この所激務が続いた。
摘発・テロ・それに内部調査。
それこそ寝る時間を惜しんで仕事を続けた。
それ等が全て片付いて。
明日は…そう明日は数ヶ月振りの休日。
銀時に…ぁ、ぇ…る……。
ガラっと障子が開く。
「…ぅ、っわぁ…」
「ス、スイマセン…この所忙しかったから、副長掃除出来なかったんだと思います」
「ぁ、あ〜…ぅん。何となくそれは聞いてる。解った。…んじゃ、ジミー、案内サンキュー」
「は、はぃ!…ぁ、あの旦那?怒らないであげて下さいね。副長疲れてるんで」
「はぃはぃ。銀さんだって鬼じゃないんでね。解ってますよ〜」
心配顔の山崎を他所に、銀時はヒラヒラと手を振ってみせる。
それを確認しながら、山崎は先程来た廊下を引き返す。
銀時はそれを確認し、パタンと障子を閉める。
ここは真選組屯所の土方の自室。
昨日の夜、土方から電話が架かって来て、忙しかった仕事が片付いたので会わないかと誘いを受けた。
土方が…と言うか、真選組が忙しかったのはニュースなどで銀時も知っていたから。
「無理しなくて良いよ?」
と銀時は言ったが。
「無理じゃねェ。……会いたいんだ」
なんて言われてしまったら。
「…じゃぁ…お昼、過ぎに、な…」
首を縦に振るしかなくて。
約束を取り付けて、電話を切った。
次の日、柄にもなく早めに約束の地に訪れたが。
待てども暮らせども土方は来ない。
何かあったのか、と前に教えてもらって1度も架けた事のない土方の携帯に電話を架けたが、繋がるのは留守電ばかり。
忙しいならそれはそれで良いのだが、特に緊急の事件が起きた様子も街にはなくて。
迷いに迷ったが、銀時は真選組屯所に電話を架けた。
『はい、真選組。…って万事屋の旦那?どうしたんですか?』
と、顔馴染みの山崎が出たまでは良かった。
良かったのだが…。
「ぇ?副長ですか?…え〜っと、今日はオフで、今は自室でお休み中ですよ?何か御用ですか?』
次に紡ぎ出された言葉に銀時のこめかみに青筋が浮かぶ。
(にゃろ、テメェから誘っといて爆睡ですか?!寝坊ですか?!!)
今から屯所に行くと山崎に告げ、銀時は有無を言わさず電話を切った。
勇み足そのままに、屯所に訪れた銀時は玄関先で。
「叩き起こしてやる!!」
と息巻いていたが。
「副長、数日残務処理で殆ど寝てないんですよ」
と山崎の言葉に息消沈した。
「…だから休日は休めつったんだよ」
昨日の夜電話でも言った言葉をポツリと呟けば。
あぁそれは…と山崎が言葉を返す。
「どーしても旦那に会いたかったみたいですよ。書類作成の時も、「これが終われば銀時に会える」って呪文みたいに言ってましたから」
「…なっ!あの馬鹿何言ってんだ?!!」
「よっぽど集中してたんでしょうね。俺がお茶持ってても全然聞いてなくて、ずっとブツブツ言ってました」
サラリと山崎から告げられた言葉に、銀時の顔に火が灯る。
「愛されてますね、旦那」
「…ぅっさいよ、ジミー。簀巻きにして海に沈めるよ」
クスクスと笑いながら言われた言葉に、銀時は手で顔を覆いながら呟く。
何て事を呟きながら仕事をするのだ。
そう思いながら。
通された客間を通り、山崎が土方を起こしに向かおうとしたが。
「あぁ、良いよ、ジミー。土方の部屋通して。起きるまで待ってるから」
「え?良いんですか?」
「お疲れみたいだから」
と土方の部屋に向かおうとする山崎を制止した。
そして通された廊下に続き土方の部屋。
何度かノックをしたが反応はなく。
ガラリと開けた襖。
何度か訪れた事のある土方の部屋、だが…。
「…ぅ、っわぁ…」
いつもはきちんと整理整頓されている部屋は、今は惨状と言う事場がぴったりなほど散らかっていた。
それに思わず声に漏らしてしまった銀時だが、すぐに山崎が。
「ス、スイマセン…この所忙しかったから、副長掃除出来なかったんだと思います」
とフォローを入れた。
それは解っている。解っているから休むように言ったのだ。
それでも会いたいと言うから了承した。
なのに…。
「爆睡し過ぎだ、テメー」
枕元に腰を下ろして、安らかに眠る土方に語り掛ける。
いつもは人の気配ですぐに起きるのに。
それ程疲れているのだろうか。
それとも屯所の自室と言う事もあり、安心しきっているのか。
土方はまったく目覚める気配がなかった。
「っとに…銀さん2時間も待ったんですけどー」
ポツリと呟く。
それでも返って来るのは寝息ばかり。
「…は〜…、しょうがねェなぁ。暇だから片付けでも……」
そう言って腰を上げようとした。
しかし。
「…んっ…」
「…お?お、おおおぉぉぉぉ???!」
グイっと腰に巻き付いて来た腕。
驚きながらも、本当に寝ているのか?そう思うくらいの力で引き寄せられる。
「…っ、テメっ、起きて……!!」
「…スースー…」
「マジ寝?タヌキ?」
突然の事で驚いた銀時が、その腕の持ち主、つまりは土方に抗議の声を上げたが。
土方はスゥスゥと規則正しい寝息を繰り返すだけ。
ボリボリと頭を掻いて。
「…マジかよ」
この苦しい体勢で暫く居ろとでも言うのだろうか。
無理に腕を引き剥がそうものなら起きてしまいそうで。
こんなに安らかに眠る奴の邪魔もしたうなくて。
銀時は困り果てて呟いた。
「…んっ…」
「…ぉ〜い。手ェ離してくれたら、銀さん特別に無料で部屋の掃除してやるぞ〜?」
「…スゥスゥ…」
「ぉ〜い??」
サラリと土方の真っ直ぐな髪を銀時は優しく撫でた。
すると…。
「そ、ば…居ろ……銀時……」
それはまるで返事のように。
腕の力を微かに強めて。
土方が紡いだ言葉。
「…っっ、ちょっ…おまっ、それは卑怯だろ…!!」
不意をつかれた言葉に。
カっと銀時の頬が赤に染まる。
でもそれに導いた人は。
「…ん、スゥスゥ…」
まだ、夢の中…。
「……………しょうがねェなぁ」
「…ぎ、ん…時……」
「はぃはぃ。…しょうがねェから、今日は銀さん、ずっとお前の傍に居てやっから」
「ぅん…傍、ぃ…ろ……」
溜息を吐いて。
銀時はそのまま土方の隣に横たわる。
すると。
また腰に手が回り。
キュっと引き寄せられる。
それに抵抗する事なく、素直に力に従えば。
銀時を抱き締めて。
胸へと抱き寄せる。
そして…。
…チュっ…
銀時の眉間にキスをする。
「…………嘘だろ?お前本当は起きてるだろ?なぁ?」
「……スゥスゥ」
そして土方は満足そうに微笑むのだった。
・END・
2006/11/22UP