「山崎、これでラストだ」
「はい。…じゃぁ、確かに」
「っし、これで今日の仕事は終いだな」
コキっと肩を回しながら、副長が溜め息と共にそんな言葉を零す。
「お疲れ様でした」
「あぁ。…どうも書類整理は肩が凝ってしょうがねェ」
そんな言葉に俺は苦笑を洩らす。
どうにも道場上がりの俺達は。
専ら事務処理と言うのが苦手で。
そんな連中の集まりに、副長は文句を言いつつも、自ら事務処理をやってくれる。
だから。今こうして口にしているのは、愚痴と言う名の建前に近いのだ。
「あぁ、そうだ、山崎」
「はぃ?」
「俺ぁ明日休日 だから。明日の事、頼むな」
「え、あぁ、はい」
副長が、自らきちんと休日を取るなんて珍しい。
いつもは「休んでる暇なんてねェ」って休みなんて、突っぱねるのに…。
「〜♪」
は、鼻歌まで…。
「…………………………………」
「〜♪」
「ふ、副長…?」
「ん?何だよ」
じょ、上機嫌だ…。
な、何で?明日休日 だから??
え、でも今まで休日なんて欲しがったりした事ないのに?
てか、仕事の鬼の副長が?
「…おい。呼び掛けといてだんまりかよ」
「あ、いえ!すいません!え、えっと…これからお出掛け、ですか?」
隊服を脱いで、着物に着替え始めた副長にそう声を掛ける。
すると副長は…。
「…あぁ。……ちょっと飲みに、な」
怪しいぃぃぃぃぃぃ!!!!
こんな楽しそうつうか、嬉しそうな副長見た事ないんスけどぉぉぉぉぉ!!!!
女か?!女が出来たのかぁぁぁぁぁ?!!!!
「じゃぁ、留守の間、宜しく頼むな」
「は、はい…」
つか、すっげー気になるんですけど!!
相手、すンげー気になるんですけどぉぉぉぉ!!!!!
「…………………………………」
…嫌々、ね。
ほら、俺って隠密隊ですから。
調べるのが仕事ですから。
「ぁれ、飲み屋に行くんじゃ…?」
と言う訳で、副長の後をつける訳ですが(何故か敬語)
てっきり行きつけの飲み屋でも行くのかと思ったけど。
意外にも商店街方向に来たな…。
…ん?
立ち止まったぞ?
んん?
ケーキ屋?
ぁれ、でも副長甘いもの好きだったっけ?
あ、入ってった…ハっ!
その意中の人への手土産?!!
やっぱ逢引きなんですね、副長〜!!!
「意外にもそこら辺はきっちり手土産持ってくんスね…」
あ、出て来た!
ぅわ〜、ケーキ見て優しげに微笑んじゃってるよ!
あんな副長、見た事ないよ!!
あ!歩き出した!!
いよいよその人の元に行くんですね〜、副長!
何処の店?!何処の家?!!
「…………………………………」
…って。
「…万事屋?」
え、何で万事屋?
てか、何で万事屋?
「あ、万事屋の旦那が出て来た」
…。
……。
………。
…………ぁれ?
俺の見間違え?
何か穏やかな雰囲気?
てか、さり気に良い雰囲気?
そもそも、副長と万事屋の旦那って仲良かったっけ?
俺が見る限り、寄ると触ると喧嘩してた気がしてたような…?
「あ。ケーキ、渡した。…万事屋の旦那への土産って事……?」
なーんだ。意中の人への貢物じゃないのか。
…でも、ケーキの入った箱を見ながら浮かべた、あの笑みは。
「……ぁ」
……ぁの、顔だ。
え、何で今その顔?
何?その2人の周りを取り囲むような、甘い雰囲気。
ちょっ、ちょっと待って。
整理すると。
えーっと。
1.嬉しそうに外出してった副長
2.嬉しそうにケーキを購入した副長
3.そしてそのケーキを、これまた嬉しそうに万事屋の旦那に渡した副長
4.そのケーキを嬉しそうに受け取った万事屋の旦那…
って糖分大好きな旦那だから嬉しそうに受け取るのは当然か。
「飲み屋、行くか?」
「うぅ〜ん、行っても良いけど。…一応、食いもんと酒、用意してるけど」
「え、マジか」
「…まぁ、何だ。仕事でお疲れだろう副長さんに、ささやかなお疲れ様だ」
「そりゃ特殊なこった。…あんがとな」
「さ、酒は安もんのだかんな。文句言うなよ!」
「はっ、酒なんか飲めりゃぁ良い。テメーの手作り料理がありゃぁ満足だ」
「…な〜に言ってんだか」
…何、副長。
何蕩けきった顔してんスかぁぁぁ!!!!
やっぱそうなのか、やっぱそうなのかぁぁぁぁぁ!!!!
「つーか、いつまで玄関先なんだよ」
「そうだな。んじゃ、入れ」
「おぅ。…そう言えば眼鏡の坊主とチャイナは?」
「ちゃーんと新八ん家に泊らせてるっての。もー土方君のス・ケ・ベ」
それってどう言う意味ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!
神楽ちゃんを新八君家にって、スケベって何?!スケベって!!
「…銀時」
「…んっ…」
ちょっとぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!
そう言う事は家ん中入ってからやれよぉぉぉぉぉぉ!!!!!
てかアンタ、万事屋の旦那の事、名前で呼んでんですかぁぁ??!!!!
「…隠密なんか、するんじゃなかった」
ピシャンっとしまった万事屋の玄関を眺めながら、ポツリ。
何だか、副長の、知ってはいけない秘密を知ってしまったようだ。
つけてたなんてバレたら、俺に明日は来ないぞ。
……帰ろう。
見なかった事にして帰ろう。帰って寝て、全てを忘れよう。
「…ん?」
踵を返そうとした、その時。
「…………………………………」
「…………………………………」
旦那ぁぁぁぁぁ!!!!!
アンタいつの間に戻って来てたんスかぁぁ!!!!
つうか目ぇ合った!!!思いっくそ目ぇ合ったぁぁぁぁぁ!!!!
終わった!終わったよ、俺の人生!!!!!!!
「(シーっ)」
「…………………………………」
唇に指を当てて。
旦那はウィンクをしながら。
また、万事屋の中へと入って行った。
「…ハァ〜、旦那には敵わねェな」
取り敢えず。
副長が万事屋の旦那にオチたのが何となく解った気がする。
「…うーん」
……もうちょっと見守ってみようかな、なんて。
そんな事を考えて、万事屋を見上げると。
「て、ちょっとぉぉぉぉ!!!電気消えてるんですけどぉぉぉぉ!!!!!!!」
・END・
2011/03/28UP