。
「…俺に。滅茶苦茶可愛がられる、覚悟」
「…っっ!!!」
まるで情事中にでも囁くような、低い声で言われた言葉。
ゾク…と走ったそれと、頬に集まる熱を振り払うかのように。
「バッ、テメ…な、何…っっ!!」
「ほら、さっさと行くぞ」
「……のやろ」
近寄った土方を振り払う仕草をすれば。
それよりも先に土方は俺から離れて。
さっさと部屋を出、屯所を出るため、廊下を歩いてく。
あぁ、その背中に思いっきりドロップ・キックをブチかましてぇ。
「…来週、また猫になんねェかな」
猫んなって。
またコイツの部屋に来て、好きなだけ荒らし回りてぇ…。
・END・
2011/04/18UP