(最悪だ…)
猫の呪いだか何だか知らねーが、よりにもよって猫。
否、別に猫が嫌いな訳じゃねーけど。
けど、よりにもよって猫。
つうか…。
「………………………………………」
水溜りに移る、猫の姿の自分を見る。
…毛玉。
何度見ても毛玉だな、毛玉。
それもアレだ。
服とかに出来る、汚ェ毛玉だ。
「………………………………………」
猫になってまで、付きまとうか、俺の天パ。
猫にだけはなりたくねェつってる先からこれって、俺の人生どんけミラクルなんだよ。
ミラクルつうか、呪いだよ。猫の呪い。
まぁ、それで猫の姿になっちまってるんだけど。
あ、ダメだ。俺今かなりテンパってる。天パなだけに。
………上手くねェっての。
グゥゥゥゥ…。
「………………………………………」
猫んなっても腹は減るってか…。
つっても、飯も何も。
俺今肉球以外何も持ってねェっての。
…これ、食えんのかな。
……ぁ、何かすっげェ香ばしい匂いすっけど、食えねェよな、食えねェよ。
つか、痛いつうの。
赤足のゼフじゃねェんだから、テメェの足なんか食えっかよ。
歌舞伎町に行っちまったら、またタマの危機だしなぁ…。
タマ(猫)だけにタマの危機なんつってな。
………面白くもねェっての。
グゥゥゥゥゥ……。
あぁ、腹減ったぁ…。
「………………………………………」
空を見上げて。
俺はタっと走り出す。
歌舞伎町は今、危険だ。
猫と言う猫、全てを去勢しようとしている。
さっきだって命からがら街を出て来たばっかだ。
それに早く呪いを解かなきゃ、俺、一生猫のまんまだし。
…でも。
それでも。
腹は減るし、一緒に猫になった(一名はゴリラんなってたけど)馬鹿は馬鹿過ぎて、一緒に居るとイライラするし。
…ちょっと試したくなっただけだ。
どーせ気づかねーだろうけど。
絶対気づく訳ねーけど。
それでも、ほら、『物は試し』って奴?
試してみる価値はあると思って。
俺は危険だと解りながら、歌舞伎町へと戻った。
結構長い事、歌舞伎町に居るが。
こんなビクビクドキドキ、歌舞伎町の街を歩いたのは初めてだった。
知ってる限りの裏道、天井、全てを使って、俺は『そこ』へ辿り着いた。
「……………………………………………」
来てみたのは良いんだが。
…気づかねーよなー。
つか、気づく訳ねーよ。
だって猫だよ?猫になっちゃったんだよ?
どう考えたら猫になると思う?
俺だって夢にも思わなかったもん。
…自分が猫になるなんて。
「…………………………………………」
…アホらしい。
戻ろ。
んで考えよう。
この呪いを解く方法。
つか、俺、何やってんだよ。
『物は試し』って。
これで気づいちゃったら、逆に怖くね?
感動通り越して、怖くなっちゃうっての。
アホらしい。
「…毛玉が居る」
「!!」
しまったぁぁぁぁ!!!!!!!!
「あ、猫。……チチチ、お〜い、こっちおいで〜」
「…………………………………………」
「チチチ、こっちおいで〜」
「…………………………………………」
……ねぇ、ジミー、何してんの?
何してんの、ねぇねぇ。
ガシ。
「?!」
「…何やってんでぃ、山崎」
「あ、沖田隊長。ゃ、見ない猫なんで、つい」
「………これ、猫か?」
「猫、でしょ?」
「毛玉の間違いじゃねェのか」
「…………………………………………」
信じらんねェ。
よりにもよって捕まるか。
「シャァァァァァァァァ!!!」
「あ、毛玉が鳴いた」
毛玉じゃねェェェェっっ!!!!!!!!!!
自分でもそう思ったけど!人に言われると、何か腹立つ!!
「ん〜?」
な、何だよ、人、つうか猫だけど、ジロジロ見るんじゃねェっっ!!!
「…なぁ、山崎」
「?何ですか」
「似てると思わねェか、…コレ」
「?何にですか」
「この魚の死んだみてェな目、クルクルの毛。どっかで見た事ねェかぃ?」
「あ〜、万事屋の旦那ですか?…ん〜、まぁ言われてみれば確かに…」
「だろぅ?…こりゃぁ良いネタ見つけたぃ。……土方のアホに見せて来ようとっ」
「え?あ、ちょっ、沖田隊長?!」
れーんこーって、…おい、ちょっと待て待て待て。
俺は戻ろうと思ったんだよ!
何で連れてかれてんだよぉぉぉぉぉ!!
「ひ〜じかたさ〜ん」
「ぁん?んだよ、総悟。気持ち悪い声出しやが……」
「これなぁ〜んだ」
「…んだ、そのデケェ毛玉」
「…………………………………………」
…あ〜、そうだよな。
お前はそう言う奴だよな。
期待してなかったよ?
べっつにテメーが気づくとは、銀さん、これっぽっちも期待なんかしてなかったもんね〜…。
てか、沖田君。さっきから何処持ってんの?
確かにね、そこ持たれても痛くはねェんだけど、何か屈辱的なんですけど。
「違いますぜ。よく見て下せぇ」
「ん〜?…もしかしてコレ。猫、か?」
「シャァァァァッッ!!」
「あてっ!んだ、コイツ!爪立てやがった!!」
「あらら、嫌われたもんですねぃ」
「ケっ、こんな汚ェ猫、こっちから願い下げだよ。どっから迷い込んで来たんだよ。捨てとけ」
「シャァァァァァっっ!!」
おい!言うに事欠いて、捨てろたぁどう言う了見だ!!
仮にも、猫になっちまった恋人に向かって、何つう言い草だ!!
このマヨ中毒のニコチン野郎がぁぁ!!
「え、捨てちまって良いんですかぃ?」
「あ?んだよ、もしかして飼う気か?言っとくが、面倒はテメーで見ろよ。つか、去勢ちゃんとされてんだろーな」
あ、馬鹿、何処見てんだよ、このスケベマヨ!!!
見た事あんだろうがぁぁ!!
つか、沖田君の前で何してくれてんだ、この野郎!!
「アテ!さっきから何なんだよ、このクソ猫!!」
「シャァァァァァっっ!!!」
「おぉ、見事な猫キックですねぃ。なかなか見込みありやすぜ、コイツ」
テメーが変なトコ見ようとすっからだろうが、このスケベ!変態!!
どんな羞恥プレイだっつうんだ!!!
「土方さんなら、喜んで飼ってくれると思ったんですがね」
「?はぁ?何意味解んねェ事言ってんだ。確かに猫は嫌いじゃねェけど…」
「嫌々、そうじゃなくてね。…コイツ、誰かに似てると思いやせんか?」
「?誰に」
「ほらほら、よ〜く見て下せぇ」
「…………………………………………」
「…………………………………………」
…ちょっ、俺達何してんの?
片や、首根っこ捕まれて。
片や、猫ジっと見て。
「…おい」
「はい?」
「もしかして、…否、もしかしなくてもだが。……この毛玉。銀時に似てるとでも言い出すんじゃねェだろうな」
おい、コラ。人、…猫だけれども。指差すな、指を。
「似てやせんか?この魚の死んだような目と良い、毛玉具合と良い」
テメー、沖田!!毛玉具合とは何だ!毛玉具合とは!!!
「あのな、総悟!幾らアイツが汚い天パだとしても、ここまで酷くねェだろうが!否、そりゃアイツの天パもヒデェけど」
土方、この野郎ぉぉぉぉぉ!!!
決めた!ぜってェ人間に戻って、テメェぶっ飛ばす!!!
原型留めねェくれぇ、ブン殴ってやっからな、覚えてろよ、この野郎ぉぉぉぉ!!!!
「な〜んだ。もっと反応すると思って連れて来たのに。…まぁ、旦那が居るのに、旦那似の猫になんか現抜かさねェかぃ。つまんね〜」
「あ、おいコラ、総悟!この毛玉どーすんだよ!!」
「土方さんがどうにかして下せぇ。任せやしたよ」
「総悟!!〜っっ、飽きたらポイって、子供か、アイツは!!」
ポイっと俺を放ると、沖田はさっさと部屋を出る。
放り出された俺は、シュタっと見事な着地をして…っておい!
俺、猫とのシンクロ率上がってねェか?
ヤバくねェか、ヤバくねェかぁぁぁぁ!!!!
「…ったく。おい、大丈夫か?」
「…………………………………………」
…ヤバい。
早く戻って何とかしねェと。
マジでこれ、猫化しちまうぞ。
今後猫として生きてかなきゃいけねェとか、マジ勘弁してくれェェェ!!
グゥゥゥゥゥゥ。
「…………………………………………」
「…プっ、くっくっく、何だ、腹減ってんのか?猫も腹鳴るんだな」
「…………………………………ニャア」
「おしおし。残りモンになっちまうけど、何か持って来てやるから、大人しくしてろよ」
土方はそう言って、俺を一撫でして部屋を出てく。
な、情けねェ…。
「…………………………………………」
…土方が持って来た猫まんまを食ってたら。
「しっかし、まぁ総悟の言葉間に受ける訳じゃねェけど」
「…………………………………………」
ジっと俺を見てる土方が、一言。
「まぁ、確かに似てるわな。この毛玉具合と良い。勝手気ままさもな」
…そりゃぁ似てるつうか。
俺だし。
「美味ェか?」
「……………………にゃぁ……………………」
「…そっか。そりゃ良かったな」
…くそ、そこで笑うか、この野郎。
恋人がひでェ目に遭ってるつうのに。
つか、いつもこんな優しくねェじゃねェか。
…別に拗ねてねェけどな!
「お、触り心地も似てんなぁ。フワフワしてんな」
「…………………………………………」
撫でんな触んな、ヤニ臭ェんだよ。
…くそ。
「お、咽喉鳴った。…気持ち良いか?」
「ゴロゴロ」
「ココか?」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ」
…はっ!
「お、何だよ。もう良いのか?」
「…………………………………………」
やっべーやっべー。
これ以上、猫とのシンクロ率上げてどうするってんだよ。
つうか、このテクニシャンめ。
オメーが猫とのシンクロ率上げさせてどーすんだよ。
「………ニャァ」
「あ?んだよ、出てェのか?腹膨れたら帰るなんて、ますますアイツみてェだな」
あぁ?何が言いてェんだよ。
「…なぁ、お前野良だろ?誰も好んでこんな毛玉、飼おうとはしねェだろうからな」
うっさいよ!
つか、俺猫じゃねェし!!
「もうちょっと居ろよ、な?」
「…………………………………………」
嫌だよ。
戻って、さっさと人間に戻んなきゃなんねェんだって。
オメーだって仕事あんだろーが。
「あ、顔背けやがった。何だよ、嫌だってのか。…ったく、連れねートコまでソックリだぜ。決めた、お前の名前、ギンな」
「…………………………………………」
おい、何勝手に名前付けてんの?
しかもホウイチが呼んだ名と一緒だし。
何?お前は何をしたいの?
てかいい加減離してくれませんか〜?
「俺んトコ来い。…可愛がってやるから」
「…………………………………………」
ちょっと何言っちゃってんのぉぉぉぉ?!!
オメーが言うと怖いんだよ!
違う意味に聞こえちゃうんだよぉぉぉ!!
「なぁんてな。…アイツにも、んな事言えりゃぁ良いんだけどな」
「…………………………………………」
「帰るアイツに、…な〜んも言えやしねェ」
「…………………………………………」
「…そう言や、最近会ってねェな。まぁ、アイツの事だから殺しても死にゃしねェだろうけど。そろそろ愛想尽かされなきゃ良いけどな」
「…………………………………………」
…つか。
猫に何言ってんの?
何勝手にシリアスモードに突入してんだよ!
馬鹿か!
馬鹿だね!!
本人と知らずに、恥ずかしい告白しちゃって、プ〜、恥ずかし!
「…………………………にゃぁ」
「慰めてくれんのか?」
…まぁ、この一件終わったら、会いに来てやらねェ事もねェよ。
…愛想尽かされなきゃだと?
本当、オメー馬鹿だよな。
俺と知らずに、恥ずかしい告白しちまうし。
あ〜、本当馬鹿。
「…ほれ、もう行け。今度は捕まんなよ。ギン」
「…………………………………………」
ぜってェ、…今度は人間の姿で来てやっから。
アホな事考えてねーで、仕事に励め。
「じゃぁな」
「…………………………ニャァ」
猫んなって。
最悪だと思ってたけど。
…ちょっとだけ。
ホントにちょっとだけ、良かったと思う。
普段は聞けねー、コイツのなっさけない本音を聞き出せた。
ムカつく事もいっぱい言われたので。
人間に戻ったら、取り合えずド突きはするが。
まぁ、最初は。
何も言わず抱き締めてやろうと思い。
俺はそれをする為の人間の身体を取り戻すと。
神社へと急いだ。
「おい、そこに猫居るぞ!!」
「!!!」
・END・
2009/9/8UP