「…よぉ」
「ん?…おぉ、多串君じゃん、久々」
「だぁから!俺は多串じゃねェ土方だつってんだろうが!!」
「あはは、その雄叫びも久々」
「〜っ、たくよぉ」



久々に万事屋に響いた声に銀時にも笑顔が零れる。



「制服って事は今巡回の途中?それとも2週間も銀さんに会ってなくて我慢出来ず会いに来ちゃった感じ?」
「…………………」
「…あれ?突っ込みなし?もしかして図星?図星なんですかぁ〜??」



銀時の言葉に黙り込んでしまった土方。
あれ?と思いながらも楽しげに話し続ける。
しかし土方は…。



「…………お前、万事屋、…だよな?」
「ぅん?あぁ、そうだぜ?万事屋銀ちゃんとは俺の事だぜ!!」



投げられた質問に、ダンっとテーブルに足を乗せ、ヒーロー張りに返答する。



「………………頼まれりゃぁ何でもやるんだよなぁ?」
「あり、反応ねェでやんの。まぁ良いや。そりゃ万事屋だからなぁ。貰うモンさえ貰えりゃぁやるぜ?」
「………………はぁ」
「何?何なの?聞くだけ聞いて今度は溜め息?あれれ、銀さんちょっとムカついて来ちゃったよ?ムカっと来ちゃいましたよ〜」



要領の得ない質問に、段々銀時もイライラして来る。
このお琴は一体何が聞きたいのだろうか?



「銀時」



ガシっと両肩に手を置かれ、向き合って至近距離で呼ばれる。
その声が、顔が、あまりに真摯だったので、銀時も心臓も思わず跳ねる。



「な、何?急に真面目な顔しちゃって?!」



それを誤魔化すように、努めて明るく返した銀時に。



「……………断れよ」
「…………………はぃ?」


「銀時〜!!…っと、トシ。お前も来てたのか〜」


「あり?近藤ゴリラだ」
「いい加減人の名前を覚えろ!近藤さんだ、近藤さん!!」



突然乱入して来た近藤に、銀時は目をパチクリさせる。



「甘いでさぁ、近藤さん。万事屋の旦那の居る所に土方さんの影あり、ですぜぃ?」



そして今度は近藤の背からひょいと沖田が顔を出した。



「沖田君まで。どったのよ、一体?」



真選組の幹部の次々のご登場に、何事かと銀時が尋ねるが。
発した言葉にピクリと反応したのは土方。



「………おぃ、んで総悟だきゃぁちゃんと名前覚えやがんだ?」



しかし反応した内容は、とてもじゃないが銀時の疑問を晴らすものではなく。
それに「はぁ〜」と沖田が溜め息交じりに言葉を吐く。



「土方さん、男の嫉妬はみっともねェですぜ」
「も〜お宅の副長さん、銀さんの事好き過ぎですよ〜」
「ストーカー一歩手前なんで旦那も気を付けて下せぇ」
「うるせェ!てめェらもうしゃべんじゃねェェェェ!!」
「はっはっはっ。トシも総悟も銀時と仲が良くて何よりだ。…時に、銀時」



3人のやり取りを微笑ましく眺めていた近藤だったが、時計をチラリと見て、銀時に声を掛ける。



「んぁ?何?」
「仕事の依頼なんだが、今良いか?」
「仕事?真選組から?何?」
「あ〜それを言う前にな。…お前料理出来るか?」
「料理?何で?」
「良いから答えてくれ」
「??…まぁ、人並みに」
「よっし!銀時、女中になってくれ!!
「………は、はぁぁぁぁ?!何だよ、唐突に!?」
「今まで真選組の女中をやってくれた人がな、里帰をせねばならなくなってな!その人が帰って来るまで屯所で飯、作ってくれないか?!」



唐突の依頼に銀時は微かに頭痛を覚えた。



「んなの、てめェらで作りゃぁ良いだろうが。わざわざ俺を呼ぶな」
「…………そうも言ってられねェんでさぁ」
「はぃ?」
「実はですね、旦那…」



馬鹿らしいとばかりに言った銀時に。
ポンと銀時の肩を叩いて、沖田が言う。
それに同意して、近藤が話し始める。



「今朝の事だ…」


『と言う訳でトメさんが居ない間、俺達で飯を作ろうと思う』
『おぉ〜!!』
『では!お前等で作れる物を作ってくれ!!』
『おぉ〜!!!』


「…………………………」
「そこで作れた物と言えば…」
「あれ?今の回想要らなくね?要らないよね?何で入れたの?ねぇ?」
「砂糖で握られた握り飯」
「素敵じゃない」
「…食えるの多分旦那だけですぜ」
「そう?」
「ダシの入ってない、正に味噌汁」
「しかも入ってたワカメ、塩抜きしてねェから、しょっぱいしょっぱい」
「…壮絶だな」
「みそ焼きおにぎりなんか、飯に直に味噌混ぜちまって食えたモンじゃねェんだぞ?!」
「……気持ち悪くなって来た」



語られる数々の話に、銀時は顔を青くして胸を抑える。



「そんなこんなでトメさんが帰って来るまで飯抜きなんだ!!!」
「…だったら買えば良いじゃない。飯屋が何の為にあると思ってんだよ」
「そんな事出来るか!俺達は家庭の味に飢えてるんだ!!!」
「ったく…」



涙目で叫ばれて。
はぁ、と溜め息を吐く銀時。
その時にようやく気づいた。
土方のあの台詞。


『…………お前、万事屋、…だよな?』

『………………頼まれりゃぁ何でもやるんだよなぁ?』

『……………断れよ』



あの言葉は近藤達が依頼に来るのが解ってたから先回りして。
今回の依頼を断れと示唆するものだったのだ。


(『断れ』ね…)


「………………………」
「銀時〜!!」
「……良いぜ」
「え…?」
「マジですかぃ?」
「…っのヤロ…」



様々な反応を見ながら、銀時はニヤリと微笑む。



「真選組の飯炊き係り、万事屋銀ちゃんがしかとやらせてもらうぜ」



任せろとばかりに親指を胸に差し、銀時は声高々に宣言する。
そして土方は頭を抱えた。



「…ぉい」
「ん?何?」



早速昼食を作ってくれと言う近藤について、銀時と真選組一行は真選組屯所に向かった。
その途中、小声で土方が銀時に声を掛ける。



「断れつったろ!てめ、何引き受けてんだよ!!」
「え〜?だって断る理由が無いじゃん。さっきも言ったけど、万事屋は貰うモン貰えば何だってやるよ?」
「〜っ、だからって時と場合と依頼内容考えろっての!!」
「時と場合と依頼内容?別に断る依頼内容じゃないじゃん」
「そ、そうかも知れねェけど…!」
「ってか逆に聞きたいんだけどさ」
「…何だよ」
「どうしてそんなにこの依頼引き受けるの嫌がんのさ?別に問題ねェだろ?」



銀時の言葉に土方は黙り込む。
ちらりと視線を近藤の隣を歩いている沖田に移す。
その視線に気づいたのか。
沖田もちらりと視線を土方にやる。



「…っっ、てめっ…!!」
「え?何?!俺、何かした?!」



ギリっと突然歯軋りをし、怒り出す土方に銀時がギョっと驚く。


(あるんだよ、大問題が!!)


土方の視線に気づいて、沖田が土方を見る。
そして次の瞬間。
ニヤリと微笑んだのだ。
それはまるで悪魔の微笑み。



「多串君?」
「…何でもねェ」



毎日銀時と顔を合わせて居れば。
…からかわれるだろう。
絶対に。
特に沖田には。


(だから断れつったんだよ!!)


それを表に出して言わないのは。
沖田に負けたみたいで悔しいから。



「そんなに嫌な訳?」
「あ?」
「俺が屯所に居るの」
「べ、別に嫌って訳じゃ…」



あらぬ誤解に土方が弁解しとうとした時。



「それが嫌なんじゃないんだ?」
「あ?あ、あぁ…」



ニコリと銀時が微笑して。



「毎日会えんだぜ?結構一石二鳥な依頼だと俺は思うけどな」
「…っ…」
「こう見えても、銀さん一人暮らし長ェから、美味しい飯、任期まで作ってやっから、楽しみにしてろよ!」



バンっと土方の背中を叩いて。
銀時が軽やかに前を歩いている近藤・沖田を追い掛ける。



「…ゲホっ、痛ェつうの…」



ケホリと咳をして。
土方は煙草を深く吸う。



『毎日会えんだぜ?』
『楽しみにしてろよ!』



「…馬鹿、楽しみだつうの」



沖田からのからかいも。
この幸せの前には些細な事なのかも知れない。
土方が吐き出した紫煙は。
澄み切った空に、消えていった。





・to be continued or End…?・
2006/07/09UP