「なぁ、土方」
「あぁ?」
「……好き?」
「は?何が」
「―――――……………」
「………は?何、聞こえねー」
平日。
と言っても、休日平日関係なく仕事をする土方。
そんな土方に、銀時は屯所に遊びに来て。
目の前で仕事をする土方を眺める。
そんな時々。
ふと、銀時から漏らされた一言。
カリカリと書類に何やら書き留めていた土方は、顔を上げ銀時を見る。
「何つったんだよ?聞こえねー」
「聞こえなかったら、別に良い」
そう言って、銀時は頬杖をついたまま、開け放たれた襖から庭を眺めてた。
「んだよ、気になるじゃねェか。何つったんだよ、この野郎」
「だから下らねェ事だって。…ほら、手ェ止まってんぞ」
「………………………………」
ほらほら、と銀時は止まっている土方を促す。
しかし土方はジっと銀時を見て居て。
一向に筆を動かす気配がない。
「…どーも俺が居ると気が散るみてェだな。じゃぁ、俺は帰ります」
スっと立ち上がった銀時に、土方は。
「待て」
「んぁ?」
ガシっと向かい側から手首を掴む。
「こ、これはもしかして…すっげェ重大な場面なのか?」
「あ?んだよ、突然」
「お前の方が突然だろうが!…つうか。んな面してる奴、そのまま帰せるか」
「そんな面って、いつもの面ですけど?」
「…とにかく座れ」
「……………………………………」
土方に言われ、銀時は瞳を土方に移し、そして庭をもう一度見てから、上げていた腰をまた座らせた。
「そ、その…何だ。最近忙しくて、その…万事屋の方に行けなくて悪かったよ。怒ってるのか?」
「別に…怒ってもねーし、俺の方がどーせ暇だし」
「じゃぁ…その、デート…に、行けなくて……」
「俺としては、甘味食えりゃぁ良いよ。…ココはタダで甘味出してくれっし」
「………………………………」
「………………………………」
「…銀時」
「はいよ」
「……何が不満だ?」
「特に」
「…………………………………」
「…………………………………」
きっぱりと言い放つ銀時に、土方は深い溜息を吐いて。
「じゃぁ…どうしたってんだよ…」
「だから…別に何でもねェつってんだろうが」
フイっと、顔を逸らした銀時に。
はぁ、と土方は溜息を吐いて。
「嘘吐け。お前は嘘吐く時、顔逸らすだろうが。…言いたい事があるならはっきり言えよ。言わなきゃ解んねェ」
「…………………………」
黙ってしまった銀時に、土方は視線を逸らさず、銀時の横顔をジっと見つける。
沈黙の時間が続く。
「…だ、から思ったんだよ!」
「あぁ?何がだよ」
その沈黙に耐えられなくなって。
銀時が叫ぶように呟く。
「だから…思ったんだって」
「だから、何をだ」
「…………………………好き、なのかなぁって」
「?何を」
「…俺、……お前」
「は?」
スっと出された指。
それは銀時を指して、次に土方を指した。
「ぇ〜っと…意味が解んねェんだけど?」
「だ、だから!お、お前が、その…好き、なの、かな…って」
「何を?」
「………………………………スイマセン、カエッテモイイデスカ?」
「んで、片言なんだよ!」
「だ、だから…!に、鈍いな、お前はっ…!!」
「??」
(好き?……好き)
『…俺、……お前』
脳裏に過ぎった、先程の銀時の言葉。
「ん?ぁれ?土方君?」
スっと、口に銜えていた煙草を灰皿に押し付け。
土方は向かいに座っていた銀時の傍に近寄る。
「土方君?…んっ」
グイっと銀時の顎を捕らえると、そのまま口付ける。
「ん、…んっ…ん!」
「…馬鹿。好きに決まってんだろ」
「プハっ!…っ、おまっ…きゅ、急過ぎんだよ!!」
「何だ?許可取っといた方が良かったか?」
クックックと笑う土方に、銀時は悔し顔。
「そ、それに俺が聞きたかったのは、それじゃねェし…!!」
「あぁ?何だよ?」
銀時から離れて。
また土方は元居た場所に座る。
そして煙草に火を着け、また筆を取る。
「だ、から…」
「何だよ。はっきりきっぱり言えよ」
「じゃ、じゃぁ言うけどさ!…お前、俺の何処が好き?」
「ブっ!!!」
「な、何だよ!はっきり聞けつったのテメーだぞ!!」
「な、ななななななっ…!!」
真っ赤になった土方に、銀時は微かに余裕を取り戻した。
「な〜な〜、土方君。俺の何処が好き?」
「な、てっ…!何だよ、急に!!」
「だ〜って、銀さん思ったんだもん。コイツ俺の事好きつったけど、何処が好きなのかなぁって」
「そ、そう言うテメェはどうなんだよ!!」
「はぇ?」
「お、俺の…その、ど、何処が好き…なんだよ……」
「ん〜…そうね〜」
土方の問い掛けに、銀時はちょっと考えて。
「…多串君」
「あぁ?」
「多串君だし」
「はぁ?!意味解んねェ、つうか、多串じゃねェし!!」
「…って突っ込んでくれるし」
「……あのな……」
「それに俺、面食いだし?」
「…っ…」
「そ〜やって、真面目に照れてくれるのも可愛いし♪」
「…可愛いなんて言われたって嬉しくねェ」
「ふふふ…そう?」
「………………………………………」
「で?」
「…あ?」
「土方君は何処が好きなのかなぁ?俺の」
「……………………………」
銀時の問い掛けに。
土方はチっと小さく舌打ちをして。
「…ぜ」
「ぜ?」
「……全部……」
「…………………………………」
小さく。
とても小さく、呟くように。
紡ぎ出された言葉は。
きっと近くに、向かい座りをしている銀時にしか聞こえないくらい。
それでも。
パチクリと。
いつもは魚の死んだような目をしている銀時を驚かせるには充分な効力を持って。
顔を真っ赤にして、銀時から目を逸らしている土方。
「…クス…」
「…ぁ?」
「じゃぁさじゃぁさ、土方君」
「な、何だよ…?」
「このクリンクリンの天パも好き?」
「あ、あぁ…」
「この魚が死んだような目も?」
「いざと言う時、煌くんだろ?」
「唇は?」
「好きだよ」
「この指は?」
「好きだ」
「じゃぁ…愛してる?」
「あぃ…?!」
「愛してる?」
「…愛、してる」
…カチ…
「…カチ?」
「お〜し、撮れた撮れた」
「………………………………………」
「結構時間掛かったな。録音時間ギリギリだ」
「ちょ、ちょっと待てェェェェェェェェっっっっっ!!!!!!!!!!!」
「え?何?」
「何?じゃねェよ!おまっ、何撮ってんの?!何録音してんのぉぉぉぉぉぉぉ?!!!」
銀t木乃懐から取り出されたカセットテープ。
それに慌てながらも、聞くと。
「ゃ、ほら…これで、さ…会えない時もこれ聞いて、さ…」
「…銀時」
「淋しさを紛らわそうとね…」
「銀時…」
恥ずかしそうにそう呟く銀時に…。
「時に銀時」
「…ぅん?」
「総悟はそれを幾らで買うと言ったんだ?」
「や〜それがさ、すっげェ高値で。これで暫くは家賃の心配は〜……」
「…………………………………」
「……………あっはっはっは」
「あっはっはっはじゃねェよ!そこに直れ!!叩き斬る!!!!」
「お、落ち着け、多串君!!!!」
「充分落ち着いてるわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」
暫く、土方は部下不信…人間不信に陥ったそうな。
・END・
〜おまけ的何か〜
「ナイスですぜ、旦那♪」
「も〜ね、大っ変だったんだから。大切にしてよ〜?」
「勿論でさぁ。じゃぁ、テープを…」
「ん?あぁ。んじゃ、コレ……」
『…愛、してる』
「…………………………」
「…旦那?」
「へ?あ、あぁ…」
「これで暫くは土方さんで遊べまさぁ」
「…………沖田君」
「ど〜やって虐め……はぃ?何でさぁ、旦那」
「…ごめん。やっぱこのテープ、渡せねェや」
「え、えぇ?!どうしてでさぁ、旦那」
「…冗談にして良い事と悪い事。区別つくでしょ、お互い」
「…………チェ〜」
「ちゃんと依頼料は返すからさ」
「…………………………………」
「今回は。…勘弁してあげて。ね?」
「…良いでさぁ」
「へ?あれ、沖田君?ちょっ、待って、今依頼りょ……」
「それ、旦那にあげまさぁ」
「沖田君?」
「…それで、おたくの大食漢にでも、食わせてやって下せぇ」
「…………………………………プっ」
「し、失礼しまさぁ!!」
「あははははははは!!…若いねぇ、青い春だぁ」
・END・
2007/01/13UP