「邪魔するぜー」
ガラリと万事屋の玄関を開ける。
「…ん?」
いつもなら、そう声を掛けると、誰かしら返事をし、玄関に来ると言うのに。
今日は誰も迎えに来ない。
土方は首を傾げながら、靴を脱ぎ。
「おい、留守か…?玄関開けっ放しにして、不用心だな…」
眉をしかめながら、そう悪態を尽いていると。
「あー……留守、ではねーみてーだけどよぉ…」
リビングに続く戸を開ければ。
そこに、住人の姿があった。
「不用心な事にゃぁ変わりねーなぁ…」
しかしその住人は。
ソファーに横になり、くぅくぅと寝息を立てている。
土方は大股でその横になっている住人の傍まで歩み寄る。
「ったく。幾ら盗まれるモンがねーとは言え、危ねーだろうが」
気持ち良さそうに寝る、家の住人、銀時の顔を見る。
「気持ち良さそうに寝やがって…」
本人が嫌う、けれど土方は触り心地の良い、お気に入りの髪を撫でる。
本人には決して言えない。
言った所でからかわれているか、嫌味かどちらかに受け取るだろうから。
「…ん…」
銀時が微かに声を上げ、それでも起きる気配はない。
「…………………………………………」
髪に触れていた指を、そのまま頬へと移す。
糖分過多の割に、サラリと柔らかな頬。
髪もそうだが、元々色素が薄いのか。
白い頬は、とても滑らかで。
本当に土方より年上なのだろうかと思いたくなる。
「…………………………………………」
微かに開いた唇に、視線が釘づけになる。
何度となく、重なったそれ。
ふと吸い寄せられるように、近づき、自身の唇と合わせる。
「…ん…」
チュっとリップノイズを響かせて、離れる。
しかし銀時は起きる気配もなく。
土方は続けて口付けを続け、微かに開いた唇に舌を忍ばせる。
そっと歯列を撫で、銀時の舌と絡ませると。
「…………………………………………」
「…………………………………………」
微かに意思を持ち始めた銀時の舌に、ゆっくりと離れれば。
「…ケーサツが寝込み襲うか、おい」
「テメーが俺の目の前で無防備に寝てんのが悪いんだろーが」
「…ぁんなー。オメーは誰かが無防備に寝てたらチューするんか。ベロチューするんか」
「するか。テメーだからすんだろーが」
「…………………………………………」
「ぁん?」
土方の言葉に、銀時は口を噤み、チョイチョイっと指を動かす。
それに土方は首を傾げる。
「何だよ?」
「鈍いなー。ちょっとこっち来いつってんだよ」
「来いつったって、もうすでに近くに居んだろーが」
「そうだけど。…もうちょっと顔、こっちに寄せろつってんの」
「あぁ?んだよ」
…チュっ…
「…………………………………………」
「あー…もう結構良い時間だな。飯の支度すっか」
土方が顔を寄せると。
触れるだけのキスをして。
銀時は時計を見て、ソファーから起き上がる。
「お、おい…!」
「あー、カレーで良いか。材料もあるしな」
「おい!何だってんだよ、今の」
「うっせーなー。聞くなよ。お返しとお帰りのチューだ。文句あっか、この野郎」
それだけを言い、銀時は台所へと消える。
「…あのまま喰っときゃ良かった」
「そしたら夕飯抜きだったに決まってんだろー」
「…チっ、地獄耳」
「聞こえてるつーの」
・END・
2011/04/10UP