優しくしたい。
優しく包み込んで、優しく抱き締めて。
…優しく、キスしたい。
……護りたいんだ、お前を。心を。全てを。



「…銀時」
「ぇ?」



そんな必要、お前には必要ないって解ってる。
解ってる。…けど。



「…銀時」
「ほへ?!」



したいんだ。…優しく。
お前は優しくされる事に、護られる事に…慣れてねェみたェだけどな。



「ひ、土方君?!!」
「ぁん?何だよ」
「ゃ、ぁの、その……どったの?急に…」



近くに立ってたコイツの腰に腕を伸ばして、引き寄せれば。
身体を強張らせて、微かに抗う。
乱暴に扱えば。…それが当然とでも言うように身体を任せるくせに。



「…好きだぜ。銀時」
「…ぇ、ぁ…ぅ…」



ギュっと腕に力を込めて。
その腰に顔を埋める。
…あぁ。



「…テメェの匂いがする…」
「…そりゃ、それだけ…着物に顔、埋めてりゃ…」
「…………不思議、だな」
「…え?」
「…嫌いなはず、なのに」
「お、れ…が?」
「馬鹿。違ェよ。…甘い匂い」



嫌いなはずの甘い匂い。
呼吸する度に肺を満たす甘い匂い。
…あぁ、そうか…



「…テメェの…」
「な、何?!」
「テメェの匂い、だからかな…」
「……っっ……」



もっと、もっと深く吸うために、腕の力を強めたら。
サラリと髪と梳く、指先。



「…あ〜もう、この甘えん坊さんは」
「…ぅるせェ…」



何度も行き交う指が気持ち良い。
…優しくしたい。
……護りたい。
………………。
…………。
………。
ってちょっと待てぃ!!



「これじゃぁ俺が甘えてんじゃねェか!!!」
「ぅわっ?!!な、何?!どったの、今度は?!!」
「そうじゃねェ!そうじゃねェだろう、俺!!」



そうじゃねェだろう!
俺が甘えてどうするんだよ!!
俺が優しくされてどーすんだよぉぉぉ!!!



「……………………」
「な、何…?ジっと見つめても、銀さん何も出さないよ?ってか出ないよ?」
「……………………」
「な、何?何だよ、ジーっと見て!!!」
「…おい」
「だから、何…?」



否、待て。
素直に「甘えろ」と言って甘える奴か?コイツが?



「な、何だよ!呼んどいて沈黙って何だよ?!」
「……あるか?」
「はぃ?」
「何か、俺にして欲しい事はあるか?」
「はぃぃぃぃ???」
「ない、のか?」
「…ゃ、その…」



俺がそう言うと、銀時は不思議そうな顔して俺を見てる。
ま、間違えたか…?



「して欲しい事、ね…」
「………………………」
「ん〜……パフェが食いたい」
「………………………」
「日々の甘味に事欠いてるからね〜」
「………………………」
「腹いっぱい食いたい。…以上、土方君にして欲しい事」
「………………………」



…違う。
違ェよ、そうじゃねェ…そうじゃねェだろうがぁぁぁぁぁっっ!!!!



「〜っっ」
「ぁれ?…土方君?」
「…げェよ」
「ぅん?」
「違ェよ、そう言うんじゃねェってのぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「ぅわっ?!だ、だって他にして欲しい事って?!」
「そうじゃねェよ!いい加減にしろよ、この糖尿病!!!」
「ひっで!まだ予備軍だぞ?!!」
「そう言う問題じゃねェわ!もっとあるだろう?!甘えたいとか、抱き締めて欲しいとか!!!」
「は、はぁぁ??!な、何言い出すかなぁ、このマヨラーは!!」



ハァハァとお互い肩で息をしながら、睨み合う。



「もっとこう…恋人同士独特の…あるだろう?!」
「何乙女的な発言してんですか?!つうか、いい年した野郎共で恋人同士独特も何もねェだろうが!」
「それでも!!」
「恋人ごっこがしてェなら、もっと他あたれ、他!!!」
「ほ、か…?」



他?
他と?…誰が?



「………………………」
「…ぁ、あれ…?何でそこで黙っちゃう訳ですか?」
「…………………………」
「…土方く〜ん?お〜い??」
「……………他なんて居るか」
「…おぉぉぉぉ??!」



他なんて居るか。
だって。
他の誰でもない。
テメェだから思うんだ。
他が居たら…わざわざおっさんの、糖尿病予備軍の、こんなダラけた男、誰が選ぶか。
…抱き寄せて。
キスして。
腕に、閉じ込めたい。



「ちょっ、おまっ、なっ…!!」
「…優しくしたい」
「は、はぁ?」
「…護りたい」
「……………………」
「他の誰でもねェ。…テメェを」
「……………………」



恋人ごっこがしたい訳じゃねェ。
甘い余韻に浸りたい訳じゃねェ。
…でも時々。
ほんの刹那。
……甘やかしたい。
……護りたい。
……他の誰でもねェ。
全部独りで背負い込もうとするコイツの。
支えになりたい。
…そう思うのは。



「テメェ…だから…」
「……………………は、ぁ〜あ」
「…んだ、その溜息は」



盛大に溜息を吐かれて、さすがにムっとする。
…んだよ、こっちは真面目に…!!



「…どーしてこう土方君は俺を………」
「俺を…何だよ…?」
「……………………………」
「……何だよ?」



ジっと見つめられて。
…何だか居心地が悪い。
そう思ってたら。



「…ぁ?…ん、んっ!!」



グイっと引っ張られて、そのまま口付けられた。
おまっ…!ビックリするだろうが!!



「プハっ…!テメェ、いきなり何……!!」
「どーしてそう、土方君は俺を大好きかな」
「だいっ…!テメっ、からか……っ!」
「…あんがと」
「!!…おまっ、いきなりそれは反則だろーが……」



照れくさそうに呟かれて。
こっちまで照れて顔が赤くなってしまう。
そっぽを向いたのに。
そっと添えられた手。
導かれるまま。



「…ん、ふ…っ、ぅ…」
「…ぎ、ん…とき…」
「…ぁ、…じ、かた…く…」



…熱い口付け。
吐息もそのままに、そっと離れれば。



「…でも、ね、土方君」
「…あぁ?」
「俺、この年まで甘えるって事した、事ねェし…」
「………………………」
「甘え方とか…解んねェし」
「………………………」
「だ、から…今はこれが精一杯……」
「ぇ?ぁ、んっ…」



もう一度、合わせられる唇。
吐息すら奪うその口付け。



「ふ、っ…ん、んっ…」
「は、ぁ…」



苦しくなったのか、それはすぐに離されて。
コツンっとおでこがぶつかる。



「…銀時?」
「だ、から…甘味、食いたい」
「…は?」
「土方君と…甘味、食べたい…」
「…………………………」



至近距離なのに視線を外して。
ポツポツと呟かれる言葉。


『だ、から…今はこれが精一杯……』


そして脳裏を過ぎる、さっきの言葉。



「…仕方ねェな」
「…ん?」
「じゃぁ、行くか。…甘味処」
「………ぅん!」



甘え方なんか知らねェから。
…どうして良いか解んねェから。
……そうだろ?



「ほれ、行くぞ。銀時」
「はぃはぃ、っと」



…本当。
お互い、上手くいかねェな。



「手でも繋ぐか?」
「ぅへ〜男2人でそれって痛くね?」
「ぁ、っそ」



これから少しずつ。



「ぁ、でもでも!」
「んだよ、男2人で手ェ繋ぐの、痛いんじゃなかったのかよ?」
「家出るまでは誰も見てねェからさ。…土方君がどうしてもって言うなら、手ェ繋いであげても良いぜ?」
「抜かせ」



…進んでいければ良いんじゃね?
その内いつか…。



「まだまだたっぷり時間はあるんだし…なぁ?」
「へ?な、何が…?つうか、その微笑み怖いんですけど……」



テメェの好きなパフェより甘く、…な?





・END・
2006/09/19UP