サァァァと、空から降る水滴に土方はハァと溜め息を吐く。

梅雨のこの時期、巡回の邪魔だと言って傘を持たないまま出たのは失敗だった。

見る見る内に空が暗くなり、冷たい雨がポツポツと降り始め、慌てて軒先に身を隠した。

微かに湿ってしまった煙草を懐から取り出し、火を点け、紫煙を吐き出す。

そしてチラリと時計に目を走らせて。

…予定していた時間より大分遅れている。

また溜め息が出た。


(…間に合わねェな、こりゃ…)


そんな事を考えながら雨宿りしている軒先から少し顔を出して、空を仰ぎ見る。

どんよりとした空はすぐには晴れそうにもない。


(どうせ濡れんなら、今だって後だって一緒か…)


そう思って屯所に向かって走り出そうと軒先を出ようとした矢先。


バシャバシャ


水の弾ける音が響き、近づく。



「あれ?」

「…ゲっ」



いつも着ている着流しの着物を頭に被り、雨の中走る銀時の姿を確認して、土方は思わず眉間に皺を寄せてしまった。



「何やってんの、多串君」

「土方だ!いい加減覚えろ」

「はいはい。…で?土方君は何やってんの?こんなトコで」

「見りゃ解んだろ。雨宿りだよ、雨宿り」

「あぁ、そうだよね。もぉ〜突然降って来るんだもん、参っちゃうよね」

「突然…つうか朝から降りそうだったじゃねェか」

「まぁーね。でも結野アナの天気予報は夜からだったから。雨」

「この時季天気予報そんなもの信じて、傘を持たずに外出なんざ自殺行為だな」

「そう言うお前だって持ってねェじゃねェか。土方君も信じた口でしょ?結野アナファンなの?ん?ん?」

「違ェよ。俺は巡回の邪魔だったから持って来なかったんだ」

「あっそ。でもそれで降られて雨宿りなんて間抜けだな」

「うるせェよっ!!!」



土方に話し掛けながら、銀時も軒先へと入る。

雨避けにしていた着物をパンパンと叩いて。



「…所で今何時?」

「今?…4時10分前」

「10分前?!ぅわ〜…間に合わねェかも」



土方に時間を聞き、銀時はその回答にがっくりと項垂れる。



「…何だ、用事か?」

「用事って言うかね…毎週の楽しみって言うかね…」

「…ふ〜ん…」



チラリと土方はまた時計に目をやる。

後9分…。

あぁ、もう間に合わない…。



「…はぁ」

「…ハァ」

「「…ピン子…」」



同時に発せられた言葉にお互い顔を見合わせる。

そして。



「何だ、てめェもかよ」

「やだね〜一緒だよ」

「………………」

「………………」


お互い同じ事を考えているなんて嫌だ嫌だと言って。



「…プっ」

「…くっ」

「ぷくくく」

「くっくっく」



それから笑って。



「おぃ」

「ぅん?」

「ココから屯所じゃ全力疾走してもぜってェ間に合わねェ」

「うん」

「ココから万事屋まで。全力疾走何分だ?」

「10分弱!」

「…上等。5分で着いてやるよ」

「負けねェよ」



ニっとまるで示し合わせたかのように微笑んで。



「外は雨」

「傘はねェ」

「雨足は強まるばかり」

「でも俺達はピン子が見たい」

「ピン子が始まるまで、もう時間がねェ」

「万事屋まで全力疾走10分弱」

「なるべく雨に濡れねェように」

「んでもって、ピン子に間に合うように…」



同時に軒先を飛び出して。



「「まくれーっ!!!」」





・END・
2006/06/28UP